フィリピン実習生派遣とアレコレ

フィリピン技能実習生派遣にまつわる雑感です。外国人労働者との関わり、アジアビジネスについても記します。

高級割烹からみたフィリピン人

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マカティに今年出来たばかりの割烹料理屋に行ってみた。

値段は一人6000p(12,000円)のお任せ料理のみ。京都の吉兆で修行した料理長が秋田からとりよせたコメを土鍋で炊いた白飯は、フィリピンの歴史上で存在しなかったレベルと言っていい。

料理長と話をして面白いかったのはフィリピン人の板前の育成方法。経験者だけを採用しているらしいが、焼き物担当の人には焼き物だけ、とシングルタスクで任せるのだ。

 

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だから塩を振るのも料理長の仕事、このフィリピン人は焼くだけだ(笑)。複数の作業を指示すると質が極端に落ちるからだという。

 

フィリピンのレストランにいると、ウェイターやウェイトレスを呼んでも、全く気がつかないことが多い。

特にテーブルを拭く、皿を運ぶと言った作業中のスタッフはすぐそばから呼んでもまずこちらに気がつかない。日本人から見ると不思議なくらいだ。

 

もともと右脳型のフィリピン人はシングルタスクしかできないように作られているのかもしれない。

 

しかし、このスタッフを例にとると、焼き物だけをやらせると見事な出来栄えらしい。仕事が出来ないのではない、民族的な特性だ。

 

だから一部のエリートを除き、一般的なフィリピン人を使う場合は日本人と同じような使い方をしてはいけないと言える。

 

日本で「これしか出来ません」なんて奴は給料は増えないが、彼らは日本人と同じ待遇で日本人並みのクオリティの仕事をしたいなんてこれきしも思ってない。

 

特に日本で働く場合、最低賃金でもこちらに送金すればまだまだ家族はよい暮らしができる。

 

牛丼屋のワンオペみたいなマルチタスクなんて理解の範疇を超えている。日本人よりも安い給料で日本人より楽な単純作業をしたい人種なのだ。

 


さて、世界は空前の和食ブームだが(ここは別として)マニラの和食屋は値段はともかく味は日本と同じにならないのが昔から不思議だった。

 

料理長に聞くと、水と油の違いがそうさせるらしい。そういえば、日本でも大阪と北陸ではあからさまに米の味が違う。

 

なんと言ってもフィリピンの水は特に味がないのだという。昆布などで出汁をとるのも、日本よりも大量に入れないと旨味がなかなか出ないので苦労するとか。

 

後は油。品質管理意識が低いため、酸化した油を使って天ぷらなどがまずくなるのだ。

 

流石に水を日本から持ってくるわけにはいかないからだ。日本の上手い水を再現できる商売を考えたら儲かるかもしれない。(笑)

 

ちなみに完全予約制のこの割烹。客の9割がフィリピン人らしい。私が行った時もカエルみたいな体型の金満フィリピン女二人連れが隣だった。

 

フィリピン航空オーナー、ルシオ・タンが愛人連れで来たり、次期大統領と目されるボンボン・マルコス上院議員が常連とか。

 

日本人は一部の商社マンか現地で成功した経営者ぐらいしか来ない。和食屋と言えば日本人のものだった時代は変わりつつある。



財閥への宣戦布告!

驚いた。フィリピンの大統領がこうした発言をするのは史上初ではないか。

 

このほど、ドゥテルテ大統領は「この国を救う唯一の方法は、権力と富を持つ一握りの人たちの支配から解放することだ」と発言。

 

財閥が牛耳る、エネルギーや電力、通信といった分野で規制改革を行い、外資を含め新興企業の参入を促進する考えを表明したのだ。

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このニュースは日本では大きく取り上げられていないが、これは歴史的な発言だと私は考えている。もし本当にこれが実行されれば、ほとんど革命的な意味を持つ。

 

フィリピンはわずか数十家族が国土の半分以上の土地を持ち、10%の富裕層が国の富の76%を保有している国である。その反面、農村部を中心に1日1ドル以下の生活費の貧困層は30%とも言われている。

 

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(上)金持ちの趣味はポロ(マニラ・ポロクラブ)

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(上)ゴミ拾いをして暮らす貧困層マニラ首都圏パヤタス)

 

東南アジアは日本や北欧に比べ、格差が酷いことで知られているが、他国に比べてフィリピンのそれは筋金入りだ。何せ革命や独立戦争に負け続けたこの国では、400年前のスペイン植民地時代から続く大地主や財閥が幅を利かせている。

 

最近はその既得権益を新興の中華系財閥に脅かされているが、依然、富裕層はスペイン系、中華系が中心で生粋のフィリピン人は少数である。

 

具体的に言うと

・電力=メラルコ、ベコ(スペイン財閥)

・水道=マイ二ラッド(スペイン財閥)

・通信=グローブ(スペイン財閥)、スマート&PLDT(元スペイン財閥→現在香港系?)

