フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

フィリピンの大学バスケに驚き

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どんな田舎でもバスケットボールコートが存在する

フィリピンの大学バスケットボールについて面白い話を聞いた。
バスケは彼の国では花形スポーツで、プロリーグもあるし、大学選手権は国民的娯楽。日本の一昔前の野球のイメージに近い。
電気や水道インフラすら怪しいスラム街でもコートはあるため、男が何人か集まったら遊びはバスケと決まっている。学校で運動神経の一番良い子がやるのも必ずバスケ。選手は花形でとにかくモテるのだ。
この度、大学バスケ部時代にルソン島南部の地区チャンピオンになったことのある男性(25)と話した。
田舎の大学は2m近い黒人のハーフ選手を揃えた首都圏の大学に比べて体格で劣るためか、元プロバスケ選手のコーチの元、アジリティーとスタミナを徹底的に鍛えられたという。本人曰く「死ぬほど厳しい練習」だった。
土日の練習は2部練で一日6時間はトレーニングに明け暮れた。
それでも練習は週3日だけなので、練習量だけでいえば日本の部活より少ない。
これは大学の成績が悪いと退部になるため、平日は勉強漬けになるからだ。つまり「学生の本分は勉強」というわけだ。ちなみに、アメリカの大学スポーツもそうらしい。
彼の大学は特に厳しく、平均点が85点(クラス上位30%)以下になると退部させられてしまう。
反面、部員は優遇されており、自動的に4から6割の学費を減免する奨学金の対象となる。貧しい家庭の部員が多いので、クビにならない様に必死で勉強するのだ。彼も5人兄弟で家は貧しい。「親に迷惑をかけたくない」と勉強に勤しんだという。
花形で奨学金まであるので入部希望者は多い。彼の学年は50人が入部を希望したが、入部テストの合格者は25人だった。
遅刻やサボりが当たり前のフィリピンにもかかわらず、件の鬼コーチは必ず時間通りに練習を開始したという(驚きだ!)。
練習はキツいが、サボったら隣街まで10キロの罰走が科される。しかもビデオチャットスマホの位置情報で実際に走った距離をコーチが確認する。ルーズなフィリピン人のメンタリティからいって必ずズルしようとするからだ(笑)。これを毎回やるコーチは大変だろう。
部員は総勢30から40人もいたから試合にはなかなか出れない。彼も3年間は補欠だった。ドロップアウトするものが続出し、卒業時に同期は7人しか残らなかったという。
 
その場の快楽を追求し、将来への投資や我慢を美徳としないフィリピンでは「下積み」という言葉は存在しない。そんな文化を持つ国で3年間も補欠生活に耐えれる若者がいたとは!やはりどんな国でも優秀な人は優秀だ。
 
日本の大学スポーツのレベルはアジアではトップクラスだろう。しかし、私学の選手はろくに勉強なんかしていない(私もだが)。
 
プロになれず勉強もロクにしていないなら頭空っぽの学生が出来上がる。私の知人にも甲子園で活躍して大学野球まで行ったのにホストになった奴がいた。
会社経営者の立場で言えば、良い成績をキープしながら運動してる学生と、運動しかせずに授業中寝てる奴なら圧倒的に前者を採用したいと思うはずだ。その意味でこちらの方が健全な学生スポーツと言える。
フィリピンのバスケットボールなんて根性なしのだらけた連中ばかりが集まってると思っていたので意外だった。
彼自身、大学卒業後に日本に語学留学し、2年で日本語検定のN2をとっていた。
 
まさに文武両道。こういう人材がこれからのフィリピンを担っていくのだろう。

ここが変だよフィリピン人

コロナの影響で仕事を失ったフィリピン人語学留学生に仕事を紹介してほしいという案件が入った。

 

当社は人材派遣ではないが、とりあえず人助けと思って当人らに会ってみることした。

 

ちなみに国内にいる留学生は大きく分けて3つに分かれている。

①超金持ちの遊学生

奨学金や交換留学生など超優秀なエリート

③日本語勉強は建前で、金を稼ぎに来た語学留学生

といった感じだ。

①や②は欧米に留学する日本人と同じなのでさておき、コンビニバイトなどでよく見かけるのは③だ。

http://blog.livedoor.jp/keumaya-china/archives/51476685.html

 

