フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

東南アジアのわいろ文化(その2)

ベトナムのわいろが酷いという話をした。しかし、良い面もあるのだ、実習生受け入れ書類審査なども金で何とでもなるからだ。

わいろ次第で異常に早く公的書類が取れたりするので、あれはあれで恩恵を受ける人が多い。

ユニバーサルスタジオのプライオリティパスみたいなもの。考えようによっては便利極まりない。ただ、真面目な人はバカを見る国というのはいかがなものか。

さて、フィリピンもわいろが酷い。税関や司法関係者は特にエゲツないことで有名だが、ややベトナムとは毛色が違う気がする。

何というか、組織立っておらず、担当者の思いつきで取る感じだ。担当Aに払う→担当Bは貰ってないとごねる→担当Cも…とカネばかりとって仕事しない。

ベトナムは部署みんなであがりを公平に分けるのでこういうトラブルは少ない。わいろは取るが、仕事もする(笑)。

フィリピンでこれができないのは

①割り算ができない…計算ができないから目先の金を全て独り占め→お互いチクリあって自滅、する。
一言で言うと役人の頭が悪い。
②民主国家…権力が分散しているためわいろを払う先も分散=複雑化する。また、選挙で権力構造が一気に変わる。

ことが挙げられる。

フィリピンでは「賢く、権力を持った人」を探し、わいろを正確に撃ち込む技術と人脈が必要だ。

10年ほど前の話だが、政府開発援助(ODA)ブローカーがマニラにいた。日本人の元暴力団員で、具体的な仕事は政府高官へのわいろの差配だった。

例えば、マニラ国際空港第3ターミナルは日本の援助で竹中工務店が作った最新ターミナルだが、完成後、開業するまで6年放置された経緯がある。

いろいろ言われているが、実際は時のメンドーサ運輸長官へのわいろが不足したことが原因らしい。

フィリピンの政治家や役人はアホなので、国の玄関口でも平気でこんなトラブルを起こす。恥も外聞もない。

こんな国だから、件のブローカーさんは重宝されていた。的確に政府高官にわいろを分配し、ODA案件を滞りなく進める。

一件まとめるごとに2億円の報酬にありつくこともあったらしい。実際九⚫︎電力など一流企業が面会に来ていたのを見たから、コネは本当にあるのだろう。


とはいえ、月日は流れ、聡明なアキノ大統領(現職)が就任したことで、だいぶ汚職はましになった気がする。

意外に思うかもしれないが私の知る限り、フィリピンの実習生はベトナムや中国のように送り出し機関にわいろを払っていない。

万事適当な国民性だから、借りたカネは返さない→金貸しが成り立たないから貧乏人は借金できない→ベトナムみたいに巨額のわいろが用意できない、のだ。

また、一応民主主義なので労働者の権利は案外強い。うかつにわいろを取ったのがバレたら、送り出し機関はライセンス停止になる可能性もある。

どんなトラブルもカネ次第で解決可能なのは同じだが、送り出し機関と実習生の力の差は、ベトナムや中国に比べて小さいように思う。

労働者の国であるはずの共産主義の方が労働者が搾取されている現実。なんだか納得がいかないものである。


東南アジアのわいろ文化(その1)

賃金などの統計資料は参考にしかならないというのがアジアでは常識である。統計で出ない代表的な巨額の経済活動といえばわいろやリベートである。フィリピンなどに比べ、ベトナムでは非常に洗練(笑)されたわいろ文化を持っている。その仕組みは深く、動く金額も巨大だ。

 

知人の日本人男性がベトナム人女性と婚姻届を出すために大阪のベトナム領事館に行った時のことだ。

 

窓口には40代ぐらいの太ったベトナム人。茶色の革ジャンを着て(余談だが、ベトナムの男は日本に来たらすぐに革ジャンを買う。チンピラみたいに見えダサいのだが、彼らの中ではイケてるんだろう)、どでかいシルバーの指輪をはめていた。

 

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↑画像はイメージです

 

物腰はワリに丁寧だったが、「結婚届?『手数料』は8万円〜12万円だな」という発言を聞いて知人は耳を疑った。婚姻書類手続きのために役所に10万前後の金を払う!?

