おそるべしベトナムのサービス業
近年は中韓のやかましい観光客でいっぱいと聞く中心部を避け、地元の知り合いに紹介された市街地はずれのホテルに1週間宿泊した。
4年前開業したばかりで、プールは付いているが部屋数は10部屋程度のこじんまりしたプチホテルだった。30代前半のベトナム女性を筆頭にオーナー一族が経営している。
この若いオーナーは英語を話し、日中、常にカウンターに立ち続ける。
綺麗な植栽のホテルの庭はチリひとつ落ちておらず、道路側の窓は騒音防止で2重にされており、洗面台は日本のIN●X製と要所要所にこだわりが見える。
塗装など細かな内装は日本より劣るとはいえ、一泊1万5千円クラスになるフィリピンの五つ星ホテルと同等のクオリティだ。
Wi-Fiは各部屋に別々のルーターが付いており、動画を余裕で視聴できる。
客はほぼ白人ばかりなので騒音もなく快適である。
これで、一泊4000円代…。
さらに驚くべきはそのサービス。
生後5ヶ月の赤ん坊が部屋でぐずっているとオーナーは「ロビーに降りてきて」と私に声をかけ、母親など家族全員で抱いてあやしてくれた。
別の日に6歳の長男が腹を壊して脱水症状になったのだが、カウンターの女性スタッフは夜10時に救急病院まで付き添ってくれた上、病院までのタクシー代を「後でいいから」と立て替えてくれた。
感激して後でチップを渡したら「多すぎる」と返しに来た(笑)。
「オモテナシ」は日本だけのお家芸ではないと痛感させられた。
そういえば救急病院のサービスにも驚いた。点滴で2万円は取られる私立病院だからかもしれないが、待ち時間0で血液検査と点滴をしてくれたのだ。日本の病院よりも処置が早い!
病室も清潔。ついてくれた20代の太ったメガネ看護婦は笑顔こそないものの、テキパキと無駄なく動く。
ベトナムの 病院は賄賂を渡さないと治療してくれないと聞いたので、チップを渡そうとしたが、こちらも拒否された。
なんというか、日本よりもサービスがいいとは言わないが、フィリピンとは比べるのが失礼なレベル。
これがフィリピンなら、ホテルなどサービス業のオーナーがカウンターに立ち続けることはまずないだろう。自分は海外にでも遊びに出かけ、ほったらかされた設備は故障ばかりで、スタッフは勤務中もスマホ漬けのはずだ。
第一、「客のタクシー代を立て替える」なんてことはスタッフはもちろんオーナーですら絶対にしない。もらったチップが多いから返しに来るなんて発想自体ないだろう。
救急病院もしかり。夜勤の看護婦はスマホいじりに忙しく、こちらが怒り狂って圧をかけるまで待合室で患者を放置することは間違いない。
ベトナムは伸びる。としみじみ感じた年末だった。