2年制の日本語学校に通う留学生で昔は中国人、15年ほど前からはベトナム人が多い。しかし、学生とは名ばかりで、金を稼ぎに来ている連中ばかり。年間100万円以上する学費や生活費、何よりも貯金のために昼夜を問わず勉強そっちのけでバイトするために来ている。

https://www.google.co.jp/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASM2X7FHTM2XUHBI06G.html

 

母国の口座に約200万円分の預金があることや、日本語検定の合格証などが来日時のビザ取得審査に必要なのだが、そもそも、金がないから日本に来ようとしている輩なので、そんなものはない奴も大勢いる。

 

だからブローカーに初期費用30万円の賄賂手数料を払って日本語検定を替え玉受験したり、預金証明を偽造して入ってくるのだ。

https://next-infonews.com/news/6436/

 

留学生は一応、週28時間までというアルバイトの制限があるのだが、前払いとなる初年度の学費100万円やブローカー費などを捻出するため「学生」は母国の金貸しや親族から借金してくる。だから来日するやいなや制限など無視して必死で働き、毎月30万円ぐらいは稼ぐらしい。

 

しかし、これは他国の話。フィリピンから来日する留学生とはほとんどが②となっている。

 

理由として、①に当たる富裕層は英語が堪能なのでほとんどが欧米に行くから日本なんかにはこない。

 

③については、フィリピン人は金を貸りても返さないので、仕事目当てで日本に来る貧困層に100万円も貸す金貸しが存在しないことが理由である(笑)。借金して留学を隠れ蓑に働くというモデルが成立し得ないのだ。

 

ベトナムや中国は司法機関がある程度機能し、かつ暴力団といったアングラ組織もきっちりと仕事するので、高利貸しが成り立つ。

 

だが、フィリピンでは裏も表もみんなグダグダなので担保でもないと金貸しは成り立たないのである。

 

そして100万円分の担保を持っている人は少ないし、銃社会なのでそれだけ資産のある人と揉めることは貸す方が命がけになることを意味する(笑)。

 

そういえば、昔は金を貸してくれと担保に銃を持ってくる話を現地でよく聞いたし、殺し屋は昔なら1万円で雇えた。今でも10万円しないだろう。100万円の貸し借りなら下手すれば2、3人は死人が出る。

 

そんな訳で語学学校にいるフィリピン人は稀少生物である。珍しさもあって面談してみたのだが、なかなか衝撃だった。

 

来たのは25歳の女と27歳の男。南部ミンダナオ島出身で同島ダバオ市日本語学校で3か月学び、難波の語学学校に来ているという。女は来日一年、男は半年らしい。

 

驚くべきは学費。年間100万円を超えるはずだが「両親が農薬の販売業」(女)、「父親が軍の少佐」(男)と家族が賄っているらしい。

 

繰り返すが年間100万である。…今時日本人の家庭でもなかなか厳しい金額だ。特に女の方はさらに生活費も仕送りしてもらっているのだとか…。最低賃金が2、3万円の国でどれだけ金持ちなのか!

 

だが、さらに驚いたのがそのメンタリティ。

 

女は他のフィリピン人女性と2人で昨年3月に来日。家賃4万円のアパートに住んでいたが、フィリピン時代から付き合っている男が半年後に同じ学校に入学したため、家賃8万円の一軒家に男女3人で引越した。→金の無駄。

 

介護のアルバイトで週28時間の規制通りに働いていたが、10カ月ほどして腰を痛めて退職。夜勤の工場などで働いていたが、「キツい」と辞めて介護の仕事を探しているのだという。→根性なし。

 

これまで毎月13万円程度あったバイト代は「全て遊びに使った」とあっけらかんと話す。→面接で言うか?

 

ボーイフレンドの男はすでにバイト先があるらしくただの付き添い。面接に姉や母を連れてくるバカはフィリピンではたくさんいるが、まさにそれ。頼む奴もついてくる奴も双方の神経を疑う。

 

女は履歴書など一切持参せず手ぶら。挙げ句の果てに男はこちらが話しているのにスマホをいじり始める体たらくであった。

 

計算して一年以上は勉強しているはずなのに日本語も酷かった。「今まで一番大変だった仕事は?」程度の質問に答えれないし、日本語検定なんて受けてもいない。

 