 

そんな金額は不当だというと「あ、そう。じゃあ結婚できないね」とのたまう。

窓口でさんざん交渉したところ、たまたまこの領事館職員が、知人のベトナム人妻の遠い親戚だったことがわかり、4万円まで値段が落ちた。それでも高いが、職員曰く「『手数料』は領事館のみんなで分けるから、自分の一存でただにはできない」のだという。

 

もう一つ例をあげよう。

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別のベトナム人女性は日本の大学を出たエリートで、卒業後はハノイの某一流日系企業の総務で働き始めた。

 

10年近く前のことだが、会社の創立記念で取引先へのプレゼントをすることに決まった。プレゼントは冷蔵庫など家電などだったので、女性は電気屋に向かった。

 

購入を会社経費で済ませ、会計をしていると電気屋から「口座番号を教えてください」と言われたらしい。教える理由などないと感じた彼女。断って事務所に帰ったところ、事務所のベトナム人同僚の態度が急に冷たくなっていたという。

 

後で理由が判明したのだが、ベトナムではこういう場合、店から社員にリベートが支払われるのが常識だったのだ。

そして、ここが賢いのだが、社員はもらったリベートを事務所で公平に分けるのがルール。つまり罪を皆でシェアすることにより、日本人上司にチクられるのを防ぐ仕組みが出来上がっているというわけだ。

ベトナムでの社会人経験がなかった彼女はいたく反省し、すぐにリベートを受け取って同僚と山分けしたらしい。一人だけいい子になっては生きていけないのだ。

 

ベトナム人実習生事業でも同じだ。推薦された候補者を採用しようとするとなぜか出国前の健康診断で引っかかることがある。送り出し機関に通常候補者が支払うべきわいろをわたしていないからだ。

 

私がベトナム実習生をやらない理由はここにもある。とあるハノイの送り出し機関の社長から「ベトナム人実習生入れてくれたら、お前(組合)に一人当たり10万円の手数料を払おう」と言われたことがある。

 

送り出し機関や組合の職員の中では常識だが、一般的に行ってベトナムの実習生候補者は北部で約100万円、南部で30万円くらいのわいろを送り出し機関に収めているのだ。

 

面接の時に通訳に袖の下をわたすことで便宜を図ってもらうなんてことも横行している。

だが、これはベトナムに面接に行った受け入れ企業さんを騙す行為だ。

 

以上の情報はベトナム人を受け入れている方は酒でも飲みながら(素面では言わない)実習生に聞いてみるとすぐにわかる。

 

東南アジアでの生活は長い私だが、どうもこのベトナムのわいろ文化は好きになれないのだ。

では、フィリピンはどうなのだろうか(続く)。

 

 

 

 

 

 

 

社員の福利厚生

日系企業の特徴といえば家族経営と終身雇用だったのは一昔前。とはいえ、海外で活躍する企業はいずれも従業員を大切にする誠実さで知られている(ただし給料は安い)。福利厚生にも時間と費用を注いでいる。

 

福利厚生として有効なのは運動会や社員旅行(アウティングといわれる)だ。もともとラテンな明るい国民性なのでイベントは大好き。

従業員はゲームやダンスといった余興の準備は徹夜する勢いで行う。ちなみにグータラな彼らは仕事の徹夜は脅されてもしない生き物・・生き生きと遊びのリハーサルに勤しむ姿は人が変わったようにすら見えたものだ。

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 ↑アウティングの盛り上がり。

 

そしてイベント当日は日本人から見たら異様なくらいの盛り上がりを見せる。日本なら小学生でもこうは盛り上がらない。私が勤めていた工場では翌日は遊び疲れた欠勤者が多いので、諦めて休日にしていたくらいだ(笑)。

 

しかし、今、フィリピン人実習生を受け入れている国内の中小零細製造業で社内イベントを行っているところは本当に少ない。忘年会がせいぜいで、旅行や運動会なんてほぼゼロだ。

 

フィリピンの盛り上がりを思い出すと寂しい限りである。高度経済成長の日本では社内イベントは盛んだったと聞く。昔、某新聞社では「(どさくさに紛れて)あの上司を殴ってやる」と運動会に参加する記者がいたらしい(笑)。むちゃくちゃだが、それだけ日本には活気があったのだろう。

 

欧米系の企業といえば冷たい、労働者使い捨てのイメージがあったが、知人が働くマニラの米国系企業ではチーム(5〜7人)につき毎月2000ペソ(5000円くらい)の交流費が支給され、チーム同士で食事に行けるようにされていた。また、ノートパソコンやスマホも会社支給という。

 

そういえばマニラのスターバックスで女性が「領収書にMicrosoftと書いて」とカウンターで頼んでいるのを聞いたことがある。一杯400円くらいする高いコーヒー代まで会社負担なのだろう。

 

 

今、日本では会社が社内イベントを企画しても参加者が少ないという。高齢化が進み社員が所帯持ちばかりになると、参加する喜びが減るのもわかる(美人やイケメンの独身が多いと、参加する方もテンション上がる)。

 

とはいえ、チームワークが重要視される製造業こそ、社員の交流に取り組むべきと思うのだが・・。

財布を持ったことのない人たち(その2)

