フィリピン実習生とアレコレ

フィリピン技能実習生にまつわる雑感です。現場から見た外国人労働者との関わり、特定技能ビザの問題についても記します。

日本水準の輸出

cebusurvive.doorblog.jp

 

私が愛読するセブ在住日本語教師、モトボサツさんのブログ。

お会いしたことはないのだが、文章が非常に秀逸でなおかつ洞察が深い。元在住者として思わず膝を打ってしまう。まだ読んでない方はぜひご一読頂きたい。

 

さて、上記の話は日本で働いていたフィリピン人が帰国後に車のエアコン業を立ち上げ、日本式サービス導入して成功しているという話だった。

 

このフィリピン人が日本で働いていた期間が3年のため、技能実習生で渡航していたと思われる。ちなみに産廃業者で働いていたらしいが、制度上、産廃業は実習生を受け入れることが出来ない。

 

おそらく書類をごまかして在留許可を取ったのだろう。入管法的には違法行為だ(笑)。

 

しかし、会社自体は良い会社だったようでフィリピン人はここで学んだノウハウを生かしてカーエアコン修理業者を立ち上げたという。

日本での契約満了後は「カナダかオーストラリアへ再度出稼ぎ」という者が昔は多かったが、ここ2、3年は「母国でスモールビジネスをやりたい」という者が増えた。景気がよいのだから当然とも言える。


だが、成功するものはごくごく一部。面接で実習生候補者は「日本の技術を学びたい」「日本語の先生になりたい」など言うが、実際にはお金だけが目当て。金が最終目標である以上、ラクしてなるべく多く欲しい。

だから日本の文化なんか目に入っていない。大半の連中が残業代と上司の目を盗むことしか考えていない。ちなみにこの傾向はずる賢い中国やベトナム人に顕著である。

 

とはいえ、どこの国の人も基本は同じ。ラクして金は欲しい。

 

だから、3年間日本で実習を受けても、漫然と働いた大多数の者たちの帰国後は大変だ。カタコトの日本語ではビジネスに使えないので、結局最低賃金の仕事に逆戻りだ。元の黙阿弥。

贅沢を覚えて、社会復帰できなくなった者もいる。ベトナム人の元実習生で日本語検定N2を取った男がいたが、どこで働いても給料が10万円に届かないのでニートになった奴がいた。

N2といえば大学に留学できるレベルだ。日本に行けば倍以上の給料がもらえる事実を知ってしまい、現地給料で働く気力が出なくなってしまったのだ。あれから彼はどうしているのか…。

 

つくづく残念なのは、給料以外で日本の良いところに気がつく者が少ないことだ。

整理整頓や顧客に対する誠実さ、ハードワークの習慣を学び、フィリピンに導入すれば、どんな事業だってアドバンテージになる。

 

日本人の誠実さや真面目さとそこからくるサービスのレベルの高さこそ学んで欲しい。…と教えても遊びたい盛りの若い実習生の耳には入らない。

 

まあ私も若い時はこんな話には耳を傾けなかったから理解できるけど。

チップ文化と階層社会

取引先のフィリピン人社長が家族で来日したので、ディナーに招待した。大金持ちで娘二人は母親譲りの美人だ。

 
さて、この二人に日本にはチップ文化がないというと驚いていた。
 
2012年にマスターカードが行った調査では、フィリピンはチップを渡す比率が75%と高いらしい。タイ89%や香港71%とならんで、アジアで最も高く、日本の3%とは大きな違いがある(ウィキペディアより)。
 
だから日本人はいくら、どうやってあげるのかわからない。わけのわからない外国通貨で慣れないチップをあげるなんて苦行に等しい。
日本でも戦前はチップは普通にあったらしいが、我々には馴染みのない習慣だ。
 
私も学生時代の引っ越しアルバイトでもらった記憶があるが、あくまで近年のそれは祝儀の側面が強く、サービスの対価に払う意味合いは薄い。フィリピン人社長は「そういえば、大阪のホテルでボーイにチップをわたそうとしたら笑顔で断られた。カナダではチップが少ないと文句を言われたのに!」と感動していた。
 
