フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

外国人労働者は会社をどう見ているか

外国人労働者受け入れについて特定技能ビザにまつわる営業活動が盛んだ。

だが、外国語もできない国際感覚ゼロの業者が、カネ目当てに飛びついてるだけ、といった感がある。

 

手を出す前に性質、気質と言うものを理解することが必要であろう。

 

私はフィリピン専門なのでフィリピン人の仕事に対する概念から説明したいと思う。

 

日本人は日本語が上手で仕事のできる外国人を見ると、お人好しだからすぐに「自分たちと同じ」と思いがちだ。

 

実に甘い。

 

途方もない大きなギャップが彼我の間に横たわっているのである。

 

例を挙げよう。

 

まず、一番大きいのは会社への忠誠心だ。

 

そもそも華僑が経済を回すアジアでは会社は労働者を一切信用しない。

 

いかにして労働者を使い捨てるか、と考える経営者と、搾取されつつもいかにしてずる賢く立ち回るか、と考える労働者の騙し合いだ。

 

だから、労働者は頻繁な転職(ジョブホッピング)が大好きである。フィリピンで労働者の面接をしたことがある人なら、必ず気づくはずだ。

 

職務経歴を見れば分かるが1カ所で3年以上働いた人間は極めて少ない。特に工場労働者や販売員といった労働者階級で見るとおそらく2030パーセントぐらいしかいない。

 

ほとんどが半年から1年少々で仕事を転々としている。

 

終身雇用は終わりつつあるとはいえ、「石の上にも3年」という日本との差は激しい。

 

なぜこんなことが起きるのか考えてみよう。

 

 

まず日本は会社が労働者を育てると言う文化がある。大卒の新入社員で言えば、学部や専攻は問わず一緒くたに採用する。

 

 

こんなことをやるのは世界中で日本だけなのだ。

 

会社は大学で学んだことなんかはほとんど無視してその人柄や潜在能力、つまりは今後伸びるか否かを重視する。そしてまっさらなキャンパスに文字を描くごとくその会社独自の色を染めあげてしまうのを好むのだ。

 

だから一般的に言って中途採用や転職者は新卒叩き上げよりも給料は低くなりがち。大手新聞社では中途採用を「外様」と社内で呼ぶと聞いた(アホ臭いが・・)。

 

だが、アメリカを始め海外では、法学部を出たら法律関係に行くし、経済学部出たらそれ関係の仕事に就くことが多い。つまり海外の会社は人を採用する時その人の将来や人格ではなく、その人の現在持っている能力に給料を払う。

 

会社は社員を育てる場ではないのだ。

 

 

アメリカ植民地だったフィリピンも同じで能力に対して対して採用を決める。

 

 

だから昇給や昇進に関しては、セミナーなど社外で学んだ実践や資格を重視する。アメリカでも社会人になったら転職の合間に自分で大学院に通ったりするのはそのせいだろう。

 

 

 

しかしこの考え方でいくとどういうことが起きるかと言うと、1つの会社で仕事をしてる限り給料は基本的に増えないのである。

 

先日マニラで実習生の両親と食事をしたのだが、彼の父親はマニラの港でフォークリフトを運転する仕事を20年続けている。しかし、給料は最低賃金(月30,000円)のまま昇給がないという。

 

 

海外の会社は基本的にこういう使い方をする。つまり長く働いても人が育つと考えていないから20年間昇給しないのである!

 

「労働者の仕事は誰でもできる。労働者は取っ替え引っ替え可能」という考えが根底にあるから、外資系企業はマクドナルドのように業務を標準化するマニュアルのレベルが高い。

 

これはベトナムも同じで、同じ職場で長く働く人は転職する能力がない人とみなされるらしい。

 

だからフィリピンのローカル会社では転職をさせたくない幹部社員と、使い捨てる社員の待遇差はえげつないものがある。

 

オーナー会社の場合、幹部候補生など優秀な人材には社用車を自家用車として貸し与えたり、経営者が所有するアパートに格安で住ませたりする。この場合「貸す」というのがポイントだ。信用なんかしていないので、転職できないようにあの手この手で縛り付けてしまう策略なのだ。

 

その反面、一般社員は転職させるがままにしている。特に引き止めもしない。

 

こんな環境で育った連中相手に転職を認める特定技能ビザを導入するのは、日系企業が阿鼻叫喚の地獄に陥ることを意味する。

 

実際に現在の日本でも、日系フィリピン人や特定活動ビザのベトナム人の料理人、といった転職できる資格で働く外国人労働者は大部分が3年間同じ職場で続かない。

 

入社時は土下座せんばかりの態度を見せるが、それはその場限り。

舌の根も乾かぬうちに転職を繰り返すものばかりなのだ。