フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

何かと話題な新大統領について(その1)

10月7日に就任後100日を迎えたドゥテルテ新大統領だが、極端な発言がメディアを賑わわせている。

 

・アメリカ政府に対して「売春婦の息子(putang ina mo)」

国連潘基文(パン・ギムン)事務総長に対し「潘基・・あの悪魔(Devil)の名前なんだ?うん、潘基文だ」

・「ミスターオバマ、地獄へ行ってくれ(You can go to hell)」

・「欧米の援助はフィリピンに必要ない」

米国が武器を売りたくないのであれば、ロシアや中国に頼む。

 

迷言、妄言はフィリピンの政治家にはつきものだが、外交上でこんな発言を繰り返す大統領はフィリピン史上初だろう。

 

自身の過激な治安維持政策への批判に対する反発とはいえ、常軌を逸している発言だ。

 

アメリカはフィリピンの旧宗主国。太平洋戦争後に米国議会の承認を経て独立させてもらった国だ。最高学府フィリピン大学は、植民地を円滑に運営するためのエリート要請目的で作られ、今も政治家を含む富豪にとってアメリカ留学は必須。

 

国民にアメリカ移民を誘うと冗談抜きで90%以上の人は即移住すると思う。フィリピンは空っぽになる(笑)。

 

たまにメディアは日本を「アメリカの植民地のようだ」と揶揄しているが、フィリピンはリアル植民地状態である。

 

マニラの盛り場は三流白人の天国だ。母国で見向きもされない貧困白人のハゲデブおやじがフィリピン人の若い女と戯れる姿は日常風景である(ちなみに白人が選ぶ女性は我々と違うので特に羨ましくはない)。

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日本もあからさまにイケてない三流白人にしなだれ掛かる女は見受けられるが、あれよりもはるかに酷い、白人コンプレックス丸出しの日本人女性すら敬遠するジジイも、あちらでは「天下のアメリカン」で通る。

 

だから市政のフィリピン人にアメリカの悪口を言うとリアクションに困った顔をする。

 

なにせ国民的スポーツはバスケットボールで、憧れはNBAプレーヤー。テレビで流れる人気の歴史ドラマというと、残虐な旧日本軍に対しアメリカの支援を受けて戦ったという話が定番だった(昨今は減ったが)。我々日本人からしたら、アメリカからフィリピンを解放させるお題目もあったはずだが、皮肉なもんである。

 

とまあ、上から下まで「アメリカのポチ」であるフィリピンで、反米意識なんてごくごく一部の左寄りのインテリエリートしか持ち合わせて居ない。学生運動に燃える大学生か左派系NGO、学者ぐらいのものである。

 

だがそんな人物が大統領になってしまったのである。突然変異というか奇跡というか、まさに史上初のできごとだ。

 

そもそもドゥテルテ氏はアメリカ留学の経験もなく、卒業したのもライシウムという庶民的な大学だ。左派系学生運動に参加する中で、大学教授だったホセ・マリア・シソンというフィリピン共産党の創始者に師事した経験もある。

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↑現在はオランダ亡命中のシソン氏とスカイプ会談。今は互いを友人と呼び合う仲。

 

シソン氏率いる共産党は共産ゲリラ、フィリピン新人民軍(NPA)を傘下に持つ。NPAは創設以来武力革命を掲げて警察官や軍人を相手に血みどろの闘争を繰り返して来た。日本の昔の過激派以上の武闘派である。ちなみにNPAのゲリラが警察に投降すると秘密裏に即虐殺されるらしいから、どれだけ壮絶な関係なのか想像できる。

 

ドゥテルテ氏は自身をトランプになぞらえる報道について、「私の信条は(社会主義者の大統領候補者)サンダース氏に近い」と口にしている。

 

政治家の息子でありながら庶民派を謳い、不平等な社会への不満を示す斬新なイメージ戦略により大統領に就任した。そんな彼の姿には国が変わるかもしれないと期待した国民も多かった。

 

 

だが、それだけではなかった。私の想像以上に過激な反米主義者のようである。

 

彼は南部ミンダナオ島で続くイスラム教徒との紛争の遠因はアメリカ植民地時代にあると言及し、100年以上前に起きた米軍によるイスラム教徒虐殺事件の写真を手に国際会議で批判する。そもそも大多数の庶民はこんな事件を知らないし、インテリですら「何を今更」と言ったレベルの話なのに。

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↑比米戦争時に起きた米軍による虐殺事件の写真を示す。

 

 

フィリピンが中国寄りになるのは日本を含むアジアの国々にとっても非常に危険だ。そもそもズル賢い中国と伍してやりあえる軍事、経済、外交力なんて逆さにしてもフィリピンにはない。

 

既に巨額の金がフィリピンの政治家に中国共産党から流れ込んでいるはずなので、取り込まれるのは時間の問題だろう。

 

このまま彼が突き進めば

・CIAによるネガティブキャンペーンを使った追い落とし。もしくは暗殺(例:田中角栄かチリのアジェンデ)

ちなみにドゥテルテ氏は実際、「CIAが私を殺そうとしている」と発言している。

・アフリカ諸国のように中国による事実上の植民地化(が始まる)。

という方向に行きかねない。

 

当初から彼は富裕層やインテリ層からは懐疑的な目で見られていたが、最近は私の周辺にいる会社経営者からも厳しい声が増えて来た。「あまりにも過激すぎる」というわけだ。

 

しかし、庶民の人気は依然として高いようだ。

(続く)