「外人お断り」の不動産(実習生寮についてその1)
外国人を雇う際、トラブルになるのが社員寮、つまり住居だ。外国人実習生制度は、国の規定により雇用主が住居を用意する義務がある。
だが今時社員寮なんか持ち合わせている会社は少数だ。99%の企業が民間のアパートを借りあげて実習生を住まわせることになるのだが、多くの家主は「外人」と言った瞬間拒否反応を起こす。
人権派の方々なら「差別だ!」と憤る所だが、まあ、外国人実習生の管理を7年やっていた経験から、私が家主なら外人は避ける(笑)。
なにせ彼らの母国での住居環境は、われわれから見たらなかなか過酷である。
15年前に私がフィリピンで住んでいた家は、マニラ郊外のスラム地域に毛の生えたようなエリアにあった。建物はブロックとトタン屋根で作られており、道路の向かいには昔、銃の密造工場があったといういささか剣呑な場所。
住んでいる時に子犬をもらい受けたのだが、「家の前につなぐとさらわれる(フィリピン人は犬を食う)」と言われて陽の当たらない裏庭につないでいたらすぐに死んでしまった。今考えても不憫である。
当時この家には水道がなく、毎朝近くの水汲み場まで行き、ポリタンク汲むのが日課。おかげで、その家の住人の男女はみな握力は異常に強かった。
その後、仕事を始めてマニラのビジネス街にほど近い下町のアパートに引っ越した。
確か家賃は当時でフィリピン人の月収に相当する1万円前後。建物はタイルやコンクリートで作られていた新築物件で水道とエアコンがあった。
しかし、豪雨の度に前の道路が太ももの高さまで冠水するし、時折上の階の住人が深夜に大音量でダンスミュージックを鳴らすのにも閉口した。
ちなみにフィリピン人はしょっちゅうホームパーティーをするのだが、歌って踊るのが大好きなのでやたらうるさい。カラオケマシンを自室に置いて夜中まで延々と歌ったりする。
この場合、迷惑した近所の人はどうするかというと、なんと、大音量で音楽を流して対抗するのだ!この対抗策をとればそのエリアが無限にうるさくなっていくと思うのだが、そういうことは気にしない(笑)。
こういうことを日本ですれば、刃傷沙汰になってもおかしくないが、あちらでも時々銃撃事件になっている。
そんな連中が、木と紙でできた華奢な家に住み、日中は物音一つしない日本の住宅街に住めば揉めないわけがない。
(続く)