唖然とするこちらを尻目に女は「卒業したら特定技能ビザを取りたい」とのたまう。バブル景気で上手く波に乗った親のカネで日本に来て、バイトも勉強も適当にやり。フィリピン人同士だけで遊んで付き合ってダラダラと生活しているのだ。私が親なら情けなさで号泣するであろう。

 

もちろん酷い留学生は日本を含めどの国にもいるが…、さすがはフィリピンである。こんな連中がいる限り、発展はしないであろう。

 

 

 

 

 

 

何かがおかしい新型コロナウイルス

新型コロナウイルスが蔓延して、当社も3月以後バタバタ対応に追われていた。

しかし、どうもおかしいと気づいた人も多いのではないか。

 

つい3月まで「日本も欧米のように大量の死者が出る!」と騒いで緊急事態宣言を発令し、多くの産業が大打撃を受けた。国民は感染者数に一気一憂する毎日だった。

 

だが、蓋をあけると死者は高齢者や基礎疾患がある人ばかりのわずか900人(6月前半時点)。

毎年インフルエンザ関連で高齢者を中心に2000~3000人が死んでいる日本では大騒ぎするほどでない人数にとどまっている。

 

これはフィリピンでも同じだ。

 

ドゥテルテ大統領は持ち前の素早い決断で3月16日に突然ロックダウンを発令。これは4月頭にフィリピンのお盆休みである「万聖節(オールセインツデー)」があるため、マニラ首都圏の市民が一斉に帰郷するのを防ぐ狙いだったと思われる。

 

実際、フィリピンの医療は平時から崩壊しており、私立病院に入院したら数十万から数百万円の現ナマがないと治療してもらえないし、治療費無料(ということになっている)の公立病院は野戦病院もかくありなんという体たらくなので、庶民はなかなか病院に行けないのだ。

 

ましてや地方ではまともな病院自体がないので、当初はコロナの検査は検体をオーストラリアに送って行っていたほどだった。

 

フィリピンの官僚も一部はとても賢いので、現実を踏まえて素早く地方への人の移動を止めたのだ。

 

外出禁止の厳しさも日本とは比べ物にならない。大統領は「ロックダウンに従わない者は射殺してよい」と警察らに指示し、実際に数人が射殺されている。ちなみに殺された人たちはいずれも精神を病んでいたようだが・・。

 

しかし、日本のそれとは違いポイントがずれた外出禁止策だったようだ。



例えば

・市長が次期選挙を見越した人気取りを狙い、市役所で救援物資配布イベントを実施。結果、三密どころでない群衆が押し寄せる。

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・各地区をまたいだ移動を禁止するため、警察による移動許可証をチェックする検問をもうけた。しかし、だらだらしたフィリピン人はこう行った処理が異常に遅い。日本人の4、5倍は時間がかかる。かくしてバイクの異常な行列が検問所で発生。

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・保健体育教育のないフィリピンでは健康管理に関するリテラシーが異常に低いため、コロナ対策案内に「うがい」の重要性が説かれていない。代わりに「長袖を着る」「櫛から髪を回収する」といった、ずれたアドバイスが重視される。

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フィリピンのとある私立学校で告知されたコロナ対策。一番目が「長袖を着ること」から始まる辺り、学校なのにトンチンカン。

これらの状況から見ても日本や他の先進国とは桁違いに対応がトンチンカンだったのだ。

 

ではフィリピンの結果はどうかというと死者は1000人(6月6日時点)で日本とさして変わらない。もちろん、統計はめちゃくちゃだろうが、それにしても欧米のように万単位で死者は出ていないと言える。

 

これはIPS細胞で有名な山中教授の話す「ファクターX」があるのだと私は考えている。

 

アジア人は重症化しにくい何らかの要素があったのだろう。そうでないと説明がつかないのだ。

 

逆に言えばコロナからの経済の復興はアジアを中心に行われる可能性があるともいえるのではないか?