フィリピンではホテルはもちろん、レストランから売春婦に至るまでチップは常識だ。
 
マニラ国際空港では、なぜか便所で清掃員が待機している。水道の蛇口をひねったり、手拭き用の紙を甲斐甲斐しく用意するのだが、何のことはない、後でチップを要求してくるのだ。
卑屈な笑顔で「キモチ、キモチ(気持ち=心付け)」とカタコトの日本語でねだる態度が不快である。こんな乞食みたいな奴が空港にいるのはフィリピンくらいだろう。
 
日本でチップが廃れた理由は一億総中流の文化にあると思う。近年は格差社会化が進んだとはいえ、学生がバイトを二つ三つ掛け持ちし、夜昼なく必死で働けば、大概の高級レストランやブランドショップに行ける。店を一歩出ると客と店員は対等になり、サービスを受ける側と提供する側が入れ替わる可能性すら高い。こんな国は世界にない。
 
海外でもチップは幹部職員にわたすと反対に失礼になるらしい。これは、幹部になると店を出たら階層が対等(もしくは逆転)になるからだろう。
 
つまり、階層社会で「身分が下の人」にわたすものなのだ。賃金が低く、やる気のない労働者の鼻先にボスがぶら下げる人参である。アメリカ人は「(チップを減らすことで)サービスの悪いウェイターに罰を与えることができる」と考えるらしいが、この時点で日本人とは相容れない。
 
日本人が持つこの中流感覚というのは世界がうらやむ財産だと思う。「我々は生まれながらにして平等である」と無意識に教えられているからだ。未来永劫、日本でチップというものが流行らないことを願うばかりだ。
 
 
 
 
 

お金持ちにはなったけれど・・。

毎月マニラに飛んでいるが、 毎度機内のフィリピン人比率が増加している。今回、飛行機内の半数は、フィリピンのオカネモチだった。
隣の家族はラコステのポロシャツを子供に着せてノースフェイスのリュックを持ち、斜め前の一家はMacbookで写真を見ていた。どのブランドもあちらで買えば日本より4〜5割は高い。ちなみに1万円以上するポロシャツなんて子供時代に私は着せられたことはない(笑)。
 
7年前、この事業に関わってマニラに行った時は「相変わらずボロボロやなあ」と感じたのだが、ここ3、4年の変化は劇的だ。
 月給5万から15万円くらいの中間層が劇的に増えたし、対円で物価は倍以上になった。新しい道路や建物はいつも建築ラッシュだ。
 
ほんの10年前まで5万円前後の月給なんて、数千、数百の従業員を抱える幹部クラスが貰うものだったが、今や外資系コールセンターやしょうもない販売業の店舗リーダーが20代で手にしている。
 
 
フィリピンの人口は1億人を超えたから、この手の中間層は1000万人以上はいるだろう。この流れはまだまだ続きそうだ。
 
 

f:id:pinoyintern:20151024102231p:image

 

このチャートをみると、私が滞在していた1995〜2005年あたりは見事に停滞している。まさにアジアの病人だったが、その後の右肩上がりは凄まじい。

 
だが、中で働く人のレベルはそんなに変わっていない気がする。帰りのマニラ国際空港第2ターミナルでは登場ゲートがN4→N1→S1と次々と変更され、荷物を持って右往左往…。
 
アナウンスもロクにないため、その都度カウンターのスタッフに確認しないとならない。毎度のことだが、初めて来た人はパニックになるはずだ。
 
マニラ国際空港は利用客急増で滑走路がたりないらしいことが原因だろう。旧来の設備で急増する業務をさばくには、段取りを改善し各人のチームーワークが必須だが、そんなものを持っている奴はここにいない。いたとしても欧米企業に引き抜かれて海外で働いている。
 
もともと場当たり的な生き方をするので、「とりあえずゲートはN4にしておけ→あれ?使えなくなったか。じゃあN1だ。→あれ?こっちもダメか。ならS1だね」ってな感じで変更しているに違いない。
 
こういうことをするから、搭乗口がわからない乗客がでる→離陸が遅れる→また変更が相次ぐ・・・負の無限ループ。
 
好景気で給料は増えたが、仕事や人のレベルは昔とあまり変わらん気がする。
 

マニラ邦人殺人事件で急展開(その2)

マニラの在留邦人、岩崎さん殺人事件の全容はまだ判明していないが、マニラ新聞によると茨城県在住の歯科医(60)がフィリピンにいる実子の殺害を小倉容疑者に依頼したことが原因のようだ。