フィリピンは最長1年の非正規雇用だらけという話を前回書いた。だから履歴書を見ると半年から1年でコロコロ仕事が変わっている者がたくさんいる。

 

特に高卒なら20代でも7〜8の職歴があったりする。しかし、契約を切られるたびに無職になるから無職の期間が必ずある。

 

こんな仕事の仕方だから統計による賃金のデータはあてにならない。最低賃金の月給は3万円だが、実際の年収はもっと少ないものが多い。

 

さて、そんな財布を持ちなれないフィリピン人が日本に実習生として来て、本国の何倍もの定期収入を得るとどうなるのか。

 

成金趣味でブランドロゴががっつり入った長財布を買うのである。

つくづく見ていて思うのだが、田舎のおっさんしかり、爆買中国人しかり、貧しい時代を経験した人ほどこういうえげつないブランドロゴ入りのものを買いたがる。

 

正直ダサいと思うのだが。まあそれは趣味だから良いとしよう。

 

 

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フィリピン人実習生の場合はこの長財布をかなりの確率で落とすのだ!

 

持ちなれていない長財布を尻のポケットに入れ、乗り慣れていない自転車に乗るのだから当たり前である。

 

かくして毎年必ず一人は「サー、財布を落としましたあ」と連絡が私のところに入る羽目になる。

 

フィリピン人を雇う時は、「長財布はバッグに!」というのを繰り返し指導することが必要だ。

 

財布を持ったことのない人たち

中間層未満のフィリピン人は財布を持ったことがないという話を以前書いた。おそらく日本に来る実習生の中で、母国でまともに財布を持ち歩いていたものは半分に満たないと思う。

 

母国送金時に申込書の記入手伝いをしていると「僕の父は銀行口座を持っていません」と言われることもままある。

 

銀行口座や財布がない理由はフィリピン人に月給取りが少ないからだ。安定収入がないため、決まった予算内で生活する感覚がわからない。

 

好景気とはいえ、実はフィリピン国内の就労者の大多数は日雇いなどの非正規労働者なのだ。サービス業や製造業も例外ではない。

 

だがこれは彼らが悪いのではない。理由としてこの国の法律上、一年以上同一人物を雇う場合は正社員登用が義務になるからだ。

だが、労働力は余りまくっている。

したがって、経営者(華僑や外国人が多い)は最長1年間の有期雇用契約社員を入れ替えることで会社を回す仕組みを考えるのだ。

 

変なところに厳しいこの国の法律では、正社員をクビにするのは日本と比較にならないくらい難しい。ぶっちゃけ、無断欠勤しようが遅刻しようが正社員は事実上クビにできないのだ。

もちろん法律上は適切な手続きを踏めば解雇できるようなっているのだが、裁判所も弁護士も腐っているで、結局巨額の賄賂を払わないと勝てないのは常識だ。日本人経営の会社の場合は、まともに裁判すれば勝てないようになっている。

 

だから、ほとんどのフィリピン人に給料を聞くと月給ではなく日給で答える。大多数が西成のドヤで働いているようなイメージなのだ。

ベトナムなどからフィリピンに来た日本人は、販売員の商品知識とやる気のなさに驚くハメになる。それはそうだろう、一年後は契約満了でそこにいないのだから覚える必要はないし、ラクして給料をもらうことしか考えてない。(続く) 

神戸長田警察最強説(その2)

人権国家日本では外国人を自供させるのは一苦労という話を前回書いた。最近では日本の警察が優しいというのは万引きベトナム実習生にも知れわたっている。

 

集団万引により、一人だけ捕まっても「周りにいた仲間?グエンという名前しか知りません。店の前で今日、初めて出会いました」と平気でいう。

ここはベトナム人のすごいところだが、同胞を外国人に売るようなことはしないのだ。ベトナム戦争で、ゲリラはCIAから指を切り落とされるような拷問を受けても一言も吐かないらしいが、それを想起させる。

 

だが、独立戦争ではなく犯罪に関与した同胞を庇うとなると話が別だ。なにせベトナムの万引きは日本の中学生とはちがう組織犯罪。このような連中の取調べは人権意識に基づいては不可能だろう。

 

だが、そんな日本の治安を守る救世主が長田警察である。ご存知の通り、神戸市長田区は山口組のお膝元であり、在日韓国人ベトナム人集落もある日本有数のいかついエリア。

 

一度ここで失踪した元ベトナム人実習生が捕まったことがある。こいつは在日のベトナム犯罪組織に関わっていたのだが、証拠不十分で不起訴となり、強制送還させられることになった。

その送還風景は壮絶なものとなった。

 

我々と空港へ同行するのは刑事2人。まずは見た目が完全にヤカラである。目つきも柄も悪い。どう見てもその筋の人である。

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↑写真はイメージです

空港へのタクシー。警察署から出てきて車内に乗り込んだ男に、彼女であろうベトナム人の女が駆け寄り、窓から身を乗り出して最後の抱擁をしようとした。

ドラマのような美しい光景がはじまるその刹那、目つきの悪いデカが動いた。「なにしとんじゃあ!」と一括して女の髪の毛を引っ張って投げ飛ばし(笑)、吹っ飛ぶ女を尻目に空港へ車を走らせたのだ。

 

そして空港、チェックインカウンターでトラブルが起きた。捕まっているベトナム男が警察官の隙を見て逃走を謀ったのだ!