理想の男性像

私は昭和生まれの九州人なので、典型的な男尊女卑文化で育った骨董品である。

とはいえ、フィリピンで過ごした期間も長いので、日本の男性偏重社会が世界的に見て異常であるという国際感覚も有しているつもりだ。

 

実際のところ労働力としてみた場合、フィジカルを除けば男女差はさほどない。勉学に関して言えば、性欲をコントロールすることが難しい思春期の少年が勉強に集中する能力は、少女より低くなるだろう。女性には理解しがたいだろうが、男性ならみな静かにうなずくはずだ(笑)。

 

 

この点、フィリピンは世界的に見ても女性の社会進出上位の国である。

 

女性大統領も2名生まれているし、民間企業でも女性の管理職率は58%とはアメリカの42%よりも高いのである(2006年の統計)。ちなみに日本は10%にすぎない。

http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sekkyoku/pdf/h19shogaikoku/sec5.pdf

 

 

エリートが集まるフィリピン士官学校の2020年の卒業者の成績上位者10名中5名は女性だった。同学年の196名中女性が23名しかいないことを考えると、どれだけ女性が優秀かよくわかる。

 

www.rappler.com

 

「『女オカマ男』の順に雇え」(某日系企業社長)とか、「女はどちらも優秀だが、男が働かない割合はタイよりも断然高い」(タイ駐在経験のある某高級ホテルマネージャー)などと私が実際に聞いた話でも女性上位の事例にいとまがない。

 

 

そんなフィリピンで新型コロナからのロックダウンが緩和される中、こんなニュースが出回った。

 

恋人の自転車通勤に長距離伴走するバイク:

ルソン地方のカビテ州から首都圏マカティ市まで自転車で通勤する恋人の女性をずっと伴走するバイク運転手の姿にネットで称賛の声が集まっている。デニス・トゥラブスさんは普段はバイク配車アプリのアンカスに所属するバイク運転手。6月に入り防疫措置が緩和されてもバイクの2人乗りは依然禁止されているため、彼女を直接職場まで送り届けることができない状況が続く。マカティ市の職場まで安全に通勤できるよう、彼は毎日、彼女の自転車通勤をバイクで長時間伴走しながら見守っている。(6月6日 日刊まにら新聞 大衆紙の話題 より)

 

 

 

郊外からマニラ首都圏に自転車で通う女性に毎日バイクで伴走する彼氏の「美談」だ。

 

コロナの影響でバスの減便や乗車人数制限がされているマニラでは今、自転車通勤が増えている。そもそも首都圏の家賃は日本の主要都市並みかそれ以上に高いので、労働者は郊外から通勤するのだ。

www.straitstimes.com

 

だが、鉄道がほぼないフィリピンでは、交通渋滞の酷さは世界2位と言われる。東京の鉄道をほぼ全て撤去したらどうなるかを想像していただければわかりやすい。この地獄のような渋滞に揉まれながら、バスや乗合タクシーで2、3時間かけて通う市民も珍しくない。

 

ただでさえ地獄なのだから、コロナによる制限が加わればどうなるか?おかげで通勤バスを数時間にわたって待ったり、何時間も徒歩で移動する労働者の報道が流れている。

 

そんなこんなで自転車が流行っているのだが、面白いのは記事を見た国民の反応。「女性に尽くす優しい男」として大絶賛なのだという。

 

これが日本ならどうなるか?片道2時間近いので往復で毎日4時間は送り迎えに費やすのだ。間違いなく無駄な時間を過ごすダメ男とみなされるだろう。

 

そもそも男性が、毎日もう4時間必死で働いて彼女にバイクでも買ってあげるなり、地元に転職させればれば良いのである。薄給の運転手稼業でもそれぐらいはできるはずだ。

 

ところが彼らはそうは考えない。

 

必死で働きだしたおかげで、彼氏が勤務中に愛の携帯メッセージを送れなくなったり、疲れ果てて毎晩のお勤めができなくなることは「愛していない」と見なされるのだ。毎日無駄に伴走してもらうことこそ女の幸せなのである。

 

ちなみにこの女性の勤務先はビジネス街のマカティだから収入は間違いなく彼氏より上である。

 

フィリピン人女性の社会進出の記事を見て、フェミニストっぽい日本のインテリは喜んでコメントするが、背景には働かない男と、それを囲って喜ぶ女性といった日本では考えられない関係性があることを見逃している。そして、情報化社会の昨今ではこういった現実を悟った賢い女性の未婚率が上がっている現実も・・。

 

発展途上国の統計情報だけを見て安易に判断するのは危険なのだ。

外国人労働者は会社をどう見ているか

外国人労働者受け入れについて特定技能ビザにまつわる営業活動が盛んだ。

だが、外国語もできない国際感覚ゼロの業者が、カネ目当てに飛びついてるだけ、といった感がある。

 

