フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

外人を使うのが下手くそな日本人

当社の取引先であるフィリピンの送り出し機関に、日本語ペラペラのフィリピン人通訳マイケルくん(仮称)がいる。

聞けば元実習生で、日本の鉄工所で働きながら日本語検定2級を取ったという秀才。ちなみに英語ができて勉強の嫌いなフィリピン人実習生が2級をとる確率は中国やベトナムよりも圧倒的に低い。1%あるかないかだろう。

 

そのマイケルくんは帰国後、マニラ郊外の日系工場に就職した。立ち上げメンバーとして活躍し、副工場長的な立場に昇格。給料は月5万ペソ(約15万円)となかなかの待遇となった。

 

日本語もできない高卒の人材が普通に国内で就職すれば、どう頑張っても給料は最低賃金(約3万円)どまりだったはず。それが見事、貧困層から中間層への仲間入りである。日本政府が提唱する技能実習生制度のお題目「発展途上国の青壮年への貢献」どおりのサクセスストーリーだ。

 

しかし、その後が悪い。

 

経費削減なのか、この日系企業ではそれまで工場長を務めていた日本人社員が帰国することになった。マイケルくんは工場長に昇格することになったのだが、そこで、本社から言われたのは

 

「給料は据え置きね」・・・・(テーン)。

 

負担は倍増するのに、給与は変わらない。納得いかないマイケルくんは即刻退社し、今は日本へ技術者ビザで渡航することや起業を夢見ながら、送り出し機関で日本語教師兼通訳として働いているという。

 

このケース、雇用主側の言い分もわからないでもない。マニラ郊外では一般労働者の月給は今でも3万円に届かない。大卒の幹部職でもせいぜい10万円未満だろう。15万円以上あげては「バランスに事欠く」というわけだ。

 

だが、3年も汗にまみれて現場で修行し、日本語も英語も理解できる20代の人材なんて日本でもそうそういない。私から見たら15万円でも安いぐらいだ。

 

こういう傾向は日系企業では昔から見受けられる。関西の有名私大を卒業したフィリピン人の知人がいるが、今から10年以上前、彼女が帰国後にビジネスセンターであるマカティの日系企業に就職したところ、初任給は最低賃金だった(12,000円。当時)。

さすがにこれはひどく、半年後には大手電機メーカーに3倍以上の給与で引き抜かれたが、ネイティブ並みの日本語を話し、日本の大学で4年間学んだ人材を最賃で雇おうとする神経を理解できなかった。

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正直、現地人材の生かし方は植民地経営に慣れた外資系がうまい。米国企業のコールセンターで働くフィリピン人男性の話を聞いたのだが、彼は昇格で月給が一気に1万ペソ(約3万円)上がったことがあるという。4万ペソ(12万円)の給与が一気に5万(15万円)ペソになるのだ。

 

「バランス」を考える日系企業ではなかなかない昇給だ。だが、ベトナムでも日系企業の賃金の安さは有名になっている。個人的には日本の文化習慣を理解した外国人人材は下手な日本人よりも優秀なので、むしろ日本人以上の厚遇を持って迎えないと厳しいものがあると思う。

 

もちろん、「優秀に見える」だけの人材が多いのだけれども。