フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

何かと話題の新大統領について(その3)

先日の調査によるとドゥテルテ大統領の支持を表明した国民は86%。歴代大統領でも2位の支持率らしい。誤解がだいぶ晴れたとはいえ、なぜ国民に人気が出るのか日本人にとっては理解に苦しむところだろう。これを分析してみたい。

 

私の現時点での評価でいえば

治安☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

経済☆☆☆

汚職☆☆☆☆

外交★★★★★★★★★★(マイナス)

 

といったところか。

治安面では3700人(また増えた)とも言われる麻薬密売人に対する非合法処刑がメディアからは批判的に取り上げられているが、一定の成果を上げているのも事実だ。実際、マニラの人に聞いてみると治安は改善されており、タクシーの運転手は警官からのたかりまで減ったと言っていた。

 

国民から一番評価されているのがこの点だ。これまでの大統領がなしえなかった治安面の改善は長年の国民の悲願でもある。

 

以前もここで触れているとおり、フィリピンでは

覚せい剤密売や誘拐といった凶悪犯罪は基本警察(と政治家)の仕事。

②銃は基本、誰でも所持できる。

③治安当局の捜査技術および司法制度が崩壊している。

 

という凄まじい状態だった。

 

誰もが知っているセブの高級リゾートオーナーのフィリピン人女性(38)は「フィリピン中部ビサヤ地方の最年少覚せい剤中毒者は8歳よ!!」と憤激していた。

 

もう少し実例をあげよう。フィリピンの覚せい剤中毒者は300万人とも言われる。私の知人のフィリピン人女性は貧しい家庭の出身にもかかわらず、日本の大学を奨学金で出たエリートだが、国にいる兄が元シャブ中(現在は更生した)、弟は現役でシャブ中だ。もう一つ言えば前述のリゾートオーナーの旦那も元シャブ中だったらしい(笑)。

 

日本のおじさんに馴染み深いフィリピンパブ。ここで働いているお姉ちゃんに聞いて見ると良い、兄弟や旦那にはかなりの確率でシャブ中がいる。過去やったことのある人物まで含めれば、日本の喫煙人口並みに覚せい剤経験者がいる国なのだ。だから日本に来る実習生の健康診断にドラッグテストが含まれている。おそらくこんな国はアジアでもフィリピンぐらいだろう。

 

②の銃も深刻な問題で、たとえば、車を運転している。つまり車を買える連中は、かなりの割合でダッシュボードに拳銃を突っ込んでいる。

 

だからマニラで車を運転してトラブルになっても決して喧嘩してはいけない。私自身、高速道路上でトラックの運転手が拳銃を窓から出して、運転トラブルでもめた隣の車のドライバーに見せて威嚇しているのを目の当たりにしたことがある。これはアジアの他の国ではなかなかみられない光景だ(笑)。

 

元私が面倒を見ていた実習生で満了帰国後に消費者金融業に就職し、銀行から帰宅途中、車ごと蜂の巣にされたものもいた。現金輸送中と思われたのだろう。良い奴だっただけに気の毒だった。

 

③警察の訓練レベルは異常に低い。これはこの動画を見てもらえばわかりやすい。

www.youtube.com

 

2010年に起きたバスジャック事件の動画だが、エリートであるSWATチームがはしごを忘れて突入に手間取り、乗客9人が巻き添えで死亡している。アメリカや日本特殊部隊みたいなきついフィジカルトレーニングをはしないので、みんな腹が出ている。動きもとろい。

 

 

フィリピンに日本のヤクザやアメリカのマフィアにあたるものは存在しない。警察がその代わりを担うからである。このバスジャック事件の犯人も犯罪を起こして懲戒解雇された元警官である。元警察が犯罪を犯して警察に殺されるのだから世話はない。

 

 

国民はこんな政府にうんざりしているが、誰も変えることができなかった。

 

だがドゥテルテは違った。麻薬密売に関わる政治家や警察官の相関図をメディアで公開。彼らの抹殺を公然と宣言し、実行しはじめたのだ。

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私見ながらこの非合法処刑はフィリピンに非常に向いていると思う。なにせフィリピン人は総合的に言って感情的でビビりが多い。さらに犯罪者に根性のある奴なんてあまりいないからこういう威嚇が一番効果あるのだ。

 

だが、前回エリートにドゥテルテ支持者が少ないと書いた理由は実はここにある。

 

フィリピンの金持ちは基本警備員が何人もいるコンドミニアムか、ビレッジと呼ばれる城壁で囲まれた高級住宅街に住んでいる。知人の会社社長の娘はジプニー(乗り合いバス)に乗ったことがないと話し、大学合格時に親から自家用車をプレゼントされていた。

 

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富裕層の住む住宅。このエリアはショットガンやライフルで武装した警備員と城壁のような壁に囲まれている。

 

こう言った階層の連中にとって買い物や遊びは同じく厳重警備されたショッピングモールか、高級リゾート。NHKで見るようなスラム街はどこか遠い国の話だと思っている。万が一こういう連中に犯罪者が手でも出そうものなら即消される。

→このように

pinoyintern.hatenablog.com

 

つまり金持ち連中には治安上の問題は昔から存在していないのだ。

 

だが、実習生を含め貧しい大多数の国民は常に治安の悪さに怯えている。せめて自分の子供が、妻が、身の安全を気にせず暮らしていけたら・・というのは庶民の切なる願い。

 

この願いに応えてくれる初めてのリーダー。それがドゥテルテ大統領なのだ。