フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

ドゥテルテはトランプか?(その3)

では、実際にどのような変化が期待されるだろうか。

アキノ現大統領になって以来、フィリピンの経済成長は目覚ましい。ここ5年で経済規模的には倍増したくらいの感覚がある。

しかし、急成長の立役者であるアキノ前大統領の人気は驚くほど低い。選挙ではアキノ氏の後継者であるロハス候補はボロ負けしてしたほどだ。

 

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(選挙前はアキノ氏をミニオンズに例えてバカにする画像がネットで溢れた)

 

 理由としては持つものがますます栄え、持たないものとの格差はより一層広がったからだろう。結局国民の4割が貧困層と言われている状態は続く。

 

中間層は確かに急増した。英語力と通信環境の進歩から発達した欧米外資系コールセンターでは現在34万人が働いていると言われる。彼らの給料は最低で月5万円。月10万円以上貰っているものも珍しくない。

 

しかし、ここ5年間の産業や市場の成長に比べ、行政サービスに真新しい進化はない。私の知人女性は昨年、高校生くらいの年齢の複数の男にアパートに押し入られ、財産をすべて失った。警察の捜査能力は相変わらず皆無に等しいのでもちろん犯人は捕まらない。

 

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(右側は現金輸送車で、防弾チョッキにライフルを持っているのは警備会社の社員。これくらい重装備でないとこの国では大金を運べない)

 

社会保障も貧弱で、中間層に成り上がっても大病や事故で働けなくなれば、一気に貧困層に逆戻りだ。

インフラ開発も追いついていない。渋滞は10年前の5倍くらい酷くなったように感じるが、首都圏を走る電車(モノレール)は当時から2本しか増えていない。今ではマニラ首都圏内の移動に片道4時間かかる時もある。

 

真新しい日本車に乗れる中間層が増えたとはいえ、エアコンのないジプニー(乗り合いバス)での通勤を続けるものが過半数だ。渋滞がきつくなった分、むしろ辛かろう。

 

ネット上でこう言った不満が渦巻く中で、現れたのがドゥテルテなのだ。

だが、ドゥテルテ氏はいわば橋下元市長や石原元知事のような一都市の改革派リーダーで、国政での実践はない。よって経済政策や外交においては未知数だ。

 

また、国政では周りとの「バランス」が求められるのはどこの国も一緒である。

 

先日マニラで現地の日本人経営者と話していたが、正直、治安が少し良くなる以外の変化はないとみているようだ。

 

フィリピンの政治は財閥一家が家業でやるもの。ドゥテルテ氏は質素な自宅を公開するなど他の豪族政治家との違いを強調しているが、実は父親は元知事でいとこは代々セブの市長と名家の出。結局のところ既得権益層との関係もガッチリと残っているはずだ。そういえば、小泉氏も政治家の息子だった。

 

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(選挙では質素な自宅を公開し、清廉さをアピールする戦略を展開。大成功した)

 

就任後は外資規制緩和や連邦制、農地改革など抜本的政策に言及しているが、わずか6年の任期でどれだけに改革が期待できるのか?となると疑問である。

 

 

ドゥテルテはトランプか?(その2)

ドゥテルテ支持者の熱狂ぶりは凄まじい。集会では同氏が汗を拭ったタオルを支持者が奪い合い、フェイスブックで批判でもしようものなら即炎上してしまう。熱狂と言って良い。

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だが、私が思うに、ドゥテルテに一番近いのはトランプではない。「自民党をぶっ壊す!」と気勢を上げた小泉元首相だろう。
 
ドゥテルテは選挙演説で「フィリピンはどうしてこんな(ダメな)国なんだー!」と叫ぶ。さらに、会場の近くにある中央郵便局建物を指差し、「みんなこれに不満だろう?俺が壊してやる!」と煽る。国民は大歓声だ。
 
 
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ちなみにフィリピンの郵便局は荷物を盗んだり、無くしたりと皆辟易している。かの国でネットショップの普及率は低いが、その理由は郵便局のレベルの低さにあるとおもう。ちなみに同じ東南アジアでも、ネット販売が活況なベトナムなら少なくとも国内配送はきちんとやる。
 
