フィリピン人面接での注意点(その一)
残念なことにこのほど、ホームシックによる途中帰国を出してしまった。それも入国2ヶ月で・・。
フィリピンでこんなに短期のギブアップは経験上初めてである。
ベトナム人では入国して、会社に配属する途中に車から逃げ出して失踪といったケースを聞いたことがある(笑)。囚人の護送みたいである。
こんなのはあらかじめ計画済みなのだ。入国手続きだけ組合にさせて、在日ベトナム人を中心とした犯罪組織に入国後の不法就労先を段取して飛ぶのである。つくづくベトナム人を触るのはリスクだと思う。
話を戻そう。今回のケースは担当者による選抜時の面接でヒアリング不足だったことが原因だった。私がきちんと教育していなかったから起きたのだ。お恥ずかしい限りである。
そこでこれを機会にマニュアルをまとめることにした。ここで簡単にノウハウを公開しよう。
ベトナムや中国と違うフィリピン独自のチェックポイントがある。
今回はそれを中心に紹介したい。私は愛国者であるが、同時にフィリピンびいきなのでより素晴らしいフィリピン人に日本でのチャンスを得てほしいと願っているからだ。
まず面接で気をつけるべきは人柄である。履歴書からこれをある程度読み解くことができるので注意点をあげてみたい。
職歴を見てみよう。フィリピンは契約社員社会である。基本は最長1年で、それを過ぎると正社員化しなくてはならない。よって、1年単位で仕事をころころ変わるものが出てくる。
好きで辞めたわけではなく、無理やり辞めさせられている者が多いので、これだけで判断してはいけない。しかし、ここ数年は好景気なので、正社員登用のチャンスは以前と比べて桁外れに増えている。
高卒で20代半ばであれば正社員経験が全くないのは、よっぽどダメなやつか、産業のないド田舎育ちなど特殊な環境にあった者である。
また、正社員になれてもだいたい2、3年で仕事を次々と変えることが多い。これは工場などでは昇級の機会が少ないため、転職の方が昇級に効率的だからである。
逆に製造業でチームリーダーなどに昇進したり、5年程度同じ職場で働いている者がいるものは稀で、注目株。粘り強く、謙虚な頑張り屋さんが多い。特に日系企業で実績のある人物はやはり信頼に足ると言える。
職歴で他に評価すべきポイントは海外就労経験の有無が挙げられる。労働者の4人に1人が出稼ぎというフィリピンなので出稼ぎは珍しくなく、工場や建設業でいうと中東か台湾が主要な勤務先だ。
通常どの国でも契約は2年単位の更新制なので、この勤務期間が2年に満たないものや更新していない場合は理由を厳しく問いただすべきである。
ちなみに、今回の途中帰国者は台湾を7ヶ月でギブアップした経験があった。ホームシックになりやすく、諦め癖がついていたのだ…。
当社の面接担当者がこの途中帰国歴を見落としたことがダメ男を入れてしまった原因である。
私なら必ず満了しなかった理由や、出稼ぎ先の感想を聞いている。ここで前職場の悪口をしこたま言う奴がいたら、性格に難ありとして雇うのはやめた方が良いだろう。
特に台湾出稼ぎ者は厳しくチェックすべきである。
日本人から見たら海外就労経験者は優秀なイメージがあるが、さにあらず。台湾は電子部品工場を中心に数千人単位でフィリピン人出稼ぎ労働者を受け入れているので、玉石混交。フィリピンと変わらないスタイルで仕事も生活も事足りてしまう。
だから、6年くらい働いたような人物でも台湾語ができない(=勉強しない)し、だらだらとした怠け者もたくさんいる。
反対に中東経験者は全般的に根性があるといえる。特にサウジアラビアでは雇い主のアラブ人が狂っていることで有名だからだ。何せ大使館内で人殺しも厭わない気違い国家。
フィリピン人労働者に給料を払わない、顔に唾を吐く、挙句の果てに男をレイプする(中東では女性に手を出すと死刑になるので、男性が狙われるらしい・・)と無茶苦茶。こんな過酷な国に耐えれたら、日本の生活なんて天国なので、根を上げにくい。
逆に注意する職歴をあげてみよう。
まず一番ダメなのはアッパーミドル、中間層の上位に当たる職業である。給料が比較的高いため日本との給料格差が少ない。きつい日本の肉体労働に直面し「こんなはずじゃなかった・・」となりがちなのだ。
特に近年のバブルで量産されているプチ成金系は、運と縁のラッキーパンチでそこそこの給料を得ているので、伝統的な怠け者メンタリティーを持ったまま自己評価だけが高い。つまりどうしようもない輩が多い。
その筆頭が公務員経験者だ。
フィリピンはほぼ100%コネで公務員になるので、基本的にダメな奴が多い。母親が公務員だったりすると最悪だ。バカ息子を甘やかし、賄賂など役得だらけのポジションに引き込んだりすることが横行している。
両親など親族に公務員がいる場合も避けた方が無難だろう。
次に、近年増えている外資系コールセンターも注意が必要だ。平均月給5万円はもらう花形産業で、大卒の人気職種である。流暢な英語を喋り、高学歴の人物が多いが、それを鼻にかけたプライドの高い勘違い野郎が多い。
デスクワークなので肉体労働に弱いし、ヘッドハントやジョブホッピングが横行する業界ゆえ、直ぐに転職先を探す癖がある。小金を持ったオタクも多く、「日本を観光したい」とわけのわからない理屈で応募してくる。途中で諦めて帰国しようとすること請け合いだ。
では貧困層ならハングリーで大丈夫か?というと、そう単純ではないのが難しいところ。
以前もここに書いたが、ド貧困層は腹が減ったら食う、寝たかったら寝るという動物みたいな輩が多いのだ。私はこう言う連中を「昆虫」と呼んでいる。
しつけで規律や我慢を教えず、ネグレクトに近い育て方をされたらこうなってしまうのだ。
貧困層の応募者に多い職歴はショッピングモールの売り子、ファーストフードなどレストラン、セキュリティーガードなどである。
フィリピンのサービス業は日本の同規模店の5倍はスタッフがいるが、もっぱら同僚同士で乳繰り合ってばかり。注文した食事が出てくるまで日本の10倍は時間がかかる。ちゃんと出てくればまだ良い、「水を頼んだらスプーンを持ってくる」と言われるような理解不能レベルの行動をとる。
ベトナムや香港と比べても提供するスピードは倍以上に遅い。こんな連中に日本の牛丼のワンオペなんて理解不能の超人芸。下手にやらせると虐待=いじめと受け取りかねないだろう。
セキュリティガードもひどい。一丁前にショットガンなど持っているので見た目はいかついが、実際の業務は「人間自動ドア」で、一日中アホみたいにドアを開け閉めするのが精一杯。いざ強盗が来たら真っ先に逃げるのが関の山なのだ。
ほかに貧困層の仕事として農家やファミリービジネス(各種儲からない自営業)もあるが、雨が降ったら休み風が吹いたら遅刻する気ままな仕事なので、一分一秒を厳しいルールで管理する日本の会社に対応できないものが多い。
こうやってみると小金持ちも厳しいし、とてつもなく貧しい野獣のような生活をしてきた人も先進国の生活には向かないと言えそうだ。(続く)