 

幸い少し走ったところで取り押さえられたのだが、そのあとが大変。

 

「俺に恥かかせやがって」「ベトナム行ったら殺してやるからな」とこちらがドン引きするような言葉を吐きながら、デカ2人による頭突きとボディブローの連打、連打!

確かによく考えたもので腹なら痕はつかないし、頭突きなら「頭が当たっただけ」と釈明できる。弁護士による訴訟対策だ。さすがはヤクザの扱いに慣れているだけはある。

 

このベトナム人はボロボロになって帰っていったが、その第3世界的な捜査手法は見ていて清々しさすら覚えた(笑)。日本の治安を守るには長田警察に習うべきだ、と外国人犯罪を見てきた私は思うのである。

 

昔から警察によるヤクザへの取り調べは一般人より過酷らしい。犯罪に走る外人に舐められぬよう、長田方式を採用して欲しいものである。

 

 

 

 

 

神戸長田警察最強説(その1)

ベトナム人実習生の犯罪癖については以前書いた。万引きを皮切りに失踪してマリファナ栽培や地下カジノに手を出す者もいる。

中国人に比べたら凶悪事件は少ないとはいえ、先日は大阪市生野区で殺人事件が起きたことは記憶に新しい。

【ベトナム人?集団殺傷】1人は女か、まるでバイオレンス映画“襲撃グループ”6人の姿 - 産経WEST

 

ベトナムに限らないのだが、外国人は基本捕まっても罪を認めない。だが、日本の司法制度は自白偏重で、犯人を自供させることが警察などによる取り調べのゴールだ。これは遠山の金さんの時代から続く我々の文化である。

 

だが、海外は違う。ベトナムであれフィリピンであれ、異民族が支配する植民地では罪を認めるのは自殺行為だ。

 

裁くのは支配者の外人で自分らは奴隷。そもそも人間扱いされないので、認めた瞬間に一族郎党皆殺しにされかねない。だから、どんなに目撃者がいようと、証拠を出されようと必死で否定する。これも文化である。

 

日本において万引きは普通、処分保留で釈放になる軽犯罪だが、ベトナム人は起訴→懲役まで行くケースが多い。上記の背景から捕まってもひたすら罪を認めないので、捜査関係者の心象を悪くするのだ。

 

では、こういう輩への母国での取調べはどのようなものなのだろうか。

以前、フィリピンの警官に取調方法を聞いたところ「簡単だ。SM(エスエム。フィリピン最大のショッピングモールで日本のイオンにあたる)のビニール袋を使うんだ」と教えてくれた。

 

SMといえば黄色いビニール袋で有名だが、取調べ中に容疑者の顔にこれをかぶせ、見えないようにしてボディブローを食らわせたり、耳元に拳銃を突きつけるなどして脅し続けるとすぐに自供するという。「日本でフィリピン人が容疑を認めない?なら、このビニール袋を見せるだけでいいよ。奴らはわかるから」と件の警官は教えてくれた(笑)。

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つまり東南アジアではこういう取調べでもしないと自供は取れないのである。だが、人権国家日本ではこうはいかない。大阪府警といえばマル暴を始め乱暴な取調べが有名だったが、窃盗などの取調べでは乱暴な行為は一切禁止。

数年前に、管理していたベトナム人実習生が万引きで捕まったので、大阪の西部にある警察署にいったところ警官が、「机を叩くことや、キツイ言葉遣いも禁止なので取調べにならない」とぼやいていた。


万引きで捕まったベトナム人は大概盗品を寮に溜め込んでいるのだが、証拠不十分で警察もほとんどを没取できないケースが多い。問い詰めても「買いました」とシレッとした顔で言われたら終わりである。

かくして、万引きで捕まったベトナム人実習生が強制送還時にスーツケースいっぱいの高級化粧品(=盗品)を持って帰る光景が見られたりする。切歯扼腕する思いだ!

 

しかし、東南アジアスタンダードを守る警察が日本にもある。神戸長田警察署だ。

(つづく)