 と、ライフラインはほぼ、スペインや中華系のものなのだ。

 

そして電力や通信の料金は日本並。つまりアジアでもっとも高い。

国民の給与が月2、3万円のフィリピンだが、大多数が使用するプリペイド式携帯電話で通話料金は1分10ペソ(22円くらい)と日本より高い。私が500ペソ(1,200円)のプリペイドを出張で購入しても、ちょっと話していれば1週間もたない。

 

現状に国民も不満は持っているので、欧米系の携帯通信会社が新規に参入する噂は時たま流れる。しかし、政府は財閥べったりゆえ許可は下りない。2社しかないのだから、価格競争なんて不要だ。

 

「バカな貧乏人からはムシれるだけムシり取ればよい」と言う意図が見え見えである。

 

そして通信会社PLDT(日本のNTTにあたる)や電力会社メラルコといった会社のサービスは死ぬほど悪い。

 

PLDTはテレビで格好良いコマーシャルを流すが、インターネットの通信速度はアジア最低レベル。

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(上)アフガニスタンレベルのインターネット

 

蜘蛛の糸みたいな回線なのでラインやバイパーといったアプリでフィリピンに電話すると、ブツブツ切れるので腹が立つことこの上ない。ベトナムにいったら安ホテルですらWI-FIでユーチューブが観れるというのに・・。

 

また、不思議なのは雨が降るとさらにネットや電話が落ちやすくなること。どう言う影響があるのか未だに不明である。

 

回線のスピードだけではない。私はメラルコにケタを一個多く間違えて電力料金を請求されたことがある。そのくせ支払いが数日遅れるとすぐに使用をストップする(まあこれはフィリピン人が相手だからわからなくもないが・・)、こういうことだけ早い。ほとんどキチガイレベルの会社となっている。こいつらに比べたら東京電力は聖職者だ。

 

しかし、こういったライフラインを異民族の財閥系大企業が寡占状態で抑えてしまうというのはある意味植民地支配と変わらない。

 

スペイン植民地時代から続く、スペイン系財閥であるマカティのアヤラ家、セブのアボイティス家はつい最近まで歴史的にフィリピン人とは結婚しないことで有名だった。だから顔は白人そのものである。

 

一般的に華僑は中華系学校に通い、スペイン系はインターナショナルスクールや海外の学校に通う。教育も婚姻も同族間であることも珍しくない。つまり街で転がっているフィリピン人なんて非植民者の奴隷のまま。華僑やスペインといった「外国人」による経済的な植民地、それがフィリピンなのだ。

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アヤラ家の当主(上)とアボイティス家の当主(下)。いずれも顔は白人のそれ。

 

もともと社会主義思想にかぶれたドゥテルテ大統領はこの植民地状態にメスを入れようとしているのだ。

 

彼はライフラインを握る財閥や大企業に対し、「何の借りもない。それ故、大統領選では避けていた。あなたたちを破滅に陥れたいわけではないが、すでに優位な立場にあるのだから、現状で満足してほしい。すべてを開放する」と発言した背景にこう言う現状がある。

 

しかしそこはトランプのような政治の素人とは違う。アヤラ(グローブ社)とパンギリナン(スマート社)という通信会社の巨頭経営者を名指しして、「値段を下げてくれるなら。私の発言を忘れよう」と落とし所を見せている。

 

しかしこういった分野の既得権益は巨大だ。本気で戦えば大統領の首を飛ばすことぐらいわけがない。果たして骨抜きにされて終わるのか、治安維持活動で見せた豪腕をこの分野でも発揮するのか。

個人的には非常に注目している。

殺し屋は元共産ゲリラ

15年ほど前の話だが、ミンダナオ島中部にイスラム教徒との紛争を取材に行ったことがある。その時に元共産ゲリラ新人民軍(NPA)のゲリラ兵士だった青年と出会った。

 

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新人民軍(NPA

 

なかなか強烈な出会いだったのだが、当時はウラ(事実関係の確認)が取れなかったので記事にはできなかった。ここで記憶を辿りながら独白を再現してみたい。

 

NPAとは1969年から共産主義革命を目指し政府に対する武力闘争を続けている。わかりやすく言えば昔の日本赤軍みたいなものである。

 

