フィリピン実習生派遣とアレコレ

フィリピン技能実習生派遣にまつわる雑感です。外国人労働者との関わり、アジアビジネスについても記します。

何かと話題の新大統領について(その2”訂正”)

10月25日から27日にドゥテルテ大統領が来日したのだが、その時の対応に驚かされた。

また、先日フィリピンに滞在したのだが、政府官僚からタクシーの運ちゃんまで様々な人々にヒアリングを行った結果、その1で書かれた大統領に対する私の理解を大幅に訂正せざるを得ないと思い至ったのでここで書かせていただきたい。

 

 

今回の来日で何よりも驚いたのが彼の「神対応」ぶりである。

 

庶民に人気があるだけあって羽田空港には出待ちの在日フィリピン人が大量に待っていた。在日のフィリピン人はほとんどが元フィリピンパブのおばちゃんなので(近年フィリピンパブのビザは事実上停止されているので若い女の子は極めて少なくなった)、貧困層出身がほとんどだ。

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フィリピンの政治家と言えば基本アメリカ留学どころかアメリカに家があるような、ど金持ちばかり。豪邸で何人もの召使にかしづかれて育ち、ボディガードと称する私兵団を持っているような輩はごまんといる。アラブの大富豪と日本のヤクザを合わせたような生き物だといえばわかりやすいか。

 

何が言いたいかというと、これまでの大統領は日本に出稼ぎに来ている貧困層のおばちゃん達から見たら文字通り、生きる世界が違うのだ。だからおばちゃんが出待ちするなんて聞いたことがない。

 

だが、さらにドゥテルテは出待ちを見るなり歩み寄り、握手に応じたのだ。もともと彼は庶民派をうたって大統領になったのだがそれをまさに体現する行為だ。おばちゃんたちは大興奮だが、警察庁のボディガードはたまったものではなかったろう(笑)。

 

このように空気を読むというか、相手のして欲しいことを的確に行う神対応はこの訪日で随所に見れた。

 

岸田外相との会食で和食の感想を聞かれれれば、「(美味しいから)来月も日本に呼んで」。来日直前の日本メディアとのインタビューでは「今回の来日では天皇陛下にお会いしたいです。実際にお会いすると緊張して何も話せないかも」なんて可愛らしいことを言う。

www.fnn-news.com

別に私は皇族の支持者ではないが、外国人に天皇をバカにされていい気分になる日本人なんていない。太平洋戦争では戦争被害者(死者は100万人とも言われている)のフィリピンだが、天皇に謝罪を求めた韓国の李明博大統領とは真逆の対応である。

 

しかし、日本政府も相当彼にはナーバスになっていただろう。なにせ、3000人とも言われる麻薬密売人を非合法に射殺するわ、アメリカ大統領に「地獄へ行け」と吐きつつ、中国寄りの言動を繰り返すなど、強面のやばい人物という印象を持っていたにちがいない。

 

無頼を気取るのでドレスコードを無視するなんて当たり前、中国の習近平国家主席の前でチューインガムを噛みながら応対していたと言われている(本人は否定)。天皇陛下に面会するときもガムを噛むのではないかと日本政府が心配していたぐらいだ。

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だが、実際は違った。

 

毒舌どころか、「最大の援助国は日本」などと繰り返し親日発言に終始したのだ。

それだけでなく、「中国とは経済援助の話しかしていない(軍事的には距離を置く)」と中国寄りを懸念する日本を安心させ、海上保安庁を訪問時は「日本と共同訓練は問題ない」とまで発言している。

 

挙げ句の果てに首相には「隣の国はわあわあ喚いたりするからね」なんてこちらがニヤリとする発言まで口にした。

www.houdoukyoku.jp

もともと彼は演説力や会話力に長けている。日本の大学院卒のフィリピン人男性(39)は「オバマと並ぶ上手さではないか」と表現する。ただ、そのスタイルはフィリピン式、正確さよりも面白さ、聴衆を喜ばせることを重視するし、放送禁止用語ジョークもバンバン使う。

 

それらの演説は全てアドリブで、例えていうなら、松本人志とか北野武みたいな一流の芸人の話し方に近いのではないかと思う。

 

今回も在日フィリピン人を前にしたアドリブスピーチで、「フィリピン国民の尊厳を取り戻そう」「フィリピンはアメリカの子犬ではない」とアジった。母国を離れた出稼ぎ労働者の琴線に触れるスピーチだ。

 

面白いのは何度も反米演説を繰り返すことによって、国民に若干の変化が現れて来たことだ。彼が就任するまで反米思想なんて持ち合わせていなかった庶民の中に、ドゥテルテと同じコメントをするものが出て来ているのだ。ヒトラーが言ったように嘘も1000回繰り返せば事実になる。

 

政権後100日が過ぎた時点での支持率調査では大統領の支持率は86%で過去2番目に高い記録だったという。

 

しかし、私の見るところエリート官僚や大金持ちの会社経営者の中には支持者は少ない。フィリピンの早稲田大学にあたるデラサール大学は金持ちの子弟が通う学校だが、ここで今年の大統領選挙時に調査をしたところ、ドゥテルテ支持者は10%以下だったらしい。労働雇用省の高級官僚の女性(54)は「うちの省庁でドゥテルテ支持者は5割にすぎない」と話していた。

 

反ドゥテルテの理由は①人権無視の治安改善活動はやりすぎ②親中反米は危険ーーといった2点だろう。

 

治安改善活動については後述するが、私も②については彼の外交政策は危なっかしいと考えている。

 

彼は天性の才能があるし強烈なリーダーシップがあるが、他の政治家は交渉能力でもしたたかさでも中国人にはとてもかなわない。

 

ドゥテルテは親中アピールで中国から1兆4000億円相当の援助を引っ張ったとされているが、中国は無条件で援助をする国ではない。

 

例えばこの援助の中にはイスラム教徒との紛争が続くミンダナオ島地域における鉄道建設など援助事業が含まれている。しかし同島は金や錫といった地下資源の豊かさで有名。援助と引き換えに資源の独占支配を狙っているのではないか?この援助を国民のために使わず地方の権力者にバラマキ、経済的にフィリピンを骨抜きにし、占領する方策を持っていると思われる。

 

ドゥテルテ大統領をはじめ、フィリピンのエリートは日本に比べて中国に対する認識が甘いと思われる。ドゥテルテはともかく他の権力者が中国人に取り込まれない保証はどこにもないのだ。