彼はそんな国民の潜在的な不満をストレートに表現する。分かりやすい過激な発言で煽る手法は小泉劇場そのものである。
 
 
また、フィリピンは今でも南部ミンダナオ島で独立、自治を望むイスラム勢力との内戦が続いている。貧しい地域なので、新人民軍(NPA)と呼ばれる共産ゲリラとの武力闘争も激しい。国軍とイスラムゲリラ、NPAが三つ巴で紛争を繰り広げる地域。それがミンダナオ島だ。
 
どれだけ危険かというと、日本の外務省が設定する危険度で、ミンダナオ島の西部はイラクアフガニスタンと並ぶ渡航中止区域に指定されているほどだ。
 
だが、過去ドゥテルテ氏が市長を務め、同氏の娘が現職市長を務めるダバオ市はミンダナオ島だけでなく、フィリピンで一番治安の良い街として知られている。自前の処刑団で犯罪者を消しまくったことが治安改善手法としてセンセーショナルに取り上げられるが、それだけでない。
 

イスラム教指導者とは対話を重ねつつ、「私の8人いる孫のうち半分が(婚姻などで)イスラム教徒だ」と宗教の違いに寛容さを見せる一方で、共産ゲリラのキャンプを訪問し「私は社会主義者だ」と彼らの信条に共感を示してみせる。 

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(フィリピンではイスラム教徒は差別の対象。敬意を表する政治家は珍しい)

 
彼は実際にイスラム教の代表を市政に招いているし、政府軍との衝突で負傷し捕虜になったNPA幹部への治療費を寄付したこともある。両組織ともドゥテルテ氏の大統領就任は歓迎しているようで、長年にわたって殺し合いを続けてきた関係に明るい兆しが見えている。

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(共産ゲリラの信条に理解を示す異色の側面も)

 

言行一致、硬軟おりまぜたその手腕は特筆に価する。
 
このような手腕を地方都市の市長で見せた人物は記憶にない。トランプなどと比べるのはフィリピンに失礼だろう。貧困層だけではなく、インテリからも支持されている理由はここにある。(つづく)
 
 
 

ドゥテルテはトランプか?(その1)

フィリピン大統領選挙が終わった。

現在も開票作業が続いているようだが、大統領はここでも何度か取り上げたドゥテルテ氏に決まりそうだ。

 

news.tbs.co.jp

しかし、欧米や日本においてこの新大統領の報道され方にはいささか疑問を覚える。ドゥテルテ氏の暴言癖を取り上げてひたすら「フィリピンのトランプ」と言ったり「親中派だ」と煽るメディアばかりだからだ。

 

新聞社の内情に多少の知識がある立場から言えば、トランプと紐付けて報じるのはいささか無理のあるこじつけだと思う。おそらく書いている記者自身、それは承知のはずだ。

 

欧米や日本など先進国の読者はフィリピンの大統領選挙なんて村長選挙並みの関心しかない。そこで記者は考える「どうやったらデスクに取り上げてもらえるか」「どうやったら記事のクリック数を増やせるか」そこで思いついたのが「トランプ」というキーワードである。

 

ドゥテルテ氏の暴言を取り上げトランプと結び付ければそれで記事の購読率は上がり、書いた記者の給料も上がる。記者からしたらドゥテルテがどれだけトランプと似ているかなんて関係ないのだ。どうせ村長選挙だから。

 

だが、これは乱暴すぎる切り口で、本質を見誤る危険が高い。欧米メディアは日本の記事にすぐに「ヤクザが背後にいる」という論調で報じるらしいがこれも同じ。読者に媚を売る記事を書くのは最低だと私は思う。

 

たしかにドゥテルテは過激な発言をする。

 

しかし、フィリピンは民主主義の失敗国家なのだ。縁故と格差がひどく政府は腐敗し、犯罪者はロクに捕まらない。10年前なら2万円くらい払えば殺し屋を雇える(今は値上がりして10万円くらいか?)国なのだ。

 

わかりやすく言えば私自身、殺し屋を雇うか、死体を丁寧に埋めればあの国で誰かを殺しても捕まらない絶対的な自信がある。警察はバカばっかりだし、金を払えば裁判も思うがままだからだ。

 

こんな国でアメリカ型民主主義が最高といった考えは無駄である。そもそも貧乏人に生まれた時点で命はゴミのように軽い。

 