しかし、社会主義者を公言する現大統領のドゥテルテ氏はNPAに対する心情的な共感をあらわにしており、現在フィリピンで行われている麻薬密売人に対する超法規的殺人は元NPAゲリラを使っているのだ。

 

想像するに、政府との武力闘争に疲れたゲリラOBの再就職先がドゥテルテ専属の殺し屋なのだろう。確かに血で血を洗う闘争を繰り返して来たゲリラが、すぐに堅気の仕事に就けるわけがないし、この手の「経験」は豊富だからだ。

 

事実、ことし9月、上院議会の聴聞会に元NPAの殺し屋とされる男性(57)が出席し、「ドゥテルテの命令で麻薬中毒者だけでなく政敵も殺してきた」「死体はワニに食わせた」と証言している。

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上院で証言する元「殺し屋」エドガー・マトバト氏

 

私がミンダナオ島中部キダパワン市を取材中に出会った元NPAメンバーは青年ホセ(仮名)と言った。確か当時20歳そこそこだったと思う、日本人神父のいるカトリック教会に住み込み、寺院で言えば小僧のような仕事していた。

 

フィリピン人には珍しく大柄で、身長は180cmくらい。ごつい体に似合わず非常に優しい性格で、教会で保護されている孤児たちとバスケットボールをして遊んでいたことを思い出す。

 

だが、神父さんによると彼はNPA時代、多数の警察官や兵士を殺害していたのだという。すでに投降しているので公式には恩赦扱いになっているが、地元に帰ると、警察から報復で私刑にされかねないため、教会にかくまってもらっているのだ。

 

彼の生い立ちは戦前の日本では良くある話。父親を早くに亡くし、貧しい家庭環境ゆえ進学ができなかった。高校時代は働きながらボクシングに打ち込み、地域チャンピオンにまでなったという。練習道具も満足にないため、ウエイトベルトがわりに腰に石をいれた布を巻きつけてトレーニングしていた。

 

真面目な学生だった彼が、NPAに入ったきっかけは地元兵士からのいじめ、ある日川で魚を取っていたところ、武器を隠しているのではないかと疑われ荷物をひっくり返されたりする仕打ちを受けたのだ。

 

政府は貧乏人なんか相手にしてくれない。「村で揉め事が起きても警察は金持ちの味方にすぎない。NPAは正義の味方」と解釈して叔父が幹部を務めるNPAの部隊に入ったという。

 

高等教育など受けていないので共産主義など理解できない。役割は「強きをくじき弱きを助ける」任侠団体やロビンフッドみたいなものと理解していたようだ。

 

例えば村で盗難があったとする。警察に相談しても賄賂を払わない限り知らん顔。相手が金持ちだった場合、逆にやられかねない。だから、こういう時、村人はNPAに依頼することがある。

 

NPAに入るには入団試験があるらしい。ホセの入団試験はココナッツを盗んだ人物の処刑だった。被害者である村人からの依頼を受け、犯人を呼び出し、自分で穴を掘らせた後に命乞いする犯人の頭を拳銃で撃って処刑した。文字通り墓穴を掘らせたわけだ。

 

こういう活動をしていれば当然、警察や軍は敵で、定期的に襲撃を繰り返していた。ホセは普段は普通の高校生として学校に通い、叔父から収集がかかると襲撃に参加する日々を送った。授業中に密かに呼び出しがかかったこともあるという。

 

体格の良いホセは重機関銃M60を担当。パトロール中の国軍兵士への待ち伏せ攻撃中に機関銃が弾づまりを起こして逃走、田んぼの泥の中に身を隠して助かったことも。

 

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M60機関銃

 

ミンダナオ島と言えばイスラム教徒のゲリラも存在している。政府に対して共闘しているのかと思えば、さにあらず、NPAはイスラム教徒とも殺し合いをしていたらしい。ヤクザ同士の抗争みたいなものか。

 

ムスリムイスラム教徒)は怖い。一度仲間が捕まり、首をゆっくりと切られて殺された。断末魔の叫び声をこちらに聞かせるためだった」と顔を強張らせて語っていた。

 

そして、彼はある凄惨な事件をきっかけにNPAを抜ける。深夜、部隊が山の中で野営している時に、暗視ゴーグルをつけた軍の特殊部隊に襲われ、仲間が次々とナイフで殺されたのだ。

 

ちなみにフィリピン軍はほとんどが腰抜けだが、ごく一部の特殊部隊に限り、米軍に訓練されているので練度が高いのだ。

 

就寝中に異変に気がついたホセは銃を乱射して仲間に警告を発し、逃げ出した。途中で落とした銃を拾っていた仲間が倒れた。銃はNPAにとって補充が困難な貴重品だからだ。「奴は銃を拾って肩にかけようとしていたところを撃たれた。目の前だったのでそのシーンはよく覚えている」と静かに話す。

