爆弾テロから見る国際化
フィリピン南部ミンダナオ地方で爆弾テロが相次いでいる。
日本でニュースを見ていると「また危ない国フィリピンで爆弾テロが起きた」と判断されがちだが、
この地方はいわゆる国外国で、普通のフィリピン人からみたら一生足を踏み入れることはない地方である。
イスラム教国家だった場所をスペインが無理やり占領し、その他のキリスト教徒を入植させているエリアなのだ。
ちょうど北海道にいたアイヌを追い払って倭人が占領したのと似ている。
日本と違うのはこのエリアのイスラム教徒に伝統的に根性があり、400年前から独立闘争を続けていることだ。
外務省の危険度によるとレベル3でイラク南部並みに危ない地域である。
したがってマニラにいるフィリピン人にミンダナオ島のイスラム地区に行くというと皆ものすごくビビる。
そもそもこのエリアのイスラム教徒はチャバカノ語という全く違う言語を話すので大多数のキリスト教徒からみたら言語的にも外国である。
余談だが、マニラにもこのエリアから来ているイスラム教徒が多数いるが、就職などで差別があるらしく、
両替商やバッタ物屋といったいかがわしい商売に従事することが多い。
覚せい剤売買といった犯罪行為もイスラム系が流通に関わっていることが多いのは有名である。
日本の在日朝鮮人にヤクザが多いのと同じ図式だ。差別されるものは勢い不正な生業に手を染めがちなのである。
とは言え、ここも日本の在日と同じだが、イスラム教徒とキリスト教徒は地元で仲が特段悪いわけではない。
一緒に住めばまともな人も多いし、日本人よりも差別にこだわらない優しいフィリピン人なので、共存共栄していたのである。
その点から言えば今回の爆弾テロは特殊と言える。
具体的に言えば
・教会でテロが行われたこと。
・2箇所で爆発させるなど手の込んだ手法であること。
の2点だ。
地元で肩を並べて異教徒と共存共栄してきたのがフィリピンのイスラム教徒である。
独立闘争で政府軍と戦ったり、身代金目的の誘拐団になるものもいるが、宗教が違うからといって、生まれも育ちも一緒だったご近所さんを無差別に殺すことはこれまでほとんどなかったと言える。
ましてやキリスト教会でテロを行えば今度は自分らのモスクが攻撃される。宗教施設を攻撃することはタブーだったのだ。
また、今回教会内でミサ中に爆弾が爆発し、救援に駆けつけた国軍兵士が到着するのを待って教会駐車場のバイクに仕掛けた爆弾を時間差で起動させたらしい。
携帯電話を起爆に使ったようだが、これほど手の込んだ手法はこれまでの爆弾テロにはなかった。第一、フィリピンのイスラム教徒は自爆テロができない。答えは簡単、痛いのが嫌いだからだ(笑)。だからこれまでは、単発の爆弾を仕掛けることぐらいしかできなかった。
この複雑な手口は明らかにイラクなどで培われた海外のイスラム過激派の手法で、事実、その後イスラム国が犯行声明を発表している。
なんども述べるがフィリピンのイスラム過激派は爆弾テロを行ってきた実績はあるが、マニラ首都圏やダバオといった都会を狙ったものがほとんどで、軍関係者や外国人がターゲットだ。地元のキリスト教徒を狙ったテロは聞いたことがない。
これのような凄惨なテロが横行すれば、お互いの婦女子すら巻き込み、近所で殺し合いが発生しかねない。
掟破りのテロの背景として、海外の影響が見え隠れする。
フィリピンのイスラム教徒の中には中東の紛争に義勇兵として参戦するものも多数おり、彼らが帰国後、グローバルスタンダードの仁義なきテロの手法を輸入してしまったのだろう。
ある意味、ルールを守った牧歌的な紛争ががあらたなステージに入ったと感じる事件であった。
マニラにいるときは今後テロに気をつける必要がありそうである。