 

小倉容疑者は殺害に対する報酬と偽って金を1500万円以上の金を歯科医から騙し取ったという。もちろん実際は何もしない。大風呂敷を広げて、日本人から金を巻き上げるのはフィリピンの典型的な日本人詐欺師の手口である。

 

同紙によると、この容疑者を歯科医に紹介したのが岩崎さんだった。

想像だが、岩崎さんは小倉の詐欺行為をなじり、逆ギレされたのだろう。フィリピンで1500万円の金額となれば人が数人死んでもおかしくない。

 

事業を営んだり、遊びにいくお金持ちが隠し子を海外で作ってしまうケースは結構散見される。この歯科医はフィリピン人との愛人の間できた隠し子から認知請求をされていたらしい。将来遺産相続などで揉めることを恐れ、消そうとしたのではないかと私は思う。

しかし殺害を依頼した人数が半端ない。なんと11人!11人の中には隠し子の弁護士も入っていたらしい(笑)。フィリピンでは弁護士は完全にゴロツキだ。隠し子に入れ知恵をして歯科医から金をブン取ろうとしたのだろう。いわばブレーンだ。まとめて殺ってしまいたい気持ちはわかる。

 

しかし、今回も結局のところ一番悪いのは日本人だった。

 

そもそも海外にいる日本人は変わっている人が多い(私も元在住者なので人のことはいえないが・・)。ベトナムにいる若い女性は日本で不倫などややこしい恋愛に敗れ、安らぎの場を求めに来た人が多いと聞いたことがあるが、フィリピンはもともと飲み屋のオネーチャンつながりで渡航し始めたおっさんが多いので、中高年男性の質は極端に悪い。

この類の人は英語も下手で、技能もないため、たつきの道を口先三寸で得ようとする。狙うはもちろん、フィリピンパブのお姉さんの尻を追いかけて渡航してきた同胞だ。

かくして、マニラにはものすごい数の詐欺師がいる。まともな在住者の中で「日本人は信じてはいけない」というのは常識になっていたくらいだ。

現地でおきた日本人殺害事件の背後にはかなりの確率で日本人の黒幕がおり、フィリピンはヒットマンと場所を提供しただけなんてことがままある。

 

と、思っていたら先日は中国人の領事館員がセブで中国人に殺される事件が起きた。

中国領事館員2人、撃たれ死亡 フィリピン・セブ島:朝日新聞デジタル

 

フィリピンで外国人が殺された場合は同胞が背後にいることが多いというのはどこの国も一緒のようだ。

 

 

 

 

 

 

マニラ邦人殺人事件で急展開(その1)

 

 

www.fnn-news.com

 

 マニラの在留邦人の中で、昨年この岩崎さん殺人事件はビッグニュースだった。なにせ数十年前からマニラで旅行代理店を営む古株で、日本人社会で知らない人はいないくらいの有名人だったのだ。

 

この岩崎さんは昨年5月にマニラの路上でバイクに乗った2人組に銃撃され殺害された。犯人は信号停止中の車にバイクで近寄り、窓ガラス越しに拳銃1発で頭を撃ち抜いて、悠々と立ち去ったという。完全にプロである。

 

ちなみに拳銃は少し離れるとそう簡単に当たらない。日本のヤクザなどは手が震えて外すことが多いらしいし、恐怖心からターゲットの至近距離まで近寄れないそうだ。

 

だが、フィリピンは銃の所持が合法である上、南部ミンダナオ島では未だに紛争が続いている。戦争で実際に人に向けて銃を撃った経験のある元軍人やゲリラがうようよいるのだ。自衛隊やヤクザなんか話にならない実戦経験を積んでいる。

 

こういう殺し屋を牢屋で見たことがあるが、完全に「サカナの目」をしていた。なんというか感情の一部が抜けている。「ああ、これはあかん奴や・・」と感じたことを思い出す。

 

2002年にマニラで幅を利かせていた在日韓国人のゴロツキが殺される事件が起きた。地元の金持ちか司法関係者ともめたらしいのだが、この時の手口も鮮やかだった。

 

