次期大統領はダーティーハリー?
フィリピンの将来を担う今年5月の大統領選挙が近づいている。事前の当選予想を民間の調査会社が報じられているが、実はフィリピン人は信じていない。すべてが買収されているので、調査会社によって真逆の結果が出ることなど珍しくないからだ。
そもそも、彼の国の政治家は頭の中身はさておき、異様なほどの大金持ちばかり。州知事が約ン千万円で有名女優を一晩買ったとか、財宝探し目的でプライベート潜水艦(!)を買ったなんて話がゴロゴロ転がっている国である。
候補者の大部分が今話題のトランプさんやブッシュ一族みたいな輩と言ったら分かりやすい。基本、政治は世襲制でやるものと相場が決まっている。
だから選挙は札束が飛び交う一大イベントだ。民間の調査会社買収なんてのはおとなしい方で、投票用紙の入った箱を偽物とすり替えたりする(偽の投票用紙を大量に作るのも大変だろうに)。
私兵団を抱える政治家も多いため、対立候補の射殺事件も珍しいことではない。2009年には、対立候補やジャーナリスト58人を私兵団に命じて殺害し、死体を埋めてしまった現職知事が逮捕されるなんて事件も起きているくらいだ。下手なヤクザの抗争よりも過激だ。
銃撃戦の流れ弾が当たっては大変だから、フィリピンの日本大使館は在留日本人に投票日が近づくと外出を控えるように警告を出すのが通例となっている。
そんな旧態以前の大統領選挙で、今回の台風の目となる候補者は、フィリピン第3の都市ダバオ市長を務めるドゥテルテ氏だろう。
このブログでも何度か触れているが、ドゥテルテ氏は手下の殺し屋を使い、犯罪者を処刑しまくり、決して治安の良くなかったダバオ市を東南アジアで最も安全な街改善した実践が高く評価されている。
このドゥテルテ氏は前述の統計によると決して上位にはいない。報道によると5人の大統領候補全てが20パーセント台の支持率でほぼ横並びとされている。
しかし、私が話すフィリピン実習生のほとんどはドゥテルテ支持。市井の人と話しても80%以上がドゥテルテ一択といってよい、他の候補者を支持するのは、一部のインテリかお金持ちだけのようだ。
ドゥテルテ陣営は戦略も優れている。当初から注目を集めるも大統領選出馬を否定し続け、国民をやきもきさせた挙句、全ての候補者が届け出を終えた後に「国民の声に応える」と滑り込みで出馬を宣言。大阪の橋下元市長と同様の手法だ。
また、メディア戦術も長けている。質素な自宅を公開したり、選挙活動中の服装は安物のチノパンに半袖シャツと庶民派であることを強調し続けている。対立候補が財閥の御曹司や有名俳優の娘といった雲上人ばかりなので、効果的な戦略だ。
「ノーブランドの靴だ!靴下も履いてねえぞ」by ドゥテルテ
愛人3人の存在を公表しつつも「高級マンションには住まわせていない。家賃は1,500ペソ(3,000円)の安アパートだ」と話すなど、女好きなフィリピン男ならニヤリと笑うコメントも忘れない。日本の学級委員会化したメディアなら目を剥くだろうが(笑)!
フェイスブックを始めとするネット上の露出数も際立っている。ネットメディアRapperによると
(How to win Cebu: Bisaya kinship, social networks in Duterte campaign)、同陣営のセブ地区担当者は「他の候補者に比べて予算はない」としながらも、ネットの力を有効に利用していると語っている。おそらくオバマ大統領が使った手法を参考にする優秀な選挙対策チームがいるのではないか。
先日のブログでも書いたが、ダバオ市のドゥテルテ人気は凄まじいし、ダバオの治安の良さも驚くばかり。一国を運営できる器か否かは未知数と言えるが、このままいけば彼の当選はあり得るのではないだろうか?注目していきたい。