 

ホセは倒れた仲間を担いで逃げ、後で叔父からは褒められたのだという。しかし、部隊は数人を残して壊滅させられ、彼は投降を決意する。

 

投降後も軍や警察の報復を恐れて拳銃は常時携帯し続け、神父によると教会に来た時も銃を持っていたらしい。

 

とはいえ、彼は非常に温和な性格で、とても人を殺すような人物には見えない。英語もうまかったので、勉強もよくできたのだろう。生まれる場所さえ違えば文武両道の優秀な学生だったと思われる。

 

今フィリピンで繰り広げられる3000件を超える麻薬密売人への超法規的殺人を実行しているのはこういう生い立ちの人たちなのだ。あの温和なホセは今どこで何をしているのか。彼がヒットマンになっていなければ良いのだが・・。

何かと話題の新大統領について(その3)

先日の調査によるとドゥテルテ大統領の支持を表明した国民は86%。歴代大統領でも2位の支持率らしい。誤解がだいぶ晴れたとはいえ、なぜ国民に人気が出るのか日本人にとっては理解に苦しむところだろう。これを分析してみたい。

 

私の現時点での評価でいえば

治安☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

経済☆☆☆

汚職☆☆☆☆

外交★★★★★★★★★★(マイナス)

 

といったところか。

治安面では3700人(また増えた)とも言われる麻薬密売人に対する非合法処刑がメディアからは批判的に取り上げられているが、一定の成果を上げているのも事実だ。実際、マニラの人に聞いてみると治安は改善されており、タクシーの運転手は警官からのたかりまで減ったと言っていた。

 

国民から一番評価されているのがこの点だ。これまでの大統領がなしえなかった治安面の改善は長年の国民の悲願でもある。

 

以前もここで触れているとおり、フィリピンでは

覚せい剤密売や誘拐といった凶悪犯罪は基本警察(と政治家)の仕事。

②銃は基本、誰でも所持できる。

③治安当局の捜査技術および司法制度が崩壊している。

 

という凄まじい状態だった。

 

誰もが知っているセブの高級リゾートオーナーのフィリピン人女性(38)は「フィリピン中部ビサヤ地方の最年少覚せい剤中毒者は8歳よ!!」と憤激していた。

 

もう少し実例をあげよう。フィリピンの覚せい剤中毒者は300万人とも言われる。私の知人のフィリピン人女性は貧しい家庭の出身にもかかわらず、日本の大学を奨学金で出たエリートだが、国にいる兄が元シャブ中(現在は更生した)、弟は現役でシャブ中だ。もう一つ言えば前述のリゾートオーナーの旦那も元シャブ中だったらしい(笑)。

 

日本のおじさんに馴染み深いフィリピンパブ。ここで働いているお姉ちゃんに聞いて見ると良い、兄弟や旦那にはかなりの確率でシャブ中がいる。過去やったことのある人物まで含めれば、日本の喫煙人口並みに覚せい剤経験者がいる国なのだ。だから日本に来る実習生の健康診断にドラッグテストが含まれている。おそらくこんな国はアジアでもフィリピンぐらいだろう。

 

②の銃も深刻な問題で、たとえば、車を運転している。つまり車を買える連中は、かなりの割合でダッシュボードに拳銃を突っ込んでいる。

 

だからマニラで車を運転してトラブルになっても決して喧嘩してはいけない。私自身、高速道路上でトラックの運転手が拳銃を窓から出して、運転トラブルでもめた隣の車のドライバーに見せて威嚇しているのを目の当たりにしたことがある。これはアジアの他の国ではなかなかみられない光景だ(笑)。

 

元私が面倒を見ていた実習生で満了帰国後に消費者金融業に就職し、銀行から帰宅途中、車ごと蜂の巣にされたものもいた。現金輸送中と思われたのだろう。良い奴だっただけに気の毒だった。

 

③警察の訓練レベルは異常に低い。これはこの動画を見てもらえばわかりやすい。

www.youtube.com

 

2010年に起きたバスジャック事件の動画だが、エリートであるSWATチームがはしごを忘れて突入に手間取り、乗客9人が巻き添えで死亡している。アメリカや日本特殊部隊みたいなきついフィジカルトレーニングをはしないので、みんな腹が出ている。動きもとろい。

 

 

フィリピンに日本のヤクザやアメリカのマフィアにあたるものは存在しない。警察がその代わりを担うからである。このバスジャック事件の犯人も犯罪を起こして懲戒解雇された元警官である。元警察が犯罪を犯して警察に殺されるのだから世話はない。