「犯罪者の処刑」は先進国から見て暴言かもしれないが、実際に南部ダバオ市の治安改善に成功した事実は魅力的だ。家族の隣近所にシャブ中がおり、警察官に強盗されるニュースに接する彼らから見たら治安改善の公約だけでも魅力的に聞こるはずだ。

 

こういう視点をしっかりと捉える分析になっていないことが残念である。

 

pinoyintern.hatenablog.com

やたらと「親中派」と書く日本のメディアもどうかと思う。確かに親中派の大統領が生まれたという記事にすればクリック率は上がるだろう。日本人は中国には潜在的な不安を覚えているからだ。

だが、彼は「中国との対話」を希望していたり「中国人の血を引いているから中国とは戦争しない」という発言もあるが、「ジェットスキーで(領土問題がある)南沙諸島に行ってフィリピンの旗を立ててやる」という発言もしているのだから簡単に親中派とは言えないと思う。

 

まあ、とは言っても親米一本調子ではないようなので、こちらの点はもう少し様子を見る必要がありそうである。(続く)

newsinfo.inquirer.net

 

 

 

フィリピンウーバー体験記(その1)

バブル景気が加速し続けるマニラではタクシーがつかまらない。

 

圧倒的に台数が足りないのだ。だから6、7割くらいの確率でぼったくりタクシーに会うハメになる。せいぜい100ペソや200ペソ(300円から600円程度)多めにふっかけてくる類だが、いちいち交渉するのはめんどくさいものだ。

 

さらに困るのが乗車拒否である。この断る理由が不可解で、「自分の家(行きたい場所)から遠くなる」とか「遠い」「渋滞がひどい」とかわけのわからない理由で断ってくる。まあ目的地が遠いのは初乗り運賃(約120円)を稼ぐのに不便だから、理解できなくもないが、近距離でも断る輩がいる。

 

4年マニラに住んだ身でもこの断る論理的な根拠がわからない。ドライバーの頭が悪すぎて思いつきで断っているだけ、としか思えない。実際、発展途上国においてタクシーの運転手は最下層の仕事だから、ロクに学校も出ていない動物みたいな輩も多い。

 

細かい紙幣を用意するのは客の責任で、大きい紙幣を出すと運転手はあからさまに嫌な顔をする。釣り銭がないフリをして金を取ろうとする奴も多い。

 

周辺人口を含め3700万人の商圏を持つと言われるマニラ首都圏だが、タクシーの数はわずか3000台と東京の8万台に遠く及ばない。慢性的なタクシー不足なのに首都圏を走る電車はわずか4線しかない。公共交通機関が圧倒的に不足している上、バスやジプニー(乗り合いバス)は強盗事件が頻発する。

 だから高給取りのコールセンターの従業員など、少し余裕のある人はタクシーを通勤手段に使うようになった。マニラではタクシーは完全に売り手市場だ。バブル時の日本は一万円札をひらひらさせて止めていたらしいが、それが想像できる状況である。

 

さて、そんな中タクシーを求めてさまようタクシー難民の救世主として一昨年、白タク配車アプリ、ウーバー(Uber)が上陸した。

 

アメリカで開発されたウーバーは、一言で言えば、白タクをスマホで呼べる配車アプリだ。

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今年5月ぐらいまで登録する運転手(ウーバードライバー)募集を兼ねてものすごい額のキャッシュバックを用意したらしく、月に30万円(10万ペソ)近く稼ぐものが続出したという。

 

おかげで白タクを始めるためにこぞって皆が車を買い求め、一時フィリピントヨタの在庫がなくなった。車が売り切れるなんて在庫管理の天才トヨタではありえない事態だろう(笑)。

 

だが、そのウーバーバブルは続かない。IT系企業は、ものすごいプロモを売って注目を集め、目的を達成したら一気に通常価格に戻すのが常套手法。

 

運転手(30)は「以前は週23,000ペソ(7万円)売り上げがあったが、今は半分も行かない」と嘆いていた。

 

しかし、ウーバーを利用して驚いた。めちゃくちゃ快適なのだ。

 

例えば、支払いはすべてクレジットカードで、GPSで計算した走行距離に応じたコミッションがウーバーを通して、運転手の口座に入る仕組み。これで我々乗客は釣り銭のストレスから解放されるし、運転手が金を触らないのでぼったくりの危険はない。

 

ただ渋滞が酷い時間は割り増し計算となる。私が2週間マニラで利用したのだが、平均200ペソ(500円)ぐらい。決して安くはない。通常のタクシーの倍近くかかるようなイメージだ。

 

だが、20分も30分も灼熱の路上でタクシーを待ち、挙げ句の果てに何台も乗車拒否を食らうストレスを考えれば許容できる金額だ。

 

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(ウーバーの車は日本製が多く、新車ばかり!)

