フィリピン実習生派遣とアレコレ

フィリピン技能実習生派遣にまつわる雑感です。外国人労働者との関わり、アジアビジネスについても記します。

フィリピンはなんでそんなに治安が悪いのか(その2)

ぐーたらな警察が奇跡的に逮捕しても、結局犯人が釈放されてしまうというフィリピンの司法システムの問題を前回書いた。

だが、当然これに疑問を持つ人も出てくる。

フィリピン第3の都市ダバオ。ここの元市長で現副市長であるロドリゴ・ドゥテルテ氏は来年の大統領選の候補者として名前も上がる有名人で、国民の人気も高い。

 

理由は市長時代、ダバオ市を東南アジアで最も治安の良い都市にして見せたからだ。事実ダバオはどのフィリピン人に聞いても治安が良い。

 

しかし、その手口がまた「オンリー イン ザ フィリピン」。彼は市長時代「ダバオ死の部隊(Davao Death Squad)」という自警団を組織し、麻薬販売や窃盗などの犯罪者を次々に射殺していったのだ。よって彼のあだ名は通称ダーティ・ハリー。

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同部隊が配下にあることを本人は公式には認めていないが、「犯罪で善良なる市民を食い物にするなら暗殺対象にする」と語るなど公然の秘密となっている。

しかし、市民はこの行為に拍手喝采した。なにせ、同市のあるミンダナオ島イスラム教徒が多く、独立を目指すイスラム系武装組織との紛争が400年前のスペイン時代から続くエリア。近年はアルカイダの指示を受けたテロ組織も暗躍しており、治安が良いエリアとはとても言えなかったのだ。

私のダバオの知人も近所の人と土地の権利でもめた際、「銃を持った殺し屋に乗り込まれた」と話していた。なにせ宗教紛争で人を実際に殺した経験のある元軍人やゲリラがごろごろいる。

こんな土地で前回書いたようなダラダラとした裁判なんかやってられない。超法規的措置も大歓迎となるのはうなづける。

ドゥテルテ氏自身、元検事なので、有罪間違いない容疑者が目の前で野に放たれるのを許せなかったのだろう。気持ちはよく分かる。

 

この手の「掃除」はマニラでも珍しい話ではない、司法関係者を取材しているとちらほら聞いた。

 

去年、マニラの高級住宅街でスリの現行犯が警察拘束後に殺される事件が起きた。

11月10日のマニラ新聞から | まにら新聞ウェブ The Daily Manila Shimbun Web

記事を読んだだけではよく分からない事件だろう。「なぜ警察に拘束された犯人が何者かに射殺されるのか??」。日本なら大事件だ。

だが、前回のブログ記事にあるように、捕まっても犯人は釈放されるのがほとんどという背景を理解すれば背後がみえてくる。

 

このエリアに住んでいる人は政治家や財閥の関係者が多い。それこそ億単位の資産を持ち、法律なんか捻じ曲げることのできる階層の人々。スリはそういう人に手を出したため、消されたのだ。

 

被害者が大富豪の場合、ケチなスリのために何年もかかる裁判にいちいち出廷してられない。かといって、出廷を拒否すれば無罪放免だ。「なら、ここで『掃除』してしまえ」となる。

 

そういえば元国家警察長官のパンフィロ・ラクソン元上院議員も、過去、「取り調べ中、わざと犯人を警察署の入り口に連れて行き、『走れ!!』と叫ぶんだ」と語っていたらしい。後ろから撃ち、「逃げたから射殺した」というためだ。

 

彼らは純然たる正義感からやっている側面もある。しかし、犯罪の背景が貧困である以上、殺されるのはいつも貧困層だ。こういう記事を読むたびに「人の命の価値は平等ではない」と思い知らされ、すっきりしない気持ちになる。