フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

フィリピン人への指導方法

 

先日、取引先の工場に伺った。「問題ありませんかー」と聞いて回るのは通訳の挨拶みたいなもんである。ここは射出成型品の製造と検査でフィリピン人女性を10人ほど入れてくれている。

 

しかし、この日は現場の班長が暗い顔で「俺はもうこいつらのことを信用しないことにした」とこぼしてきた。

 

なんでも最近検品方法を指導したのだが、しばらく経つと言われた手順に従わない者が多数散見されたのだという。


そこで再び全員を集め、


班長「お客さんに大変な迷惑がかかっているぞ!云々・・」「そのクレーム対応でどれだけ日本人上司が苦労すると思っているんだ!云々・・」「だから手順を守るように!わかっているか!?」

 

フィリピン人一同「ハイ、ワカリマシタ!」


みたいな指導をした。


ところがこのすぐ後でまた手順に従わない子を見つけた。よくよく問い詰めると訓示の意味がほとんど伝わっていないどころか「クレーム」という単語の意味すらわかってなかったのだという。


※フィリピン英語では苦情はClaimではなくComplainを一般的に使う。

ちなみにカタカナ発音のクレーム=Claimは外人には通じない。


この日本人班長は、「理解できないのに『ワカリマスって答えるな』と教えているのに!」

「いったいどういうつもりで仕事しているのか・・・。もう誰も信じられない」と嘆く。


完全にフィリピン人不信である。


だが、これはフィリピンを含め海外で会社勤めをした人物であれば「あたりまえやん」と思うことだろう。基本が抜けているのだ。


その基本とはズバリ、「労働者は信用するな」という事実である。


こういうと人権派の知識人からは「差別だ!」と声が上がりそうだが、そんな連中に限って、労働者階級の外国人と肩を並べて仕事した経験なぞない輩ばかりだ。


「私は外国人の知人がたくさんいる」「留学していた」とかのたまう連中がわからない事実がある。


「世界は恐ろしいまでの格差社会が当たり前」ということだ。


特にフィリピンでは金持ちと貧乏人では言語から住むエリアまで全く違う。


4年生大学への留学生(語学学校ではない)や国際機関で働くような人物=エリートと、いわゆる出稼ぎ目的で日本語学校に「語学留学」する連中や、実習生=労働者階級、は国籍が違うくらいに考えた方がよいのだ。


ちなみにエリートと労働者の比率は1:9ぐらい。つまり大多数が後者である。


そして悲しいことにフィリピンの金持ちはいい人が多く、貧乏人ほどどうしようもない輩が多いという事実である。


私が昔、かの国に留学した当初、この事実がどうしても受け入れられなかった。


なにせ日本では昔話を見れば金持ちの庄屋はでっぷり太った悪者で、貧乏な小作人が善人と相場が決まっている。シンデレラだって貧しくも、心の綺麗な美人じゃないか!


だが、フィリピンでは美人やイケメンは外国人とのハーフ=お金持ちばかり。そもそもフィリピンの財閥はスペイン系が多く、嫁を代々スペインから連れてくるような一族も多いので自然と美男美女になる。

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ミスユニバース優勝のフィリピンモデル。ものすごいナイスバディだが、彼女もドイツ人とのハーフである。

 

だから庶民レベルでも女の子は自分が美人であることを誇るために「私はスペイン系」と自慢するくらいなのだ。


我々からしたら植民地時代にスペイン人に犯されまくった被害者の血なのだが、彼らはそうは思わない。


実際のところ大昔の写真を見ると純血のフィリピン人は人食い人種みたいな顔をしている。お世辞にも見栄えが良くない。

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そして貧困層ほど植民者の血が入らない=混血ではないのでブサイクになりがちである…。


それだけではない、コーラに肉&米の食事、ご馳走はジョリビー(ファストフード)と野菜ゼロの生活なので20代から中年太りし、南国の直射日光にさらされ続けた皮膚はボロボロになる。

 

見栄えだけではない。これら労働者階級のフィリピン人の常識は

①責任は他人のせい→自分の非は認めない。謝らない。Why only me?が口癖。

②嘘をつく→本当のことを言わなかっただけ。

③見てなければ必ずズルをする。サボる。→”Small mistake”だから。

④借りた金は返さない→使いこんじゃっちゃって返せない。算数ができないので数字管理は魔術。


あと、ベトナムほどではないが

⑤とりあえずものを盗む→誰も見てないものはもらっていい。他人のものと自分のものの境界が曖昧。


ってとこだろうか。

 

要は日本にいる労働者は大多数が油断も信用もならないという前提に立つのが正解なのである。


実際フィリピンで働く経営者のブログを読んで見たらいい。「9割が金を盗む」とまで書いている人もいる。

参考「フィリピンでビジネスをしよう」

http://philippinebusiness.blog.so-net.ne.jp/2018-02-07


だが、程度はともかく、これはベトナムや中国など、全ての労働者階級の外国人に当てはまると言えよう。


「日本の常識は世界の非常識」とは上手く言ったものだ。


海外ではあり得ないのだが、日本は大卒の幹部とパートのおばちゃんやアルバイトの間にさほど常識に差はない。


むしろ現場作業においてはパートのおばちゃんで、社員より優秀な人がゴロゴロいる。責任ある仕事をこなす「バイトリーダー」なんて世界基準では意味不明のポジションまである。


もちろん少数のトチ狂った労働者も日本にいるが、海外のそれとは数&ぶっ飛び具合ともに比べ物にならない。なにせ私はフィリピンの日系工場で工員にフォークリフトを盗まれたことがある(笑)。


くだんの会社はよくパートのおばちゃんがミスに対して本気で怒りながら実習生を指導しているが、これなんかフィリピン人からしたら理解不能


なぜならフィリピンでは工場労働者はどんなに頑張っても賃金は変わらない。金を持っている連中の99%はコネと血筋か、海外へにいる親族の送金による。つまり運によるものだからだ。


わかりやすくまとめると日本人の頭の中が

運+努力+才能=成功

と考えているなら


フィリピン人は

(運×10)+ほどほどの頑張り=成功

というのが頭の中だ。

※頑張りすぎると病気になるので努力はその人のできる範囲で、というのがポイント。


限界を超えていけばその人の能力が伸びるとか、必死の挑戦が成長を生むという哲学自体が存在しないのだ。バカンスの日焼けが理由で休むんだから、過労死なんて起きるわけがない。

参考「日本人よ、これがフィリピンだ」

http://a-ichikawa.hatenablog.com/entry/2017/08/23/155508


だからパートが給与額をはるかに超えるタスクに挑戦したり、使命感や責任感を持って必死に働く意味が本当によくわからないのである。


だが、日本人パートや社員は自分の常識が外国人と共有できると信じて疑わない。特に日本語が達者な外国人だと、なおさら同じと勘違いしてしまう。


自他ともに厳しいムラ社会日本では、学校でも近所づきあいでも嘘をつけば一生嘘つき呼ばわり。借りた金を踏み倒したり、万引きでもしよう者なら、町内から出て行くしかない。


日本人の常識は上記のいわば異常な環境で培養されたものなのだ。


こんな国は世界で日本しかない。東北の震災では治安の良さに世界中が驚いたが、あれが外国人が多くコミュニティが崩壊した都心で起きたらもっとひどいことになったに違いない。


外国人労働者が増えることが明確になった昨今、彼らが日本人とまったく違う倫理観や思考パターンで動く事実を理解し、それに備えることが必要だと思う。