 

また、ウーバーは乗客から評価をされるので、ドライバーも車の質はタクシーと比べ段違いに良い。特に車はほとんどが購入1年以内の新車だからエアコンの効きは最高だ。

 

操作はさすが米国製アプリで簡単。目的地を入力して配車を依頼するだけ。ただ、この目的地入力画面への導線がややクセがあり、最初は四苦八苦した。

 

依頼すると車の位置が地図で表示される。フィリピン人は地図を読めないのだが、そこは安心。イスラエル製の無料カーナビアプリ、ウェイズ(WAZE)を使っているものが多いから、概ねスムーズにこちらに来る。

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(カーナビアプリWAZE。英語で音声ガイドが付いている。これで無料・・・)

 

 

ちなみに、フィリピンでは日本のように電話でタクシーを呼ぶことはできない(一部の日系タクシー会社は例外)。時間概念がめちゃくちゃで、事務員は半年後に首を切られる契約社員ばかりなので地図なんて読めない。

 

この配車サービスを人力でやるには

①オペレーターがお客さんの電話に素早くでる(スマホやおしゃべりで時間をつぶさない)。無線によるオペレーターの呼び出しに素早く運転手が反応する。

②オペレーターと運転手、そしてお客さんの3者が場所を口頭で共有できる。

③オペレーターの指示通りの時間を運転手が守る。

と、「オペレーター」「運転手」「客」の3者にある一定の水準が必要だ。

 

日本では当たり前に行われるのだが、基礎学力が極端に低く、能動的なサービスが存在しないフィリピンで上記の作業を行うのは奇跡に近い。

 

まず①と③である。タクシーよりもはるかに高学歴で高給取りのフィリピン航空でも、「乗客の呼びだしなんか待たせておけ」とのスチュワーデス同士で言い合っているらしい。

 

離陸が遅れて(毎日にように遅れる)乗客が機内で缶詰になっても、スチュワーデスは裏で乗客をほったらかして悠々と機内食を頬張るなんて当たり前。知り合いの元同航空のスチュワーデスは「フィリピン航空なんか自腹では絶対に乗らない」と話していた。

 

フィリピンではかように顧客サービスの概念が低い。

 

そして、②をするためには全員が地理を把握しているか、地図を読めないといけない。これもフィリピン人には神業に近い。

 

つまり電話によるリアルタイムな配車はフィリピンでは不可能だったのだ。これをなし得るのは知り合いの日系タクシー会社など数社しかフィリピンには存在していない。

 

だが、テクノロジーの進化はすごい。スマホの地図でお互いの場所を把握できるならサルで

 

もできる。また、待たされる側からするとこちらに向かってくるのが見えるのは精神衛生上非常に良い。

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(こちらに来るのがわかるから、安心。運転手は悪人顔でしたがいいやつでした)

 

集合場所を事前にネットで調べるなんて段取りの概念が存在しないフィリピン人との待ち合わせは至難の技だ。足りない知能をテクノロジーが補う形である。

 

 

余談だが、フィリピン人に道を聞くとほぼ間違いなく適当に教える。某テレビ局のフィリピン人カメラマンが入っていたが、路上にたむろしている連中に道を聞くとその場にいた数人がてんでバラバラな方向を指さすらしい(笑)。

 

よって待ち合わせには下のようなやりとりを繰り返す羽目になる。

 

 

フィリピン人「どこですか?」

私「●●だよ」

フィリピン人「わかりました」

 

数分後

 

フィリピン人「どこですか、わかりません」

私「●●いうたやろ!」

 

数分後

 

フィリピン人「今▲▲にいます」

「ちがう!●●やって!」

 

というやりとりを延々繰り返すハメになる。

 

続く

次期大統領はダーティーハリー?

