大人気の日系コーヒー店にて
フィリピンの六本木ヒルズ、ボニファシオグローバルシティ(BGC)に新進気鋭の日系スペシャリティコーヒー店「アラビカ」ができたというので行ってみた。
» 京都のコーヒー屋「%Arabica Coffee」もうすぐBGCでオープン ブログ | フィリピンプライマー
発展途上国はどこもスタバをはじめとするコーヒーブームだ。知り合いの金持ちもコーヒー農園に手を出してグルメコーヒーを作り始めている。今やおしゃれカフェで凝ったコーヒーを飲むのは、アジアのファッションである。
私がフィリピンに初めて来た20年前は、レストランでコーヒーを頼むとネスカフェとお湯が入ったカップが出されるのがデフォルト。つまりコーヒー=インスタント。
我々のイメージするアイスコーヒーは存在しておらず、何度「アイスコーヒー」と注文しても怪訝な顔をされ、「自分の発音が悪いのか・・」と凹んだのもいい思い出だ。
(アイスコーヒーは日本発祥のようである 参照:https://ja.wikipedia.org/wiki%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC)
15年ほど前にはスターバックスが出始めたが当時は三百円もするコーヒーを飲める人はおらず、店内には日本人と白人しかいなかった。
ところが急激な経済発展を受けて今やスタバはマニラだけでも300店舗もあり、どこも客で溢れている。
ブームにあやかろうと雨後の筍よろしく、韓国やフィリピンローカルのコーヒー店もできたり消えたりを繰り返している。個人的にいくつかのぞいてみたが、いずれも値段だけ一丁前で、質はドトールコーヒー以下。日本のよくできた純喫茶のようなクオリティはまだまだ望むべくもない。
そんなスタバの一人勝ちの市場で、日系コーヒー店で極めて高い評価を受けているのが「アラビカ」だ。現地のグルメサイトで見ても喫茶部門でトップである。調べてみたらアメリカの大学を出た40代の日本人が経営しているという。
まずは素晴らしいのはオリジナリティを感じる内装だ。
フィリピンで最近見かけるこの手の店の内装は、インスタではキレイだが、テーブルが傾いていたり、塗装にムラや隙間があったりと作りが雑なところが多い。
ヨーロッパあたりを旅行した金持ちのボンボンがアホな地元業者に丸投げし、三級品の中国製の建築資材を使うと出来上がったものが中途半端になるのだ。安っぽい偽物コピーである。
日本でもバブル世代のおっさんが作った店に同様のものがたくさんある。
ところがアラビカはご覧の通り塗装も綺麗。トイレは自動にフタが開くTOTOのウォシュレットつき(マニラで初めて見た)で、石鹸はイソップ。
物置にダンボールなんか使わないし、タイルに至るまで(おそらく)輸入品を使うなど徹底的に細部までこだわって店を作っている。
店の作りから見て、デザイナーだけでなく内装工も日本から呼んできたのだと思う。
京都の店舗でもバリスタはイケメンの欧米人を雇いスタッフの見た目にまでこだわっているが、こちらもバリスタはタトゥーの入ったハーフ顔。週末はバスケットボールジャージを着てサンミゲルなど飲まなさそうな雰囲気である。
口をポカーンと開けて、客そっちのけでスマホをいじるアホ顔のスタッフなんかここにはいない。おそらく相当高給を払っているのだろう。
高級ホテルと同様、最高の空間を提供するというオーナーの明確な意図を感じる作りだ。
カフェラテの小さいのが120ペソ(約260円)日本が300円だから、ほぼ日本と同じ客単価だ。
昨今の東南アジアの躍進は凄まじい。縮小する日本から新しいマーケットを狙い海外に挑戦する企業は多い。しかしながら高齢の日本人の考えに多い、「貧乏なフィリピンなら日本のモノならなんでも売れる」という考えは通用しないのだ。
私も何度か日本製商品のアジアへの輸出を手伝ったことがあるが、取り立ててよくもない品物を日本より高い単価で売ろうとする経営者がなんと多いことか。大儲けした高度経済成長のビジネスモデルが忘れられないのだろう。
日本製は確かに良い。だが、中国製の品質が上がっている以上、すべての日本製に何倍もの価値はないのだ。
アラビカコーヒーのように「日本で最高の評価を受けているモノを、日本と同じ値段で提供できる時だけ勝てる」と感じた次第である。