 

 

国民はこんな政府にうんざりしているが、誰も変えることができなかった。

 

だがドゥテルテは違った。麻薬密売に関わる政治家や警察官の相関図をメディアで公開。彼らの抹殺を公然と宣言し、実行しはじめたのだ。

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私見ながらこの非合法処刑はフィリピンに非常に向いていると思う。なにせフィリピン人は総合的に言って感情的でビビりが多い。さらに犯罪者に根性のある奴なんてあまりいないからこういう威嚇が一番効果あるのだ。

 

だが、前回エリートにドゥテルテ支持者が少ないと書いた理由は実はここにある。

 

フィリピンの金持ちは基本警備員が何人もいるコンドミニアムか、ビレッジと呼ばれる城壁で囲まれた高級住宅街に住んでいる。知人の会社社長の娘はジプニー(乗り合いバス)に乗ったことがないと話し、大学合格時に親から自家用車をプレゼントされていた。

 

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富裕層の住む住宅。このエリアはショットガンやライフルで武装した警備員と城壁のような壁に囲まれている。

 

こう言った階層の連中にとって買い物や遊びは同じく厳重警備されたショッピングモールか、高級リゾート。NHKで見るようなスラム街はどこか遠い国の話だと思っている。万が一こういう連中に犯罪者が手でも出そうものなら即消される。

→このように

pinoyintern.hatenablog.com

 

つまり金持ち連中には治安上の問題は昔から存在していないのだ。

 

だが、実習生を含め貧しい大多数の国民は常に治安の悪さに怯えている。せめて自分の子供が、妻が、身の安全を気にせず暮らしていけたら・・というのは庶民の切なる願い。

 

この願いに応えてくれる初めてのリーダー。それがドゥテルテ大統領なのだ。

何かと話題の新大統領について(その2”訂正”)

10月25日から27日にドゥテルテ大統領が来日したのだが、その時の対応に驚かされた。

また、先日フィリピンに滞在したのだが、政府官僚からタクシーの運ちゃんまで様々な人々にヒアリングを行った結果、その1で書かれた大統領に対する私の理解を大幅に訂正せざるを得ないと思い至ったのでここで書かせていただきたい。

 

 

今回の来日で何よりも驚いたのが彼の「神対応」ぶりである。

 

庶民に人気があるだけあって羽田空港には出待ちの在日フィリピン人が大量に待っていた。在日のフィリピン人はほとんどが元フィリピンパブのおばちゃんなので(近年フィリピンパブのビザは事実上停止されているので若い女の子は極めて少なくなった)、貧困層出身がほとんどだ。

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フィリピンの政治家と言えば基本アメリカ留学どころかアメリカに家があるような、ど金持ちばかり。豪邸で何人もの召使にかしづかれて育ち、ボディガードと称する私兵団を持っているような輩はごまんといる。アラブの大富豪と日本のヤクザを合わせたような生き物だといえばわかりやすいか。

 

何が言いたいかというと、これまでの大統領は日本に出稼ぎに来ている貧困層のおばちゃん達から見たら文字通り、生きる世界が違うのだ。だからおばちゃんが出待ちするなんて聞いたことがない。

 

だが、さらにドゥテルテは出待ちを見るなり歩み寄り、握手に応じたのだ。もともと彼は庶民派をうたって大統領になったのだがそれをまさに体現する行為だ。おばちゃんたちは大興奮だが、警察庁のボディガードはたまったものではなかったろう(笑)。

 

このように空気を読むというか、相手のして欲しいことを的確に行う神対応はこの訪日で随所に見れた。

 

岸田外相との会食で和食の感想を聞かれれれば、「(美味しいから)来月も日本に呼んで」。来日直前の日本メディアとのインタビューでは「今回の来日では天皇陛下にお会いしたいです。実際にお会いすると緊張して何も話せないかも」なんて可愛らしいことを言う。

www.fnn-news.com

別に私は皇族の支持者ではないが、外国人に天皇をバカにされていい気分になる日本人なんていない。太平洋戦争では戦争被害者(死者は100万人とも言われている)のフィリピンだが、天皇に謝罪を求めた韓国の李明博大統領とは真逆の対応である。

 

しかし、日本政府も相当彼にはナーバスになっていただろう。なにせ、3000人とも言われる麻薬密売人を非合法に射殺するわ、アメリカ大統領に「地獄へ行け」と吐きつつ、中国寄りの言動を繰り返すなど、強面のやばい人物という印象を持っていたにちがいない。

 