フィリピンの将来を担う今年5月の大統領選挙が近づいている。事前の当選予想を民間の調査会社が報じられているが、実はフィリピン人は信じていない。すべてが買収されているので、調査会社によって真逆の結果が出ることなど珍しくないからだ。

 
そもそも、彼の国の政治家は頭の中身はさておき、異様なほどの大金持ちばかり。州知事が約ン千万円で有名女優を一晩買ったとか、財宝探し目的でプライベート潜水艦(!)を買ったなんて話がゴロゴロ転がっている国である。
 
候補者の大部分が今話題のトランプさんやブッシュ一族みたいな輩と言ったら分かりやすい。基本、政治は世襲制でやるものと相場が決まっている。
 
だから選挙は札束が飛び交う一大イベントだ。民間の調査会社買収なんてのはおとなしい方で、投票用紙の入った箱を偽物とすり替えたりする(偽の投票用紙を大量に作るのも大変だろうに)。
 
私兵団を抱える政治家も多いため、対立候補の射殺事件も珍しいことではない。2009年には、対立候補やジャーナリスト58人を私兵団に命じて殺害し、死体を埋めてしまった現職知事が逮捕されるなんて事件も起きているくらいだ。下手なヤクザの抗争よりも過激だ。
 

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銃撃戦の流れ弾が当たっては大変だから、フィリピンの日本大使館は在留日本人に投票日が近づくと外出を控えるように警告を出すのが通例となっている。
 
そんな旧態以前の大統領選挙で、今回の台風の目となる候補者は、フィリピン第3の都市ダバオ市長を務めるドゥテルテ氏だろう。
 

 

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このブログでも何度か触れているが、ドゥテルテ氏は手下の殺し屋を使い、犯罪者を処刑しまくり、決して治安の良くなかったダバオ市を東南アジアで最も安全な街改善した実践が高く評価されている。
 
このドゥテルテ氏は前述の統計によると決して上位にはいない。報道によると5人の大統領候補全てが20パーセント台の支持率でほぼ横並びとされている。
 
しかし、私が話すフィリピン実習生のほとんどはドゥテルテ支持。市井の人と話しても80%以上がドゥテルテ一択といってよい、他の候補者を支持するのは、一部のインテリかお金持ちだけのようだ。
 
ドゥテルテ陣営は戦略も優れている。当初から注目を集めるも大統領選出馬を否定し続け、国民をやきもきさせた挙句、全ての候補者が届け出を終えた後に「国民の声に応える」と滑り込みで出馬を宣言。大阪の橋下元市長と同様の手法だ。
 
また、メディア戦術も長けている。質素な自宅を公開したり、選挙活動中の服装は安物のチノパンに半袖シャツと庶民派であることを強調し続けている。対立候補が財閥の御曹司や有名俳優の娘といった雲上人ばかりなので、効果的な戦略だ。
 

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「ノーブランドの靴だ!靴下も履いてねえぞ」by ドゥテルテ
 
愛人3人の存在を公表しつつも「高級マンションには住まわせていない。家賃は1,500ペソ(3,000円)の安アパートだ」と話すなど、女好きなフィリピン男ならニヤリと笑うコメントも忘れない。日本の学級委員会化したメディアなら目を剥くだろうが(笑)!
 

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フェイスブックを始めとするネット上の露出数も際立っている。ネットメディアRapperによると
How to win Cebu: Bisaya kinship, social networks in Duterte campaign)、同陣営のセブ地区担当者は「他の候補者に比べて予算はない」としながらも、ネットの力を有効に利用していると語っている。おそらくオバマ大統領が使った手法を参考にする優秀な選挙対策チームがいるのではないか。
 
先日のブログでも書いたが、ダバオ市のドゥテルテ人気は凄まじいし、ダバオの治安の良さも驚くばかり。一国を運営できる器か否かは未知数と言えるが、このままいけば彼の当選はあり得るのではないだろうか?注目していきたい。
 
 
 

ダバオ再訪

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10年ぶりのダバオ。出張ではなく、観光で訪れるのは初めてだ。フィリピン第三の都市、ダバオは人口140万人。南部ミンダナオ島の中心となる都市だ。
 
感想を一言で言えば「10〜20年前のマニラやセブ」。だが、当時のマニラと違い、バブル状態前夜という経済の息吹も見える街だ。
 
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犯罪者を手下の処刑団に「掃除」させることで有名なドゥテルテ市長の人気は絶大で、「フィリピンで一番安全な街」と言われることを市民は誇りに思っているようだ。
 
以下に気がついたことを羅列してみる。
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・路上のゴミが少ない。
ポイ捨てやくわえタバコは禁止されているらしく。見事にゴミがない。
ダバオではポイ捨ても命がけになるのだろうか?
 
