フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

安かろう悪かろう

先日建設関係のお客さんから。

 

ベトナム実習生は監理費を月間3万円でできるらしいぞ。お前んとこはなんでそんなに高いんだ!」

 

と電話がかかってきた。

 

こういうのは慣れっこなので私はこう答えている。「中国人なら監理費が1万円でできるところ知ってますよ。紹介しましょうか?」

 

 

 

以前もここで書いたが共産圏である中国やベトナムは100万近い賄賂を実習生候補者から送り出し機関が取る。

 

組合がこのおこぼれに預かるところも多い。だから監理費をいくらでも下げることが可能なのだ。

 

pinoyintern.hatenablog.com

 

大阪でもっともベトナム人実習生を派遣している組合の日本人オーナーは、この賄賂を自分のスイスにある隠し口座に入れて、巨万の富を築いたらしい。だが、富が大きくなりすぎて離婚したとも聞いた。

 

これに対し、意外にフィリピンは労働者保護に厳しい民主国家なので実習生が負担している費用は安いのだ。私は実習生からびた一文もらってない。日本企業からいただく管理費だけが生業だ。だから、あんまり儲からない(笑)。

 

これは良し悪しで、ベトナムはそれだけ借金を抱えてくるため、容易なことでは諦めない(=根性がある)傾向が強い。

 

反面フィリピン人実習生は労働者保護の名目で甘やかされているので、日本で「観光したい、文化に触れたい」なんて甘い気持ちで来たあげく、あまりのきつい仕事にギブアップするものがいるのだ。まあ、当社はこう言った連中を除くノウハウを持っているので大丈夫だが・・。

 

さて、このたび、ベトナム人技術者を10人以上受け入れている工場の経営者に出会った。一斉に何人も転職してしまったので、次はフィリピン人を受け入れたいと当社にオファーが来たのだ。

 

だが、丁重にお断りすることにした。

 

聞けばこの技術者を招聘する初期費用をこれまで0円でやってきたのだという。入国時の航空券代すら技術者に負担させ、企業はベトナム側が送ってきた書類を入管にだせば招聘できたらしい。

 

ただで大量のベトナム人を雇えたと喜んだのもつかの間、「入国するなり数人がすぐに転職してしまった」のだ。しかし、私からしたら当然である。背景を考えてみればわかる。

 

賄賂国家ベトナムでは労働者送り出し側の人材派遣会社に50万から100万は「手数料」を積まないといけない。この他にも航空券代や健康診断費用など実費でかかる経費もある。

 

ところがこれがゼロであれば、この費用は技術者が借金してきているのだ。

 

そしてその金を貸すのが在日のベトナム人犯罪組織である。

 

彼らは「来日したらすぐに俺たちの紹介する会社に転職しろ。招聘した会社に迷惑?知るか、『転職は労働者の権利だ』と戦え!」と脅すわけである。ベトナムの金貸しによる取り立ては恐ろしいので、無視できない。契約不履行の場合は母国の家族が嫌がらせや暴力にさらされるからだ。

 

日本人の田舎社長はこんな背景を想像もできない。「初期費用ただでベトナム人技術者が雇える。うへへ」と欲に目がくらみ、しっぺ返しを食らったのだ。

 

まあどっちもどっちである。

 

フィリピンなどであればこう言った経費は全て企業が負担することになる。したがって受け入れ時のコストも高い。だが、この手の組織犯罪とは無縁だ。

 

ちなみにフィリピンではベトナムに比べて高額の借金を抱えることは少ない。理由はフィリピンがクリーンだからではない。

 

何せ銃社会だからヘタに追い込んだら撃たれるし、貯金や資産なんかはロクにないから取り立てようがないのだ。

 

そもそも文化的にカネを返さないのが当たり前。借りた当人には返すつもりなんか最初からないのだから、無敵だ。フィリピン人にとっては借りる=もらったなのだ(笑)。

 

それはさておき、当社の経験上、人に関する経費をケチる会社はだいたいダメである。

 

pinoyintern.hatenablog.com

 

他の経費は削っても、給与や福利厚生などで手厚くしてくれる会社は皆感謝して働くのだ。私自身が給料の安い実習生の派遣組合で働いた経験があるのでよくわかる。

 

仕事はボランティアではないので、何をおいてもお金をケチってはいけない。「外国人だから安く雇いたい」なんて考えは時代遅れなのだ。