同じようにバイクに2人乗り。後部座席から降りたヒットマンはゴロツキの両足を拳銃で撃ち、倒れたところを後頭部にさらに一発撃ちこんで片付けたのだ。白昼の路上で起きた犯罪だが、ヘルメットや覆面すらしていなかった。顔を隠さないあたり、おそらくミンダナオ島あたりから来たプロだろう。

 

話が逸れた。さて、この事件。背後に日本人の歯科医(60)とフィリピン在住の小倉義一(59)なる日本人が絡んでいるという噂が発生当時から流れていた。と、いうか、ヒットマンが殺害前に宿泊してた部屋をこの小倉のフィリピン人妻が用意していた事実まで判明しているのに、アホなフィリピンの警察や検察は訴追しきれなかったのだ。

 

怠け者のフィリピン警察からしてみたら、年間1万件以上の殺人が起きるこの国で日本人同士のトラブルなんて捜査するメリットなんてないのだろう。しかもヒットマンが絡んでいるゴツい事件を迂闊に捜査すると、自分にとばっちりが来るかもしれない。

 

しかし、さすがは日本の警視庁、事件後日本に逃げたこの小倉と妻を、別件で逮捕したようだ。(続く)

教育、教育、教育!(その2)

さて、前回の続き。フィリピンの教育問題については言語のハンデが致命的であると述べた。

 このブログで盛んにフィリピン人のアホさ加減を嘆いているが、言語以外の原因に基礎教育期間の短さも挙げられる。

ベトナムや日本などほとんどの国では小学校6年−中学校3年−高校3年(計12年)だが、フィリピンだけ小学校6年−ハイスクール4年の10年と短い。だから高卒で16歳、大卒で20歳。

 

東南アジア諸国連合ASEAN)で一番基礎教育期間が短い国なのだ。おかげで理数系能力は他国に比べ、大きく見劣りする。前回書いた通り、本も読まないから知識も日本の中学生みたいな水準である。

基礎教育を6-4制からK-6-4-2制へ - ジェトロ・アジア経済研究所

 

ちなみにシンガポールの故リー・クアン・ユー元首相は、著書の中で数学のテストをマレー系、中華系、インド系の民族別で実施したところ、マレー系が一番できなかったと語っている。そもそも民族的にマレー系は数学的な能力が劣るのではないかとも私は感じている。

 

しかし、現職のアキノ大統領は中国人の血を引くだけあってさすが賢い。この点をしっかりと理解し、基礎教育を国際水準と並ぶ6-4-2制(計12年)に延長することを決断した。この新教育制度は2016年から施行される予定だという。

 

 

イギリスのブレア元首相は、「我が国に必要なものは3つある。教育、教育、教育だ」と話したらしいが、海外から見ると日本の発展を支えてきたのは教育だと痛感する。

列には割り込まない、ゴミはゴミ箱に…と言ったモラルの高さは教育レベルの高さと関連している。大多数を占める平均的日本人の誠実さや意識の高さは今も世界一だ(エリートは国際的に今ひとつ見劣りするが…)。

海外では能力以前に、良識と常識ある人材を探すのが大切なのだ。実際、私はフィリピンの工場マネージャー時代に倉庫からフォークリフトを盗まれたことがある。

また、歴代の経理社員はかたっぱしから横領でクビにされていた(笑)。姉妹で同じ会社で働いているのに、経理部で働く姉が会社のカネに手をつけたケースもあった。もちろん、姉妹でクビだ。ばれたら、関係ない妹もとばっちりを食らうなんて考えない。サルなみの知能である。


話を戻す。ただ、この新教育制度には反対意見も多い。特に深刻なのは予算不足だ。

慢性的な財政赤字のフィリピンでは、最近まで公立学校の先生は最低賃金で働かされていた。現在は公務員の給与は5〜6万円(最低賃金は3万円程度)とだいぶ上がったが、教室や教科書不足は依然深刻な問題。

f:id:pinoyintern:20151019232155j:plain

↑教室不足の図。

 

とはいえ、断固たる決意で進めるこの教育改革は素晴らしい。フィリピンの政治家は怠け者で強欲なロクデナシばかりだが、こういうわりにまともな人が大統領になる奇跡が起こるのが、民主主義の良いところだろう。

私はフィリピンのことをよくけなしているが、薄給にもかかわらずあの国の公立学校の教師は聡明で、誇り高い。また、公立ハイスクールのトップクラスの生徒は貧しくとも驚くほど勤勉だ。