・カフェにアイスコーヒーがない。
冷たいコーヒーを飲む習慣は元々フィリピンにはない。スタバが少ないので、まだ馴染みが薄いからか?
 
・渋滞が少ない。
MRT(電車)やタクシーですら乗れない地獄の渋滞都市マニラから来たら天国だ。まあ、これはしばらく経てば悪化するのは確実だろう。
 
・タクシーがまとも
小銭までシッカリと返すし、メーターもきちんとおろす。携帯をタクシー内に忘れたら、ちゃんと返しに来てくれた!(まあ、ノキアのボロ携帯だったからだと思うが)
 
・治安が良い
市民は皆、この点を誇りに思っている。つまりドゥテルテ市長の人気は絶大。
シンガポールしかり、タイしかり、アジアでは欧米型民主主義よりも、モラルある独裁の方が上手く行ってる気がする。
まあ、一つ間違えばエライことになるから紙一重ではある。
 
しかし、市内は午前2時でも若い女性がうろついているし、路面店のレストランがはやっている。
 
これはマニラでは有り得ない光景だ。
 
以上な渋滞と治安の問題で、小売りや飲食はモール内での出店が商売には必須になってしまっているからだ。
 
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・背の高い建物が少ないので、空が広い。
建設中のコンドミニアムがチラホラあるが、まだまだこれからといったところ。
 
ただ、ワンベットルームで900万円、3ベットルームで2,500万円と日本と変わらない値段。購入するのは投資目的のアメリカや韓国人が多いらしい。
これはセブと同じだ。
 
・「あ、外人だ!」という目で見られる。
年間100万人に上る韓国人観光客が練り歩いくマニラやセブと違い、ガイジンは珍しいのだろう。
これも懐かしい現象だ。
 
ただ、高級取りのコールセンター業の誘致が進んでいる。こののんびりとした空気もいずれ失われるのだろうと考えると少し寂しい気がする。

フィリピンはなぜ高い?

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外国人技能実習制度においては、監理費を派遣組合と母国(外国)送り出し機関に払うことになっている。通訳やビザの更新、企業への給与の適切な支払いの指導、実習生の世話などにかかる費用である。

費用は組合により、月1万円〜6万円/人とさまざま。ちなみにウチは人数により違うが4万前後だ。

見積もりを出すと「高い!」と言われることがある。

中国人やベトナムはフィリピンより毎月の監理費がだいたい1、2万円は安い。

理由はズバリ、実習生からの賄賂の有無が管理費に反映されるからだ。

通常実習生派遣組合は実習生の母国語通訳を用意することが義務付けられている。

しかし、国際化により国内でまともな通訳は取り合いだ。コストは年々上昇しているから、適当な組合は自前で雇えない。(そもそも組合はいかがわしいおっさんが経営しているところに多い)

よって、送り出し機関から、通訳を派遣してもらうケースが増えている。送り出し機関が母国にいる通訳を組合に派遣する形になる。

つまり組合は通訳を借りているだけだ。これなら、実習生の監理は送り出し機関に丸投げできる。

問題はその費用。あるベトナムの送り出し機関は「10人実習生を入れてくれたら専属通訳を配置します」と受け入れ組合に提案するらしい。

この場合は送り出し機関には組合が一人当たり毎月5,000円の送り出し機関管理費を収めることが条件。しかし、

5,000円✖️10人=毎月50,000円

どうやってこの費用で専属の通訳のコストまかなうのか?答えは簡単。賄賂を実習生から巻き上げるのだ。

ベトナムや中国の選抜時に100万円くらい賄賂を取ると以前書いた。これなら十分まかなえる(ちなみに地域差があり、ホーチミンなら40万円くらい)。管理費が安い秘密はここにある。


だが、問題はこの賄賂。配属先で残業が少ない場合は支払った賄賂のモトが取れない。

これが中国やベトナムの失踪に繋がっている。また、中国人の自動車部品窃盗、ベトナムの組織的な万引きといった副業を誘発しているのだ。

監理費が安いというのも良し悪しである。