フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

フィリピンの官僚

実習生と話していて、「フィリピンが貧しいのはナゼか?」と聞くと十中八九「政府が腐敗してるからだ」と答える。

 
今年は改定されるとはいえ、フィリピンの公務員の最低賃金はマニラで月給3万円ぐらい。そこそこのポジションでも10万円くらいだろう。
 
だが、例えば、区役所で車関係の許認可を与える部署の幹部は子供のゾウを自宅のペットに買うくらいの財産を築いているらしい。もちろんすべてが賄賂による蓄財。しかし、ゾウって(笑)。
 
こんなオイしい職場に入れるならどんな手でも使うだろう。だから、通常役人といえばコネが必須。国全体が一昔前の日本の村役場みたいなものだ。どの政府機関に行っても小太りの冴えない奴ばかりで、まともに仕事しているのは10人に1人くらい。
 
だから、日本向け実習生の面接で親族に公務員がいる奴は要注意だ。もともとコネがある=金に困らない家庭だから、「キツイ仕事は嫌だけど、アニメが好きだから日本に行く」みたいな輩が多いからだ。
 
何はともあれ、フィリピンの役人と政治家は腐りきっている。
 
だが、先日フィリピンの元官僚A氏と会食をしてこの認識をやや改めた。この方は在外公館への赴任歴のある正真正銘のエリートだが、父親は下町の時計の修理職人だったという。まあ、貧困層の出自に近い。
 
40年ほど前、マルコス独裁政権時代にマニラの大学を卒業したA氏は、母校の講師を3年勤めた後に公務員試験を受け、その抜群の成績から上級官吏として採用されたという。
 
フィリピンの役人で男といえばお調子者(例:「なんでも俺に言え。がはは」)で大言壮語(例:「俺は◯◯を知っている。××も知り合いだ」)が典型的。威張るのと、女を口説く以外何もできない。
 
少し頭が良い奴がいても、仕事より賄賂集めに知能を使うからタチが悪い。ちなみに女の役人は多少マシである。
 
しかし、この方は真反対。物静かで、できないことはできないとはっきり言う(これはフィリピン人には極めて珍しい)。また賄賂は要求しない上、趣味はマラソンという日本の公務員に近い気質である。
 
身につけているものはシンプルで「僕は海外赴任手当は全部母国の妻に送っている。高い服なんかいらない」と話すような人物だ。ちなみに彼の奥さんは同じ職場の同僚だから、おそらく職場に愛人を作るようなこともしなかったのだろう(仕事がちょっとできる役人はすぐ愛人を囲いがち)。
 
「フィリピン人は街が汚いというが、ゴミを路上に捨てているのは自分たちだ」「政府が腐敗しているというが、選挙でリーダーを選んだも自分たちなのだよ」と当たり前のことをとつとつと話すA氏との会話は非常に新鮮である。こういうまともな話ができる人は本当に少ない。

彼は定年退職後、マニラの大学で講師を務めている。
 
人口1億人の国を動かしているのはこういう少数のまともな官僚なのだろう。私が思うにこの国の公務員採用は「コネ(バカ)枠」と「テクノクラート(有能)枠」があるのではないかとみている。
 
真面目に国のことを考える能吏も一部は採用できる仕組みなのだろう。そういえば以前、この国の財務省を取材した時も対応した女性官僚の対応が素晴らしかったことを思い出す。財務省はバカでは困るもんなあ。
 
こういう素晴らしい人材は、泥の沼に咲く花のように少数だが必ず存在する。こういう方とどうやってつながるか。フィリピンでの事業では縁は非常に大切である。
 
 

f:id:pinoyintern:20160314201545j:plain公務員と同格のフィリピン航空の社員。左からスマホ→仕事→ぼーっとしているくせに態度だけ横柄→仕事と、稼働率は半分だ。みんなこんな感じ。