無頼を気取るのでドレスコードを無視するなんて当たり前、中国の習近平国家主席の前でチューインガムを噛みながら応対していたと言われている(本人は否定)。天皇陛下に面会するときもガムを噛むのではないかと日本政府が心配していたぐらいだ。

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だが、実際は違った。

 

毒舌どころか、「最大の援助国は日本」などと繰り返し親日発言に終始したのだ。

それだけでなく、「中国とは経済援助の話しかしていない(軍事的には距離を置く)」と中国寄りを懸念する日本を安心させ、海上保安庁を訪問時は「日本と共同訓練は問題ない」とまで発言している。

 

挙げ句の果てに首相には「隣の国はわあわあ喚いたりするからね」なんてこちらがニヤリとする発言まで口にした。

www.houdoukyoku.jp

もともと彼は演説力や会話力に長けている。日本の大学院卒のフィリピン人男性(39)は「オバマと並ぶ上手さではないか」と表現する。ただ、そのスタイルはフィリピン式、正確さよりも面白さ、聴衆を喜ばせることを重視するし、放送禁止用語ジョークもバンバン使う。

 

それらの演説は全てアドリブで、例えていうなら、松本人志とか北野武みたいな一流の芸人の話し方に近いのではないかと思う。

 

今回も在日フィリピン人を前にしたアドリブスピーチで、「フィリピン国民の尊厳を取り戻そう」「フィリピンはアメリカの子犬ではない」とアジった。母国を離れた出稼ぎ労働者の琴線に触れるスピーチだ。

 

面白いのは何度も反米演説を繰り返すことによって、国民に若干の変化が現れて来たことだ。彼が就任するまで反米思想なんて持ち合わせていなかった庶民の中に、ドゥテルテと同じコメントをするものが出て来ているのだ。ヒトラーが言ったように嘘も1000回繰り返せば事実になる。

 

政権後100日が過ぎた時点での支持率調査では大統領の支持率は86%で過去2番目に高い記録だったという。

 

しかし、私の見るところエリート官僚や大金持ちの会社経営者の中には支持者は少ない。フィリピンの早稲田大学にあたるデラサール大学は金持ちの子弟が通う学校だが、ここで今年の大統領選挙時に調査をしたところ、ドゥテルテ支持者は10%以下だったらしい。労働雇用省の高級官僚の女性(54)は「うちの省庁でドゥテルテ支持者は5割にすぎない」と話していた。

 

反ドゥテルテの理由は①人権無視の治安改善活動はやりすぎ②親中反米は危険ーーといった2点だろう。

 

治安改善活動については後述するが、私も②については彼の外交政策は危なっかしいと考えている。

 

彼は天性の才能があるし強烈なリーダーシップがあるが、他の政治家は交渉能力でもしたたかさでも中国人にはとてもかなわない。

 

ドゥテルテは親中アピールで中国から1兆4000億円相当の援助を引っ張ったとされているが、中国は無条件で援助をする国ではない。

 

例えばこの援助の中にはイスラム教徒との紛争が続くミンダナオ島地域における鉄道建設など援助事業が含まれている。しかし同島は金や錫といった地下資源の豊かさで有名。援助と引き換えに資源の独占支配を狙っているのではないか?この援助を国民のために使わず地方の権力者にバラマキ、経済的にフィリピンを骨抜きにし、占領する方策を持っていると思われる。

 

ドゥテルテ大統領をはじめ、フィリピンのエリートは日本に比べて中国に対する認識が甘いと思われる。ドゥテルテはともかく他の権力者が中国人に取り込まれない保証はどこにもないのだ。

何かと話題な新大統領について(その1)

10月7日に就任後100日を迎えたドゥテルテ新大統領だが、極端な発言がメディアを賑わわせている。

 

・アメリカ政府に対して「売春婦の息子(putang ina mo)」

国連潘基文(パン・ギムン)事務総長に対し「潘基・・あの悪魔(Devil)の名前なんだ?うん、潘基文だ」

・「ミスターオバマ、地獄へ行ってくれ(You can go to hell)」

・「欧米の援助はフィリピンに必要ない」

米国が武器を売りたくないのであれば、ロシアや中国に頼む。

 

迷言、妄言はフィリピンの政治家にはつきものだが、外交上でこんな発言を繰り返す大統領はフィリピン史上初だろう。

 

自身の過激な治安維持政策への批判に対する反発とはいえ、常軌を逸している発言だ。

 

アメリカはフィリピンの旧宗主国。太平洋戦争後に米国議会の承認を経て独立させてもらった国だ。最高学府フィリピン大学は、植民地を円滑に運営するためのエリート要請目的で作られ、今も政治家を含む富豪にとってアメリカ留学は必須。

 