手を出す前に性質、気質と言うものを理解することが必要であろう。

 

私はフィリピン専門なのでフィリピン人の仕事に対する概念から説明したいと思う。

 

日本人は日本語が上手で仕事のできる外国人を見ると、お人好しだからすぐに「自分たちと同じ」と思いがちだ。

 

実に甘い。

 

途方もない大きなギャップが彼我の間に横たわっているのである。

 

例を挙げよう。

 

まず、一番大きいのは会社への忠誠心だ。

 

そもそも華僑が経済を回すアジアでは会社は労働者を一切信用しない。

 

いかにして労働者を使い捨てるか、と考える経営者と、搾取されつつもいかにしてずる賢く立ち回るか、と考える労働者の騙し合いだ。

 

だから、労働者は頻繁な転職(ジョブホッピング)が大好きである。フィリピンで労働者の面接をしたことがある人なら、必ず気づくはずだ。

 

職務経歴を見れば分かるが1カ所で3年以上働いた人間は極めて少ない。特に工場労働者や販売員といった労働者階級で見るとおそらく2030パーセントぐらいしかいない。

 

ほとんどが半年から1年少々で仕事を転々としている。

 

終身雇用は終わりつつあるとはいえ、「石の上にも3年」という日本との差は激しい。

 

なぜこんなことが起きるのか考えてみよう。

 

 

まず日本は会社が労働者を育てると言う文化がある。大卒の新入社員で言えば、学部や専攻は問わず一緒くたに採用する。

 

 

こんなことをやるのは世界中で日本だけなのだ。

 

会社は大学で学んだことなんかはほとんど無視してその人柄や潜在能力、つまりは今後伸びるか否かを重視する。そしてまっさらなキャンパスに文字を描くごとくその会社独自の色を染めあげてしまうのを好むのだ。

 

だから一般的に言って中途採用や転職者は新卒叩き上げよりも給料は低くなりがち。大手新聞社では中途採用を「外様」と社内で呼ぶと聞いた(アホ臭いが・・)。

 

だが、アメリカを始め海外では、法学部を出たら法律関係に行くし、経済学部出たらそれ関係の仕事に就くことが多い。つまり海外の会社は人を採用する時その人の将来や人格ではなく、その人の現在持っている能力に給料を払う。

 

会社は社員を育てる場ではないのだ。

 

 

アメリカ植民地だったフィリピンも同じで能力に対して対して採用を決める。

 

 

だから昇給や昇進に関しては、セミナーなど社外で学んだ実践や資格を重視する。アメリカでも社会人になったら転職の合間に自分で大学院に通ったりするのはそのせいだろう。

 

 

 

しかしこの考え方でいくとどういうことが起きるかと言うと、1つの会社で仕事をしてる限り給料は基本的に増えないのである。

 

先日マニラで実習生の両親と食事をしたのだが、彼の父親はマニラの港でフォークリフトを運転する仕事を20年続けている。しかし、給料は最低賃金(月30,000円)のまま昇給がないという。

 

 

海外の会社は基本的にこういう使い方をする。つまり長く働いても人が育つと考えていないから20年間昇給しないのである!

 

「労働者の仕事は誰でもできる。労働者は取っ替え引っ替え可能」という考えが根底にあるから、外資系企業はマクドナルドのように業務を標準化するマニュアルのレベルが高い。

 

これはベトナムも同じで、同じ職場で長く働く人は転職する能力がない人とみなされるらしい。

 

だからフィリピンのローカル会社では転職をさせたくない幹部社員と、使い捨てる社員の待遇差はえげつないものがある。

 

オーナー会社の場合、幹部候補生など優秀な人材には社用車を自家用車として貸し与えたり、経営者が所有するアパートに格安で住ませたりする。この場合「貸す」というのがポイントだ。信用なんかしていないので、転職できないようにあの手この手で縛り付けてしまう策略なのだ。

 

その反面、一般社員は転職させるがままにしている。特に引き止めもしない。

 

こんな環境で育った連中相手に転職を認める特定技能ビザを導入するのは、日系企業が阿鼻叫喚の地獄に陥ることを意味する。

 

実際に現在の日本でも、日系フィリピン人や特定活動ビザのベトナム人の料理人、といった転職できる資格で働く外国人労働者は大部分が3年間同じ職場で続かない。

 

