フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

教育、教育、教育!(その2)

さて、前回の続き。フィリピンの教育問題については言語のハンデが致命的であると述べた。

 このブログで盛んにフィリピン人のアホさ加減を嘆いているが、言語以外の原因に基礎教育期間の短さも挙げられる。

ベトナムや日本などほとんどの国では小学校6年−中学校3年−高校3年(計12年)だが、フィリピンだけ小学校6年−ハイスクール4年の10年と短い。だから高卒で16歳、大卒で20歳。

 

東南アジア諸国連合ASEAN)で一番基礎教育期間が短い国なのだ。おかげで理数系能力は他国に比べ、大きく見劣りする。前回書いた通り、本も読まないから知識も日本の中学生みたいな水準である。

基礎教育を6-4制からK-6-4-2制へ - ジェトロ・アジア経済研究所

 

ちなみにシンガポールの故リー・クアン・ユー元首相は、著書の中で数学のテストをマレー系、中華系、インド系の民族別で実施したところ、マレー系が一番できなかったと語っている。そもそも民族的にマレー系は数学的な能力が劣るのではないかとも私は感じている。

 

しかし、現職のアキノ大統領は中国人の血を引くだけあってさすが賢い。この点をしっかりと理解し、基礎教育を国際水準と並ぶ6-4-2制(計12年)に延長することを決断した。この新教育制度は2016年から施行される予定だという。

 

 

イギリスのブレア元首相は、「我が国に必要なものは3つある。教育、教育、教育だ」と話したらしいが、海外から見ると日本の発展を支えてきたのは教育だと痛感する。

列には割り込まない、ゴミはゴミ箱に…と言ったモラルの高さは教育レベルの高さと関連している。大多数を占める平均的日本人の誠実さや意識の高さは今も世界一だ(エリートは国際的に今ひとつ見劣りするが…)。

海外では能力以前に、良識と常識ある人材を探すのが大切なのだ。実際、私はフィリピンの工場マネージャー時代に倉庫からフォークリフトを盗まれたことがある。

また、歴代の経理社員はかたっぱしから横領でクビにされていた(笑)。姉妹で同じ会社で働いているのに、経理部で働く姉が会社のカネに手をつけたケースもあった。もちろん、姉妹でクビだ。ばれたら、関係ない妹もとばっちりを食らうなんて考えない。サルなみの知能である。


話を戻す。ただ、この新教育制度には反対意見も多い。特に深刻なのは予算不足だ。

慢性的な財政赤字のフィリピンでは、最近まで公立学校の先生は最低賃金で働かされていた。現在は公務員の給与は5〜6万円(最低賃金は3万円程度)とだいぶ上がったが、教室や教科書不足は依然深刻な問題。

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↑教室不足の図。

 

とはいえ、断固たる決意で進めるこの教育改革は素晴らしい。フィリピンの政治家は怠け者で強欲なロクデナシばかりだが、こういうわりにまともな人が大統領になる奇跡が起こるのが、民主主義の良いところだろう。

私はフィリピンのことをよくけなしているが、薄給にもかかわらずあの国の公立学校の教師は聡明で、誇り高い。また、公立ハイスクールのトップクラスの生徒は貧しくとも驚くほど勤勉だ。

どうしようもない連中が大半のこの国で、こういう人を見ると、泥の池で蓮の花を見た気分になったものだ。

中国人やベトナム人に比べ、犯罪傾向が少なく大人しい国民性のフィリピン。インドネシアみたいなややこしい宗教もない。理数系能力の改善が見られると劇的に伸びると私は思う。

この教育改革の結果がでるのは10年後だろうが、きっと優秀な人材が多く育ってくることだろう。フィリピン人=安い労働者という時代はもうすぐ終わるかもしれない。

 

しかし、私はそれでもよいと思うのである。戦前はそもそも、アメリカ領としてアジアでもっとも発展していた国である、日本人が出稼ぎに来ていたのはわずか70年前のこと。

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↑1950年代のマニラ。アメリカの香りが残り、グアムかハワイみたいなイメージか?


将来はより健全な関係を築けることを私は望んでやまない。