フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

新マニラ市長は将来の大統領か?

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イケメンで44歳新生代のリーダーだ

首都圏マニラ市の新市長、イスコ・モレノ氏(44)が注目を集めている。就任するや否や、次々とメディア受けする政策を打ち出したのだ。わずか10日ほどの間に以下のような政策を発表。

 

・首都圏最大の屋台街ディビソリア地区の違法屋台撤去

・下水道の掃除と市街の清掃活動

・市長直通のホットライン開設

・違法屋台から賄賂をせしめていた警官9名の解任

・公共施設に政治家の名前を記載することを禁止

・マニラ動物園、公園の保全の確約

 

 

今や彼の働きがメディアの話題をさらわない日はない。

 

元俳優のイケメンなのでテレビ映えすることもあり、SNSでも賞賛の声が高まっている。いささか気が早いがこのまま行けば次期大統領になる可能性も高いだろう。

 

注目すべきはその生い立ち、首都圏マニラ市のスラム街、トンド地区で育った。貧困層の家庭に生まれ、 10歳からゴミ拾いをして生計を助け、レストランのゴミ箱から食べ残しを集めて夕食にするような幼少期を過ごしたという。

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貧民街での人気は絶大だ



貧者と超富裕層といった格差による身分制度が存在し、政治が金持ちの家業と化したこの国ではこのような出自の人物が首都圏の市長になるのはほとんど奇跡だ。

 

 

ハンサムな容姿のおかげで19歳の時にテレビ番組のスカウトを受けて芸能界入りし、俳優として活躍。キャリア全盛期にも関わらず、23歳でマニラ市議に当選して政界への道を歩み始めた。

 

当初は俳優上がりの高卒と見下されたこともあったそうだが、市議を務めながら大学を卒業。その後も複数の大学で政治について学び、2007年からはマニラ市の副市長に当選した。

 

注目すべきはその政治キャリアだ。

 

元警察官僚で内務自治長官のアルフレッド・リム(2007~2013)、元大統領のジョセフ・エストラダ(2013~2019)という全くタイプの両市長に副市長として仕えていたのだが、この二人は全くタイプが違う。

 

日本でいうなら後藤田正晴森喜朗元首相みたいなもんである。かたや切れ者でかたやパッパラパーだ。

 

切れ者リムに仕えていながら、フィリピン史上最悪のアホ大統領でありながら、国民的映画俳優で人気者のエストラダが市長選に出馬すると、あっさりと勝ち馬に乗り換えるえげつなさ。さらに、今年の選挙では再選を狙うこの二人蹴落として市長に就任して見せたのだ。いわば元ボス二人を公然と裏切って見せたのだ。

 

 

ハンサムな外見に似合わず仁義なき闘いができるタフさを持っている。日本の坊ちゃん政治家にはないしたたかさだ。

 

ちなみに、フィリピンの芸能界は金持ちの息子や娘だらけだ。さらにテレビ業界関係者にはホモが多く。私の知人の元モデル男性はホモプロデューサーのセクハラに耐えかねて、芸能界をやめたと言っていた。

 

スラムから成り上がった彼が華やかな芸能活動の裏で相当しんどい思いをしたことは想像にかたくない。

 

日本の発展を支えた戦後の政治家には田中角栄のように貧困から成り上がった人や、戦争で地獄を見た苦労人が多かった。見たくない人間の暗部に接し、知性だけでなくタフで狡猾な部分も併せ持っていたことだろう。モレノ市長も同じと思う。

 

こういう人はそう簡単にはくたばらない。清濁併せ吞む頼もしいリーダーである。

 

’(続く)