入社時は土下座せんばかりの態度を見せるが、それはその場限り。

舌の根も乾かぬうちに転職を繰り返すものばかりなのだ。

追われる恐怖、追いつかれる恐怖

 

www.sbbit.jp

ここ4、5年フィリピンの経済発展を目の当たりにしていたが、

先日橘玲さんのこの記事を読み、私の考えていることとズバリ一致していると思った。

 

 

以前私はフィリピンは経済的に発展しないという持論だった。国内産業がなく、海外出稼ぎ労働者の送金でしか成り立たない構造なので、外国人労働者を受け入れる日本にとっては好都合。日本が労働者を継続的に受け入れるならフィリピンしかないと考えていた。

 

昨今ブームのベトナム10年前の中国と同じと言われており、アジア随一の経済成長が続いているため、日本に出稼ぎを希望する人は年々減り続けている。

 

この現状を知らないのは実習生を受け入れている日本企業だけである。

 

だが、どうやらフィリピンも思った以上に早くそうなりそうだと恐怖を感じはじめた。

 


年後はまだ大丈夫だろうが、10年後はもはや怪しい。

 

以前、私がフィリピンが伸びない国と判断していた理由は

 

①教育レベルが低い

英語とフィリピン語および地方言語に分断されているため、統一された母国語が不完全という言語ハンディキャップ。また、「できない奴はほっておけばいい」という米国モデルの切り捨て型教育なので、国民のおそらく8割程度が桁の割り算や引き算が怪しい。

なまじ英語ができるだけに優秀な人材は海外に出て行ってしまい、国にはダメな人しか残っていない。

 

 

400年前から続く財閥による政治構造

旧宗主国スペイン系や華僑といった1割の財閥が9割の土地を握り、政治は金持ちの家業。コメや鉄も華僑の財閥がカルテルを組んで価格を釣り上げ、庶民は搾取されるがまま。金持ちは脱税も殺人もやりたい放題の法の外で生きていける。

 

貨幣経済に向いていない非論理的な思考とのんびりとした民族性

民族的特徴で論理でなく右脳=感情で判断するので、論理的な思考能力が弱い。

自らを律して成長させることよりも、快楽に身を任せ、本能のままに過ごすことを求める人の割合が他国と比べ極端に高いのだ。分かりやすくいうと怠け者。

 

と見ていた。

 

だが、近年これを改めねばならないかもしれないと思い始めた。

 

それは平均年齢24歳という「若い人々のポテンシャルの高さ」である。

 

良い例が韓国である。私の叔父で大阪でガス設備会社を経営しているものがいるのだが、40年ほど前の高度経済成長期に韓国人をたくさん雇っていたという。

 

とはいえドヤで拾ってきたようなビザも怪しいゴロツキで、飲む打つ買うしか興味のない民度の低い連中だったらしい。

 

当時を振り返り、この叔父は「韓国人は嫁がしっかりしている場合成功した。男はダメなやつばっかりや」と馬鹿にして笑う。

 

つまりは団塊の世代の日本人が貧しかった当時の韓国人に抱くイメージは「自堕落でダメな男。女は多少マシ」なのだ。我々がフィリピンに抱くイメージとまったく同じだ。

 

だが、今や韓国の経済成長は目覚ましい。

 

ベトナムやフィリピンといった東南アジアのリゾートは韓国人で溢れており、現地で不動産を買うのは中国人の次に韓国人だ。我々日本人が道をあるいても「アンニョハセヨ」と声をかけられる。

 

フィリピン人が韓国の工場に出稼ぎで働いた場合の給料は月給18万円程度らしい。社会保険がこれだけ高くなった今、手取り18万もらっている日本人の工場作業員は少ないだろう。

 

もはや先進国入りした韓国は東南アジア諸国から羨望の眼差しで見られているのだ。

 

 

フィリピンも同じで若い人は比較的まともなのが増えている気がする。

 

送り出し機関のスタッフは夜遅くまで仕事をしているし、責任感も強い。市内中心部の高級外資系レストランならサービスもマシになっている。ため息をつきながら働いている馬鹿者は、まともな店ではもう見かけない(ローカルにはまだ、たくさんいるが・・)。

 

特に進歩を感じるのは庶民の結婚観だ。20年ほど前は30代で独身の男は間違いなくゲイだった。デブでもハゲでも結婚率は高かった。

 