国民にアメリカ移民を誘うと冗談抜きで90%以上の人は即移住すると思う。フィリピンは空っぽになる(笑)。

 

たまにメディアは日本を「アメリカの植民地のようだ」と揶揄しているが、フィリピンはリアル植民地状態である。

 

マニラの盛り場は三流白人の天国だ。母国で見向きもされない貧困白人のハゲデブおやじがフィリピン人の若い女と戯れる姿は日常風景である(ちなみに白人が選ぶ女性は我々と違うので特に羨ましくはない)。

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日本もあからさまにイケてない三流白人にしなだれ掛かる女は見受けられるが、あれよりもはるかに酷い、白人コンプレックス丸出しの日本人女性すら敬遠するジジイも、あちらでは「天下のアメリカン」で通る。

 

だから市政のフィリピン人にアメリカの悪口を言うとリアクションに困った顔をする。

 

なにせ国民的スポーツはバスケットボールで、憧れはNBAプレーヤー。テレビで流れる人気の歴史ドラマというと、残虐な旧日本軍に対しアメリカの支援を受けて戦ったという話が定番だった(昨今は減ったが)。我々日本人からしたら、アメリカからフィリピンを解放させるお題目もあったはずだが、皮肉なもんである。

 

とまあ、上から下まで「アメリカのポチ」であるフィリピンで、反米意識なんてごくごく一部の左寄りのインテリエリートしか持ち合わせて居ない。学生運動に燃える大学生か左派系NGO、学者ぐらいのものである。

 

だがそんな人物が大統領になってしまったのである。突然変異というか奇跡というか、まさに史上初のできごとだ。

 

そもそもドゥテルテ氏はアメリカ留学の経験もなく、卒業したのもライシウムという庶民的な大学だ。左派系学生運動に参加する中で、大学教授だったホセ・マリア・シソンというフィリピン共産党の創始者に師事した経験もある。

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↑現在はオランダ亡命中のシソン氏とスカイプ会談。今は互いを友人と呼び合う仲。

 

シソン氏率いる共産党は共産ゲリラ、フィリピン新人民軍(NPA)を傘下に持つ。NPAは創設以来武力革命を掲げて警察官や軍人を相手に血みどろの闘争を繰り返して来た。日本の昔の過激派以上の武闘派である。ちなみにNPAのゲリラが警察に投降すると秘密裏に即虐殺されるらしいから、どれだけ壮絶な関係なのか想像できる。

 

ドゥテルテ氏は自身をトランプになぞらえる報道について、「私の信条は(社会主義者の大統領候補者)サンダース氏に近い」と口にしている。

 

政治家の息子でありながら庶民派を謳い、不平等な社会への不満を示す斬新なイメージ戦略により大統領に就任した。そんな彼の姿には国が変わるかもしれないと期待した国民も多かった。

 

 

だが、それだけではなかった。私の想像以上に過激な反米主義者のようである。

 

彼は南部ミンダナオ島で続くイスラム教徒との紛争の遠因はアメリカ植民地時代にあると言及し、100年以上前に起きた米軍によるイスラム教徒虐殺事件の写真を手に国際会議で批判する。そもそも大多数の庶民はこんな事件を知らないし、インテリですら「何を今更」と言ったレベルの話なのに。

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↑比米戦争時に起きた米軍による虐殺事件の写真を示す。

 

 

フィリピンが中国寄りになるのは日本を含むアジアの国々にとっても非常に危険だ。そもそもズル賢い中国と伍してやりあえる軍事、経済、外交力なんて逆さにしてもフィリピンにはない。

 

既に巨額の金がフィリピンの政治家に中国共産党から流れ込んでいるはずなので、取り込まれるのは時間の問題だろう。

 

このまま彼が突き進めば

・CIAによるネガティブキャンペーンを使った追い落とし。もしくは暗殺(例:田中角栄かチリのアジェンデ)

ちなみにドゥテルテ氏は実際、「CIAが私を殺そうとしている」と発言している。

・アフリカ諸国のように中国による事実上の植民地化(が始まる)。

という方向に行きかねない。

 

当初から彼は富裕層やインテリ層からは懐疑的な目で見られていたが、最近は私の周辺にいる会社経営者からも厳しい声が増えて来た。「あまりにも過激すぎる」というわけだ。

 

しかし、庶民の人気は依然として高いようだ。

(続く)

海外現地採用で働くリスク

近年海外に就職をもてはやす傾向が強い。私自身、大昔現地採用で4年間働いていたので、概ねこの意見には賛成である。私も娘がいるが、日本人は女性ほど海外に出るべきと考えている。

 