どうしようもない連中が大半のこの国で、こういう人を見ると、泥の池で蓮の花を見た気分になったものだ。

中国人やベトナム人に比べ、犯罪傾向が少なく大人しい国民性のフィリピン。インドネシアみたいなややこしい宗教もない。理数系能力の改善が見られると劇的に伸びると私は思う。

この教育改革の結果がでるのは10年後だろうが、きっと優秀な人材が多く育ってくることだろう。フィリピン人=安い労働者という時代はもうすぐ終わるかもしれない。

 

しかし、私はそれでもよいと思うのである。戦前はそもそも、アメリカ領としてアジアでもっとも発展していた国である、日本人が出稼ぎに来ていたのはわずか70年前のこと。

f:id:pinoyintern:20151020085951j:image

↑1950年代のマニラ。アメリカの香りが残り、グアムかハワイみたいなイメージか?


将来はより健全な関係を築けることを私は望んでやまない。

 

 

 

教育、教育、教育!

空前の好景気に沸くフィリピンだが、同じ好景気のベトナムとは根本的に違う要因からきていると思う。

なにせ怠け者やアホが多い。にもかかわらず、海外にいる親戚からの送金→身の丈以上の消費→内需爆発という他国にないパターン。

マクドナルドなんて日本と変わらない値段なのに、国内にはロクな産業が無い不思議な国だ。

ベトナムやタイには製造業を初め地に足のついた多様な産業が育っている。裾野も広い。しかし、フィリピンは外資系コールセンターと華僑経営のサービス業くらいしかないのだ。

また、ベトナムなど他のアジア諸国と比べ一番見劣りするのは教育面だ。中でも言語は致命的な構造的欠陥を抱える。

植民地主義において、征服者はまず、言語を変えることに注力するらしい。以前の支配者層が作った教養を無効化させるためだ。

中国共産党が漢字を簡体字に変えたことは有名だが、日本を占領したアメリカもそうだ。

GHQの教育改革の結果、我々が戦前の書物を読むのは困難になった。戦前と戦後の国民の断絶を謀ったのだろう。

ベトナムを植民地にしたフランスは漢字を廃止し、アルファベット表記に変えた。旧宗主国である中国の影響を削ぐ狙いだ。

さらに、エリートに対してはフランス教育を施した。わずか40年前、ベトナム戦争の時まで知識人はフランス語を話していたのだ。日本からの特派員は近藤紘一氏のようなフランス語に堪能な記者が派遣されていたくらいである。

しかし、今は見事にだれもフランス語なんて話さない。

独立後ベトナムベトナム語教育を徹底したからだ。英雄ホーチミン自身、フランス語や中国語を解したにもかかわらず、である。

今はオバマ大統領の演説集からドラえもんまでベトナム語の本が本屋に溢れ、老若男女が読んでいる。


反面、アメリカの庇護下(占領下?)にあるフィリピンでは法律や理数系の学問は今でも英語の教科書を使う。ほんの少し前までアメリカの教科書を学校でそのまま使っていたくらいだ。

本はアメリカからの輸入品が多いから、値段は日本と同じか、むしろ高い。高級品と言っていい。

フィリピンと言えば英語とフィリピン語ができるバイリンガルで有名だが、一般大衆が日常生活でつかうのはフィリピン語。大学を出てないと英語は下手である(ただしヒアリング力だけは皆、桁外れに高い!)。

わずかながら存在するフィリピン語(タガログ語)の本は、大卒未満が読者対象だから、恋愛小説やタブロイドが大半になる。内容はカスみたいなもんである。

新聞に例えていうなら、大スポや産経は日本語で書かれ、日経は英語というイメージ(笑)。


つまり、英語力でエリートと庶民が分断されている。読解出来る言語がバラバラだから、本屋自体が少ない=本を読む習慣がないのだ。

マニラでは日本より大きなショッピングモールが次々とできているが、人口当たりの本屋の数は日本の1/100くらいだろう。いや、それ以下か。

低学歴の庶民が頑張って経営や技術の本を買っても英語力の問題で読めない。つまり、自学自習することは不可能ということだ。

松下幸之助(小学校卒)や本田宗一郎(夜間高校卒)は出てこれない仕組みがアメリカによって作られている。(続く)