フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

フィリピンの大学バスケに驚き

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どんな田舎でもバスケットボールコートが存在する

フィリピンの大学バスケットボールについて面白い話を聞いた。
バスケは彼の国では花形スポーツで、プロリーグもあるし、大学選手権は国民的娯楽。日本の一昔前の野球のイメージに近い。
電気や水道インフラすら怪しいスラム街でもコートはあるため、男が何人か集まったら遊びはバスケと決まっている。学校で運動神経の一番良い子がやるのも必ずバスケ。選手は花形でとにかくモテるのだ。
この度、大学バスケ部時代にルソン島南部の地区チャンピオンになったことのある男性(25)と話した。
田舎の大学は2m近い黒人のハーフ選手を揃えた首都圏の大学に比べて体格で劣るためか、元プロバスケ選手のコーチの元、アジリティーとスタミナを徹底的に鍛えられたという。本人曰く「死ぬほど厳しい練習」だった。
土日の練習は2部練で一日6時間はトレーニングに明け暮れた。
それでも練習は週3日だけなので、練習量だけでいえば日本の部活より少ない。
これは大学の成績が悪いと退部になるため、平日は勉強漬けになるからだ。つまり「学生の本分は勉強」というわけだ。ちなみに、アメリカの大学スポーツもそうらしい。
彼の大学は特に厳しく、平均点が85点(クラス上位30%)以下になると退部させられてしまう。
反面、部員は優遇されており、自動的に4から6割の学費を減免する奨学金の対象となる。貧しい家庭の部員が多いので、クビにならない様に必死で勉強するのだ。彼も5人兄弟で家は貧しい。「親に迷惑をかけたくない」と勉強に勤しんだという。
花形で奨学金まであるので入部希望者は多い。彼の学年は50人が入部を希望したが、入部テストの合格者は25人だった。
遅刻やサボりが当たり前のフィリピンにもかかわらず、件の鬼コーチは必ず時間通りに練習を開始したという(驚きだ!)。
練習はキツいが、サボったら隣街まで10キロの罰走が科される。しかもビデオチャットスマホの位置情報で実際に走った距離をコーチが確認する。ルーズなフィリピン人のメンタリティからいって必ずズルしようとするからだ(笑)。これを毎回やるコーチは大変だろう。
部員は総勢30から40人もいたから試合にはなかなか出れない。彼も3年間は補欠だった。ドロップアウトするものが続出し、卒業時に同期は7人しか残らなかったという。
 
その場の快楽を追求し、将来への投資や我慢を美徳としないフィリピンでは「下積み」という言葉は存在しない。そんな文化を持つ国で3年間も補欠生活に耐えれる若者がいたとは!やはりどんな国でも優秀な人は優秀だ。
 
日本の大学スポーツのレベルはアジアではトップクラスだろう。しかし、私学の選手はろくに勉強なんかしていない(私もだが)。
 
プロになれず勉強もロクにしていないなら頭空っぽの学生が出来上がる。私の知人にも甲子園で活躍して大学野球まで行ったのにホストになった奴がいた。
会社経営者の立場で言えば、良い成績をキープしながら運動してる学生と、運動しかせずに授業中寝てる奴なら圧倒的に前者を採用したいと思うはずだ。その意味でこちらの方が健全な学生スポーツと言える。
フィリピンのバスケットボールなんて根性なしのだらけた連中ばかりが集まってると思っていたので意外だった。
彼自身、大学卒業後に日本に語学留学し、2年で日本語検定のN2をとっていた。
 
まさに文武両道。こういう人材がこれからのフィリピンを担っていくのだろう。