エンジニアや教師といった知的労働者の女性が、プータローの彼氏や旦那を養っているという風景をよく見かけた。

 

 

カトリック教徒の教義上、避妊が禁止されているため子供は6人前後がざらで、12人兄弟なんてのも見かけた。貧乏子だくさんを地で行っていたものだ。

 

ところが、近年子供の数は2、3人。教育制度も改善され、高卒年齢は16歳から18歳に伸びたので底上げが始まった。

 

財閥支配は続いているとはいえ、近年3040代の地方自治体の長が生まれている。若い世代のエリートはSNSや旅行などで先進国の常識に慣れ親しんでいるため、縁故主義で腐敗したフィリピンを改善しようとする意欲は高い。民度が上がっているのだ。

 

つい先月起きた火山の噴火でも、避難所が綺麗なテントになっていた。わずか7年前の台風被害では段ボールハウスで雑魚寝を強いられていた国が、である。寄付される支援物資もエコを意識したものが出てきている。つまりは先進国に短期間で近づいているのだ。

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左が7年前の台風時の避難所。右が今年の火山噴火の避難所

取引先のとある企業は「フィリピン人は5年後には日本に来なくなる」と危機感を持っていた。

 

安い労働力としてフィリピンを見る時代は徐々に終わりつつあるのである。当社も事業のあり方を変えていかねばならないかもしれない。

おそるべしベトナムのサービス業

ベトナム中部ホイアンに年末旅行した。

近年は中韓のやかましい観光客でいっぱいと聞く中心部を避け、地元の知り合いに紹介された市街地はずれのホテルに1週間宿泊した。

 

4年前開業したばかりで、プールは付いているが部屋数は10部屋程度のこじんまりしたプチホテルだった。30代前半のベトナム女性を筆頭にオーナー一族が経営している。

この若いオーナーは英語を話し、日中、常にカウンターに立ち続ける。

綺麗な植栽のホテルの庭はチリひとつ落ちておらず、道路側の窓は騒音防止で2重にされており、洗面台は日本のIN●X製と要所要所にこだわりが見える。

塗装など細かな内装は日本より劣るとはいえ、一泊1万5千円クラスになるフィリピンの五つ星ホテルと同等のクオリティだ。

 

Wi-Fiは各部屋に別々のルーターが付いており、動画を余裕で視聴できる。

客はほぼ白人ばかりなので騒音もなく快適である。

これで、一泊4000円代…。

 

さらに驚くべきはそのサービス。

生後5ヶ月の赤ん坊が部屋でぐずっているとオーナーは「ロビーに降りてきて」と私に声をかけ、母親など家族全員で抱いてあやしてくれた。

別の日に6歳の長男が腹を壊して脱水症状になったのだが、カウンターの女性スタッフは夜10時に救急病院まで付き添ってくれた上、病院までのタクシー代を「後でいいから」と立て替えてくれた。

感激して後でチップを渡したら「多すぎる」と返しに来た(笑)。

 

「オモテナシ」は日本だけのお家芸ではないと痛感させられた。

 

そういえば救急病院のサービスにも驚いた。点滴で2万円は取られる私立病院だからかもしれないが、待ち時間0で血液検査と点滴をしてくれたのだ。日本の病院よりも処置が早い!

病室も清潔。ついてくれた20代の太ったメガネ看護婦は笑顔こそないものの、テキパキと無駄なく動く。

ベトナムの 病院は賄賂を渡さないと治療してくれないと聞いたので、チップを渡そうとしたが、こちらも拒否された。

なんというか、日本よりもサービスがいいとは言わないが、フィリピンとは比べるのが失礼なレベル。

 

これがフィリピンなら、ホテルなどサービス業のオーナーがカウンターに立ち続けることはまずないだろう。自分は海外にでも遊びに出かけ、ほったらかされた設備は故障ばかりで、スタッフは勤務中もスマホ漬けのはずだ。

第一、「客のタクシー代を立て替える」なんてことはスタッフはもちろんオーナーですら絶対にしない。もらったチップが多いから返しに来るなんて発想自体ないだろう。

 

救急病院もしかり。夜勤の看護婦はスマホいじりに忙しく、こちらが怒り狂って圧をかけるまで待合室で患者を放置することは間違いない。

ベトナムは伸びる。としみじみ感じた年末だった。