なぜなら、この国では女性の活躍なんてまだまだ先の話。知人の大企業のおっさん上司は「女は足と顔が綺麗だったらええんや」と影で言っていた(笑)し、私が勤めていた兵庫県の田舎会社では「寿退社」という言葉が未だにまかり通っていた。

 

よっぽど図抜けた天才でないなら、女性ほど海外で働いた方が良いのではないかと考えている。

 

しかし、私の以前のフィリピンの勤務先でこの度悲しい話を聞いたので、現地採用のリスクについて触れてみたい。

 

私が20年前、入社した日系会社は少し特殊な業種だった。

 

日本でもそうらしいが、「いちいち教えないから、やり方は自分で考えろ。見て盗め」という昭和の徒弟制度が色濃く残り、その癖失敗すると怒鳴りつけられるなんてしょっちゅう。当時の日本人の男性上司の厳しい指導には殺意が沸くほどだった。(笑)

 

同僚も皆若いので事務所でつかみ合いの喧嘩や怒鳴り合いになることしばしば、周りで見ているフィリピン人社員がヒいていたことを覚えている(万事テキトーなフィリピン人が仕事上で面罵しあうことはほぼない)。

 

 

私の初任給は月3万円、フィリピン人の賃金が1万2千円の時代だった。とはいえ、現地採用で日本人を雇うなら月8万円ほどが相場だったので、異常に低い金額だ。よく考えたら帰国の航空券すら買えない(笑)。

 

ただ、仕事は面白かった。よそでは味わえないエキサイティングな経験をさせていただいた。今の私があるのはこの会社のおかげと思っている。

 

常時、現地採用の日本人同僚が5、6人いたのだが、いずれも5年ほど働いて日本に戻ると割り切っていた現地採用組。いわば腰掛けだ。

 

このチームをまとめているのがフィリピン人妻を持つ件の日本人上司だった。

 

仕事上は厳しかったが、職場を離れると慣れない海外生活に苦しむ私を飲みに連れて行ったり、トラブルが起きた時もかばってくれるなど社会人としての基礎を教えてくれた。

 

また誰よりも自分に厳しかった。この業界でも一流とされる国内の企業で働いた経験があり、英語もフィリピン語も完璧。語学でも仕事の能力の上でも叶わないと思わされる人物だった。今もそう思っている。

 

私は4年勤務した後、この上司とは仕事上の方針から口論となり、売り言葉に買い言葉で退社するハメになった。しかし、人間としては尊敬していたのでその後だいぶ経ってからはわだかまりなく会い、言葉を交わす仲となった。

 

だが、風の知らせでこの上司がこのたび、不名誉な形で退社したと聞いた。その後の行方は誰も知らないという。

 

周辺情報によると退社前はフィリピン人の愛人を社内に引っ張り込むなど異常な行動が増え、部下に粗暴に振る舞う一方で、仕事すらしなくなっていたらしい。事実上のクビである。

 

この話を聞いて「あの自分に厳しく、優秀な人がなぜ・・」と絶句したものである。

 

思い当たることはないでもなかった。ほぼ新卒で私が入社した時は、アラフォーのこの上司と新卒の私の間にはアラサーの優秀な先輩社員が数人いた。だが、私を含め皆現地採用なので次々と日本に帰っていった。日本への転職は30代前半までが容易だからだ。

 

その後も現地採用の社員は入れ替わり続けるので、フィリピンに家族のいる彼は自然、常に新人を繰り返し教育する立場になった。

 

このような生活を20年近くも続けるとどうなるか。

 

海外で働こうなんて考える新入りははいずれも20代から30代前半と若く、彼との年齢差は広がるばかり。年をとれば自然考えも固くなるので、年々溝は広がる。

 

一方でバブル経済のフィリピンの給料はこの5年で倍増した。インフレで物価や教育費も上がり続ける。だが、成長の停滞している日系企業で給料は急激なベースアップは厳しい。気楽な独身の腰掛け仕事ならともかく、所帯持ちとして給料を一気に増やすにはジョブホッピングするか日本に帰国するしかない。

 

だが、つぶしの効かない特殊な業界ゆえ、同じ職種でフィリピンで転職するのはほぼ不可能。40を超えると日本に戻っても厳しい。

 

先の見えない自分のキャリアに不安も抱えていたのだろう。

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今振り返れば私が退社する頃にその兆候は現れていた。彼が部下と食事に行き、酒を酌み交わすなどのコミュニケーションは私の入社時から比べて急激に減っていたように思う。

 

もしも、諌め、時には孤独にならないように支えてくれる友人、知人が彼の周りにいれば・・。と感じざるを得ない悲しい出来事だった。