フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

お役人の仕事

f:id:pinoyintern:20150926130134j:image

民主党事業仕分け」と聞くと「そんなものも昔あったなあ」というのが一般市民の認識だろう。だが、このあおりで実習生制度も迷惑がかかった事実は、この業界ではよく知られている。

 
ジ◯コという団体がある。簡単にいうと実習生事業の監督を法務省などから委託されて行う認可法人だ。
 
企業は5万円から30万円(会社規模による)の年会費をここに払うことで「実習生を受け入れをさせていただくこと」が可能となる。一応義務ではないことになっているが、払わないと書類申請などで何かと不便を被る仕組みなので大方が加入している。
 
全ての受け入れ企業が口を揃えて言うはずだが、一言で言うと大金を受け取るただの天下り団体で何もしていない。おかげで例の事業仕分けにひっかかりかけたことがある。
 
危機感を覚えたジコがとった対策は・・。
 
ずばり書類を増やす!
 
例えば、実習生制度には実習生日誌というのがある。タテマエ上実習生は労働者ではなく、「優れた日本の技能を学びに来た」ことになっている。

だからその習得状況を記録するため日誌をつけることになっていたのだが、まあ正直、昔はまともにつけているところはほぼなかった。
 
だが、事業仕分け以後、この記録が義務となり、コが行う実態調査と呼ばれる定期検査で日誌をつけていないことは入管に報告されることになった。要は実習生受け入れを停止の罰が来かねない違反行為となったのだ。
 
ギリギリのコストカットで勝負している中小零細の製造業にとって、わざわざ無意味な日誌などつける時間はない。第一ベルトコンベアの流れ作業で何を記録しろというのか!
 
ジ◯コ様だって外国人実習生が、事実上、3年間真面目に働く期間労働者である実態はよーくわかっている。
 
だが、それを認めてしまうと監督機関など不要だから彼らは解体されてしまう。次回事業仕分け的なものにひっかかっても「我々はちゃんと仕事してますよ。ほら!」と見せることのできる証拠を用意したいのだ。
 
無駄な書類を作らされる受け入れ企業はいい迷惑だが、いくら無駄でも役所の社会では書類が証拠。意味があるかどうかは関係ない。自分が仕事をしている証拠を作ること=「仕事」なのである。まるで禅問答。
 
ちなみに、今年の国会でこの実習期間は現行の3年から5年に伸ばされる予定だ。要は3年の期間労働者から5年になるのだ。
 
 だが、この記事で注目すべきは以下の部分。
 
技能実習制度をめぐっては、(中略)問題が指摘されている。このため、制度全体を監視する認可法人『外国人技能実習機構』を新設する。(中略)不正行為がないかチェックする」
 
これを見た業界関係者は皆思ったはずだ。「なぜわざわざ新たな組織を新設する必要がある!?」
 
そもそも、これまで不正監視はジ◯コがやっていたはず、パフォーマンスが不十分なら別組織を新設する前にここを解体するのが筋だ。

認可法人は新たな天下り先となるだけ。役員になる爺さん達にはたんまり金が入ることだろう。完全に老害だ。
 
一度作った利権は手放さない。国益よりも省益(要は自分の利益)。無駄を指摘されたらもっともらしく見える書類を作る。これが役所の論理ということをこの業界に来て実感した次第だ。
 
外国人実習生といえば「人権侵害」「人口減少」のテーマでしか切らないメディアも問題だ。こういう利権もしっかり報じ、権力の監視に努めてほしものである。