フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

特定技能ビザについて議論するテレビ番組

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朝のニュース番組で新しい労働ビザについて発言しているコメンテーターのレベルが低すぎる。出禁にして良いレベルだ。「単純労働ビザを考える前に、もっと日本人の給料を増やしたらいい」とか、「高齢者を雇えばよい」とか…。およそ現場が見えていない妄言を繰り返している。

 

今日本で何が起きているのか?建設業を例にあげよう。

「給料を増やせば良い」・・?バカな。例えばバブル期並みに今の2、3倍。つまり、時給2000円から3000円くらい払えば人は来るだろうが、現実的ではない(特定の業界だけ上がるわけがない)。しかし、今の時給に100円や200円プラスしたくらいでは全く効果はないのだ。断言できる。

 

そもそも、人が来ないのは業界に「将来性」がないからだ。

建設業で一昔前なら社会保険を払わず、税金もごまかせれる個人事業主の「ひとり親方」が、年収7〜800万円を狙う事ができた。少し目端が効けば、20代でも北新地で豪遊したり、ベンツを乗り回せたのだ。実際、関西空港の建設現場では日当3万円くらいは稼げたらしい。

しかし今や、建設業の日当は1万円前後。昨今は現場単位で労働者の社会保険加入が義務付けられたため、昔に比べて手取りはさらに減っている。

 

製造業も一緒である。中国やベトナムである程度の製品が作れるようになった今、高いコストを払って日本で作る必要性のあるものと、ないものが明確に分かれてしまっている。

高給取りを狙えるのは職人芸の製品に限られているのだ、そしてこの職人芸の仕事ができる人は今も昔もごく一部。つまり、職人仕事は数千、数万人単位の雇用の受け皿にならないのだ。反対に、大量の雇用の受け皿になる流れ作業は海外とのコスト競争にさらされ、圧倒的に価値は低くなってしまった。

さらに過労死を防ぐというお題目で残業時間の制限を厳しくしたため、こちらもダブルパンチで手取りが減っている。

 

「高齢者を活用すべき」、というアイデアも机上の空論の極み。

真夏の建設現場に行ってみたらよい。今や日本の夏は気温40度前後。若いフィリピン人が熱中症で倒れるレベルなのだ。私など通訳で立っているだけでも辛い。

この過酷な環境で肉体労働を毎日8時間できる高齢者がどれだけいると思っているのか?働ける人よりも熱中症で倒れる人が多いに決まっている。

なおかつ近年は高齢者の高所作業を禁じたり、現場の事故には厳しい罰則が適用される。このコメンテーターは高齢者が次々に現場で死んだらなんとコメントするつもりなのか?

 

もう一つ、高齢化による内需の縮小についても視点が欠けている。高齢化は消費を止めるのだ。

今の若者は金がない。日本の消費の5割を60歳以上が占めている。先日話したフィリピンパブのお姉さんは「日本人のオジイさん、オカネモチ」と言っていたが。飲み屋街ではバブル世代以前のおっさんの姿ばかりが目につく。

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「若者の●●離れ」と呼ばれて久しいが、根本的に視点を間違えている。マーケットの半分を高齢者が占めた日本でブームは起きないのだ。一体どこの爺さんが、ドラクエやエアジョーダンにハマって徹夜で並ぶというのだ?

そもそも消費とは無駄なもの。だが、消費が止まれば外食や物販、ありとあらゆる業界が窒息死してしまうだろう。

 

日本は、若い外国人をどうやって効果的に入れるかという議論をするべきなのだが、スタートラインのはるか手前でごちゃごちゃしているのである。